J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年11月号

Column 書家・プレゼンテーションクリエイターの 前田鎌利氏が語る デジタルとアナログ

ソフトバンク勤務時代、その優れたプレゼンテーション術から、社内認定講師と、孫正義氏のプレゼン資料作りを担当していた前田鎌利氏。
その後独立し、プレゼン講師として活躍中だが、「書家」という全く別の顔も持つ。
デジタルの「プレゼン」と、アナログの「書」、両方を駆使する氏に、それぞれのよさや相乗効果等について聞いた。


前田鎌利( まえだ かまり)氏 
株式会社 固 代表取締役/書家/プレゼンテーションクリエイター

1973年福井県出身。5歳より書を始め、東京学芸大学書道科卒業後は光通信に入社、独立書家として活動。
2010年、ソフトバンクアカデミア第一期生として選考され初年度1位の成績を修める。13年ソフトバンクを退社し、書道塾「継未-TUGUMI-」を全国13校で主催する傍ら、プレゼン講師や講演活動等も精力的に行う。近著に『社外プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)。


[取材・文]=木村美幸 [写真]=前田氏提供、編集部

“念い”を伝えるもの

―プレゼンと書は、すごく異質なものに見えます。共通点はありますか。

前田

企業で行われるプレゼンは、課題解決や提案が主な目的ですが、ベースにあるのは企業理念、企業の“念い(おもい)”ですよね。書家としてご依頼いただく仕事も多くが、企業からの“スローガンや理念を書いてほしい”といったものです。自分の作品として書く「書」にも、もちろん僕の念いが詰まっている。つまり書もプレゼンも“念いを伝えるツール”ですから、僕の中では大きな違いはないんです。

ちなみに、頭でただ考える「思い」などとは異なり、あることを始終強くおもい続ける際の感情、という意味で、「念い」という字を使っています。

表現の“幅”が違う

―では、プレゼンにおけるアナログとデジタルの違いで、重要なことは。

前田

デジタルのプレゼンの最大の魅力は、アニメーションや動画を使って臨場感を出せることです。受け取る側の、驚きや共感といった“感情の幅”が飛躍的に広がります。

一方、講師として伺う企業の多くが紙の資料を配ってプレゼンしています。しかしそれでは表現の幅が減りますし、“コピーしてホチキスで止める”“保管する”“探し出す”など、資源や場所、時間のコストもかかります。ですからデジタルへの移行を強くお薦めしています。

書から学び、プレゼンに活かす

―アナログの「書」からプレゼンのヒントを得ることもあるそうですね。

前田

たくさんあります。例えば文字の配置や余白の活かし方、作品の展示方法など……。具体的には、神社仏閣などで高い位置に飾られている書は、よく見ると、少し紙の上部に書かれています。これは下から見られることが計算されてのことなのですが、プレゼンのスライドのキーメッセージも同様に、少し上部に置くといいでしょう。

他にも、掛け軸の表装から“ここに赤い帯を加えると引き締まって見える”とか、石碑に刻まれた文字などを墨で紙に写しとる「拓本」の、黒地に白い文字が浮かび上がったビジュアルからヒントを得て、スライドのデザインや表現に活かしたこともあります。

古い書に書かれているのは、文字だけではありません。丸を一筆書きした「円相」というものがあります。これは禅の高僧が、禅宗の宇宙観や悟りの境地を表したもの。こういう造形からも、多くの学びがあります。

そして、このように、自分の中にサンプル(引き出し)を多く持つ重要性も、書を通して学びました。書の世界には、名品を真似て書く「臨書」という学習法があります。絵でいう模写ですね。大学で書道を専攻していたので、それこそいろいろな時代の書家の作品に触れ、臨書をしてきました。真似ると、その人の“書風”が自分の中にインストールされていきます。その積み重ねが、アウトプットする際に効いてくるのです。“このスローガンは、唐の時代のあの書家の書風を少し取り入れてみよう”といったふうに。そうして字形はもちろん、カタカナなど、日本にしかない文字の書き方や、紙の余白や文字の内の白い部分をどう取るか、といったところに作家性が現れます。

自分の中にどれだけ多くのサンプルを保持しておけるかということは、ビジネスでもさまざまな場面で活きると思います。

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