J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年11月号

TOPIC-1 第1回 教育AI・ビッグデータ分析WGセミナー ラーニングアナリティクスは何を可能にするか

人事、人材、教育分野におけるテクノロジー活用やデータの分析結果の経営への活用推進を目的として、2015年に設立されたHRテクノロジーコンソーシアムLeBAC(HR・Learning Technology & Big Data Analytics Consortium)。
その教育、AI、ビッグデータ分析を研究テーマにして発足したワーキンググループの第1回セミナーが9月15日に東京都内で開催された。そこで発表された先進的な取り組みをレポートする。


松田 孝氏
京都大学工学部卒。帝人を経て、2001年設立の(株)インフォザイン設立メンバー。各種ECM製品の導入コンサルテーションや運用者向け・開発者向けのトレーニングとサポートに従事した後、現在CincomECMのトレーニングを担当。併せて教育分野向けオープンソース製品(Learning Record StoreやComputer Based Testing関連)の導入コンサルテーションなども行う。



菅 由紀子氏
2004年サイバーエージェント入社。インタースコープとの協業でネットリサーチ事業を立ち上げ、広告の販売や企画などに携わる。その後、(株)ALBERTでデータ分析業務を担当。アナリティクスサミット、NTTデータ数理システムユーザーコンファレンスにてWebマーケティング、データ分析、データマイニングについての講演なども行う。
※2016年9月末日で同社を退職、10月より(株)Rejoui代表取締役。


取材・文・写真/菊池壯太

第1部では、内田洋行の系列会社で、学校教育系のラーニングアナリティクスを手掛けるインフォザインの松田孝氏が、「研修の効果測定」について紹介。同社は、英国HT2社およびルクセンブルクのOAT社のパッケージ製品を日本国内向けにカスタマイズし、主に学校教育市場に向けて提供している。基本的に学校教育向けのサービスだが、英国とルクセンブルクでは、企業の従業員教育のために同製品を利用している。その事例とシステムの実現を可能にした技術について解説した。

【講演1】「研修の効果測定」(Time to Competency)

【講師】松田 孝氏 インフォザイン取締役/教育ソフトウェアグループ所属

測定なくして改善なし

弊社が学習履歴管理ツールに着目したきっかけのひとつは、教育経済学者・中室牧子氏の『「学力」の経済学』という書籍です。

同書では、例えば「子どもの目が輝いている」「活気に溢れている」といった定性的な表現で学校教育のパフォーマンスを測るべきではないと主張しています。それよりも学習という行為について、数値的、定量的な測定をしてエビデンスを取ることが重要で、それなくして教育効果の改善はあり得ないというのです。

企業で行われる研修やトレーニングの成果についても、研修後に行うテストの成績ではなく、実務におけるパフォーマンスがどれくらい向上したかで測定されるべきです。国内の企業内教育では、こうした実務のパフォーマンス向上について定量的な測定を行っている事例はまだ少ないと感じていますが、欧米では、トレーニングでも実務の目標管理でも、定量測定した数値の変化を解析する手法が主流になってきています。

本日の講演タイトル「Time toCompetency」とは、「採用された人材が現場に配属されてトレーニングを受け、実際の業務ができるようになるための必要技能を習得するまでの時間」という意味です。企業内教育では、マネジメントにより、これをいかに短縮するかがカギを握ることになります。

系統の異なるシステムを連携

その「Time to Competency」を実践している事例のひとつが、英国の某コンピューター会社の販売支店です。同社がこの手法を取り入れたのは、採用したマーケティングスタッフと販売スタッフに効果的な教育を施して、彼らをできるだけ早く戦力化したかったからです。同時にこの会社では、研修と実業務の間に定量的な相関があるのか、という点も知りたいと考えていました。

もし、各システムから得られるログ解析を通じて、高いコンピテンシーを持った優秀な従業員の行動特性を見いだすことができれば、全てのスタッフ教育において有効なKPIを設定できるからです。

対象アプリケーションは、HT2社の目標管理システムやソーシャルLMS、ログ管理システムなどに関する6種類です。実際には、これらのシステム全てのログをxAPI(Experience API) の「LearningLocker」で管理する仕組みとなっています(図1)。

xAPIとは、米国防総省内の標準化団体が制定した規格で、システムや組織の垣根を超えてデータ(ログ)を統合・連携できるというものです。本来ならば、先に挙げたような研修系と業務系の異なるシステムのデータを統合することは不可能ですが、xAPIならばこれが可能になります。

目標達成までシステムで自動化

使用イメージとしては、新人が配属されると、まず目標管理ツールで目標が与えられます。その目標は、管理側からアサインされるものと、部署に応じて自分で選べるものがあり、それを各人が選択します。その目標一つひとつに対して、「これができたら目標達成したと見なす」という数十個からなる定量的マイルストーンが設定されています。

この定量的マイルストーンは、達成したら結果を入力するのではなく、各システムによって取られたログが自動的にLearning Locker側に入り、そこで解析され、達成されたか否かが判定されます。こういった一連の流れがシステム内で自動化されているということです。

スピードを上げてデータ収集を

その他「Time to Competency」を実践している事例として、燃料系企業のディーラー教育や、Jisc(英国大学間情報システム合同委員会)の取り組みが挙げられます。前者は、ゲーミフィケーションを活用しています。目標を達成した学習者はeバッジがもらえ、出張時に航空機を利用する際にエコノミークラスではなく、ビジネスクラスを使えるといった特典が受けられる点がユニークでしょう。後者は、イギリスで約80の大学が合同で学生の学習履歴データを標準化しており、そのことで、退学者の事前予知やフォローを可能にしているというものです。

いくつかの事例を挙げましたが、企業におけるラーニングアナリティクスで必要なのは、

①どのトレーニングのどこがパフォーマンス向上に寄与したのか?

②高業績者の行動特性は何か?

③トレーニングデータのログと業務パフォーマンスデータのログにおけるさまざまなコンテクスト(人、時間)での相関――の3点を見るということです。

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