J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年12月号

心理学×企業調査で検証 パフォーマンスを高めるチーム開発 第2回 成果を上げるチームづくりの秘訣

先行きが不透明で人材も働き方も多様化する現代でも、業績を上げるには「チーム力」が欠かせない。
九州大学と九州大学TLOが行ったフィールドリサーチを元に、チーム開発について紹介する本連載。
前回の「高業績チームに備わる“4つの機能”」に続き、今回は、この4つの機能をチームに根づかせるための方法を紹介する。

青島未佳( あおしま みか)氏
産学連携機構九州 総合研究部門 部門長
産学連携機構九州(九大TLO)総合研究部門長。大学卒業後、日本電信電話(NTT)、アクセンチュア、デロイトトーマツコンサルティングを経て、2012 年1月より現職。人事制度改革、人事業務プロセス改革、グローバル人事戦略など組織・人事領域全般のマネジメントコンサルティングを手掛ける。著書に「最新研究からわかったダイバーシティ時代におけるチームの在り方『高業績チームはここが違う』」(共著)など。

●高業績チームが備える機能

前回お伝えした通り、高業績チームには①コミュニケーション(心理的安全)、②目標共有(ビジョン)、③相互協力(コラボレーション)、④チーム学習(ラーニングオーガニゼーション)の4つの機能が備わっている(図1)。

では、チームがこれらの機能を備えるには、どうしたらいいのか。今回調査をした高業績チームへのインタビュー結果を踏まえ、どの組織でもすぐに実践でき、効果が期待できる取り組みを紹介したい。

●「コミュニケーション」をつくる

前回、チーム内で何でも気兼ねなく言い合えるというコミュニケーションの基盤をつくるためには、リーダーがメンバーに興味を持ち、信頼することが必要だと述べた。ここで大切なのは、信頼を目に見える形や行動で表すこと、そしてコミュニケーションの量を増やし質を高めることだ。そのために特に有効なのは「適切な頻度で会話をする」「承認をする回数を増やす」ということ。これはリーダーとメンバーの信頼関係のみならず、メンバー同士の信頼関係の構築にも有効である。しかし、多くのチームはこれができていない。

(1)会話の量・頻度を増やす

人間同士の心理的な距離は、ある程度までならばコミュニケーションの量に比例する。コミュニケーションの量は多ければよいというものではないが、少なくとも必要な一定量は存在する。

一方で、メンバーを多く抱えるリーダーにとっては、限りある時間の中でその工数を捻出することはなかなか難しいだろう。この場合は、例えば週に1回1時間のミーティングを行うのではなく、1回5~ 10分のショートミーティングを毎日行うことをお勧めする。コミュニケーションの基盤ができていない場合は、頻度が多いほうがメンバーは“リーダーが自分のことを気にしてくれている”と感じることができ、双方の心理的な距離は近くなる。

(2)質のよい会話を行う

単にコミュニケーションの量が増えても、その内容がリーダーからの業務指示や指導に終始していては、チーム力の向上は限定的だ。メンバーが話しやすい風土をつくるためには、リーダーの“聴く”姿勢が大切である。話を聴かないリーダーに対しては、メンバーは「何を言っても大丈夫だ」「相談してもよい」といった心理的安全を得ることができない。

また、リーダーはメンバーに対して、「承認をする」「メンバーの相談に乗る」「メンバーの強みを引き出す質問をする」などメンバーの視点に立った会話を心掛けることが大切だ(83 ページコラム参照)。

なお、会話の質をチェックすることは難しい。そのため、質のよい会話のチェックポイントとして、「メンバーが時間の半分以上話している状態をつくれているか」ということをひとつの目安にしてほしい。

(3)メンバー同士が平等に話す機会を設定する

リーダーは、メンバーとの心理的な距離を小さくするだけでなく、チーム内のメンバー同士がお互いに遠慮せずに話せる環境づくりも行う必要がある。チーム内のメンバーのコミュニケーション量の偏りが少なければ少ないほど、チームの業績が高いというアメリカの研究事例もある。

とはいえ、メンバー同士が平等に話す機会をつくることは意外に難しい。ビジネスの場面で先輩・後輩といった関係性が強い場合、上の人のほうが話をしがちになる。また、個人の性格・コミュニケーションの得手不得手の問題もあり、何もコントロールしないと話す人と聞く人の役割は自然と決まってしまうことが多いだろう。

よって、チームでは、リーダーやサブリーダーなど誰かが場をうまくコントロールし、全員が主体的に話せる状況をつくることが大切である。そのためにはミーティングで「全員1回は発言する」「まずは出た意見を否定しない」といったルールを設けることも必要だ。

実際に本研究の調査対象企業の高業績チームのリーダーは、ミーティングは原則全員参加とし、メンバー同士が話しやすいレイアウトや座席の配置を考慮したり、ミーティングの中でメンバーに必ず1回は発言してもらえるように事前にミーティングのテーマを伝えて考えてきてもらうなどの工夫をしていた。また、このような取り組みを続けることで、それを習慣化させていた。

●見える化が「相互協力」を促す

コミュニケーションという基盤の次に着手したいのは「目標共有」である。目標共有の仕方については前回説明した通り、「期限までに△△を仕上げる」「売り上げ△△を達成する」といった形式上の目標だけではなく、目標を達成する目的や意義まで共有するということがポイントである。また、メンバーが互いを尊重しながら支援し合う環境ができているチームは、真の意味で目標共有ができているということも前回説明した。

そこで次に考えたいのが、「相互協力」を促す仕掛けである。

協力できないチームには、2つの共通点がある。「他人の仕事への関心度合いが低い」ことと「関心はあるが協力する風土がない」ことだ。現在は、職務の細分化やパソコン・インターネットの普及により仕事がブラックボックス化し、そもそも同じ職場の隣に座っているメンバーですらどのようなことをしているのか直接は分からないというケースが増えている。

また、組織より個人の都合を優先する個人主義が進むにつれて他のメンバーに対する関心・共感性が希薄になり、他のメンバーが困っていても助けようとする自然な動機が働きづらくなっている※。

※人を助けたいという動機は、相手にどれだけ共感できるかということと関係が深く、相手の立場に共感できればできるほど協力行動は増える。事実このような共感と協力行動の関係性を調査した研究は多い

相互協力を促すために必要なことは、各自の目標や仕事内容の“見える化”である。いくら協力したくても相手の状態が見えなければ、適切なタイミングで声を掛けられない。メンバー内で目標や仕事内容を共有することで、チーム内に協力するための基盤をつくることができる。

例えば、1 週間の行動予定表をつくり、週の初めに15 分でも30 分でもチーム全員で共有し合うなどの仕組みを定常化することだ(図2)。

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