J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年11月号

OPINION2 市が先導するデジタル学校教育 ICTで“4C能力”と表現力、 課題解決力が育成できる

「教育日本一」を旗印に、先進的な学校教育を行うつくば市。
その原動力と言えるのが、充実したICT教育だ。
全国に先駆けて市内の全小中学校に電子黒板を設置。
各種ICT機器が日々の授業に日常的に用いられている。
ICTを活用して、子どもたちのどんな能力を伸ばしているのか。
同市の取り組みと、その活用のポイントを、市原健一市長に聞いた。


市原健一(いちはら けんいち)氏
つくば市長

1951年茨城県つくば市生まれ。1979 年北里大学医学部を卒業し、東京女子医大整形外科入局。1988 年市原病院を開設、院長に就任。1993年に茨城県議会議員に初当選し、以降、4期連続当選。2004 年につくば市長に就任。現在3期目を迎える。

[取材・文]=崎原 誠  [写真]=編集部

まちづくりは人づくり

教育というと、長岡藩の「米百俵」の逸話がまず思い浮かぶ。北越戊辰戦争に敗れた長岡藩は、石高を5万石減らされ財政が窮乏。藩士たちは、食べるものにも事欠く状態となった。窮状を見かねた長岡藩の支藩、三根山藩から百俵の米が贈られたが、藩の大参事、小林虎三郎はその米を藩士に分け与えず売却し、学校設立などの費用に充てることを決める。抗議する藩士たちに虎三郎は、「百俵の米も、食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万俵、百万俵となる」と諭し、自らの信念を貫いたという。

教育の意義は、まさにここにある。すぐには結果が出なくても、目先のことにとらわれずに人に投資をしていくことが、将来の発展につながる。そこに住む人々の人格、考え方、社会に対するものの見方が、まち自体の活気や環境、先進性などを生み出していく。「まちづくりの基本は人づくり」―これは、私のモットーでもある。

40年前からICTを活用

その人づくり、すなわち教育に積極活用しているのが、ICTだ。

つくば市が学校教育にICTを取り入れたのは古く、1977年にさかのぼる。現場の先生方が自分たちでコンピューターを組み立て、教育に活用しようと試みたのが始まりだと聞いている。

2005年には、「電子黒板」を全国に先駆けて全ての小中学校に導入した。市内のモデル校を私が視察した際に、試験的に設置されていたのを目にしたのがきっかけだ。電子黒板があれば、別の場所で作成した資料や個々の生徒のデータを映し出すこともできるし、書いた内容をプリントアウトするのも簡単だ。先生方の工夫次第で、さまざまな活用が考えられる。現在は、日々の授業に用いるほか、電子黒板を活用した「プレゼンテーションコンテスト」(後述)も開催している。

タブレット端末、デジタル教科書、テレビ会議システム、オンライン学習システムなどの整備と活用法の研究も進めており、子どもたちは、日常的にICTを使って学習している。

近年力を入れているのは、電子黒板のさらなる活用法の研究や、家庭学習などに使えるオンライン学習システムの拡充、機器の整備など。教育委員会と連携し、積極的に取り組んでいる。

伸ばそうとしている能力

誤解しないでいただきたいのは、ICTのスキルを身につけさせることだけが目的ではないということだ。ICTはあくまでも“ツール”であり、子どもたちの能力を育むうえで有効であるため、ICTを活用している。

伸ばそうとしている能力も、具体的に想定している。つくば市では、子どもたちの人格形成において重要な能力として、“4C”を掲げている(図1・2)。

○協働力(Community)

○言語力(Communication)

○思考・判断力(Cognition)

○知識・理解力(Comprehension)

従来の日本の教育は、「決められたものをいかに覚えさせるか」が主体だった。そのため日本で教育を受けた人は、上記の4Cのような力を土台とした、自ら課題を設定して解決する能力、自分の考えをまとめて表現する能力が、海外よりも若干劣るといわれている。そうした能力を育むうえで、ICTが力を発揮する。

具体的なICT活用方法

例えば、考えをまとめる時。かつて学校ではノートや紙に書くだけだったが、代わりにタブレット端末を使うことで、写真やグラフでも表現できる。それを電子黒板に映して発表させれば、プレゼン能力や言語力が養われる。研究の題材を選ぶ際にもICTを用いて資料を集め、整理すれば効率がよい。つくば市独自の教育カリキュラム「つくばスタイル科」では、環境、キャリア、歴史・文化、防災などについて自ら課題を設定し、解決策を考え、プレゼンをしてもらう。この活動にもICTを活用し、より深い学びにつなげている。以下に例を述べたい。

■プレゼンテーションコンテスト

「表現力」育成の大きな機会としては、毎年、市内の1年生から9年生※が参加する「プレゼンテーションコンテスト」がある。このコンテストは、授業中に「スタディノート」という電子ノートを使ってまとめた内容を電子黒板で発表するもの。学習のプロセスや自分の考えをどうスライドにするか、発表の際の注意点など、相手にきちんと伝えるためにはどうしたらよいかを学習することで、表現力を高めるものである。

※中学3年生のことをつくば市ではこう呼んでいる。

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