CASE 2 Dell EMC 自由と変化を楽しみ、経験を活かせ 「どんな姿勢で、どう行動するか?」 カルチャーが染み込む育成術
DellとEMCの統合で誕生した米Dell Technologiesは
7つのブランドを展開中だ。PC、サーバー、ストレージ、ビッグデータ、
セキュリティー、クラウドサービスと事業分野も多彩。
日本法人のDell EMCでも、事業拡大に伴い中途採用に力を入れる。
人材の流動性の高い外資系IT 業界で、いかに社員の心を束ね、
自社に定着させるか。あの手この手の取り組みを取材した。
●前提 統合で高まる人の需要
2016 年にDellとEMCの統合で誕生したDell Technologies。両社の統合は大きなシナジーに結びつき、グループとしての成長にドライブがかかることが予想される。急伸する事業に人材が追いつかずに、事業にブレーキがかかることがあるが、同社はそれを避けるために現在、人材への投資を増やしている。日本法人であるDellEMCの積極的な中途採用も、その一環だ。
社員約2550人のうち、直近1年間で入社した中途採用者の割合は17%(2017年6月22日現在)。ほぼ6人に1人という計算だ。人材流動化が進んだ外資系企業においても比較的高い割合といえる。
もちろん力を入れているのは中途採用だけではない。人事本部長の武藤直子氏は次のように明かす。
「創業者で会長兼CEOのマイケル・デルは、新卒採用をグローバルで全社員の25%まで引き上げる、と言っており、日本でも今後増やしていきたいと考えます。ただ、欧米のように通年で新卒採用しているわけではないので、同じようにはいきません」(武藤氏、以下同)
新卒採用は毎年20人前後だが、中途はその20 倍以上の人数を採用しており、現時点では開きが大きい。当面は中途採用が中心になりそうだ。では、彼らをどのように育てているのか。次から、同社における多様な育成の仕組み(図1)を見ていこう。
●フォロー体制 研修、コーチ、バディで支える
中途採用の大半は営業職だ。技術的経験を活かす営業、エンジニアのサポートをする営業、パートナー経由の販路を担当する営業、電話応対による内勤営業など、職種は細分化されている。
採用方法は主に2パターン。欠員補充と、事業拡大に伴う増員である。欠員補充の場合は、具体的なポジションに空きが出てから募集をかける。
事業拡大に伴う増員もかなりピンポイントだ。他の多くの日本企業のように、大量に採用してから入社後に適性を見極めて配属を決めるのではなく、「担当する業界はここ、職種はこれ、役職はこれ」というように、戦略を立てて採用する。したがってその業種や職種、役職の経験者が採用されるケースが多い。それもあって、中途採用者の平均年齢は36歳と高めである。
■1カ月間のトレーニング
このように即戦力化を意識した中途採用を行っている同社だが、研修は基本的に1カ月間と、みっちり行う。
「最初の2週間はグローバル共通のコンテンツでトレーニングを実施し、次の2週間は担当する業界やお客様に特化したトレーニングを、配属先の部署主導で行います。その後、実際にフィールドに出て仕事をしながら覚えてもらいます。その際、上司の他、バディという2、3年上の先輩がつき、分からないこと、悩みごとの相談に乗ります」