J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年08月号

CASE 3 日本レーザー 1つの仕事を2人で担当する「ダブル・アサインメント」を導入 公正な評価と充実の支援 成長意欲を刺激する仕組み

「妊娠・出産を機に退職した女性社員はゼロ」「女性の管理職比率は約30%」。
女性活躍の成功企業として知られる同社には、社員が意欲的に働き成長できる仕組みと、それを支える理念があった。
「社員一人ひとりが大切」という近藤社長に、同社の女性活躍推進の取り組みについて、思いを聞いた。


近藤宣之氏 代表取締役社長

日本レーザー
1968 年設立。レーザー専門商社の草分けとして、レーザー機器や光の技術に関連する製品の輸出入を行う。
高度なニーズに応えるため、企画・設計・開発を担当する技術部門の充実に力を注ぐなど、幅広い事業を展開する。
資本金:3000万円(2015年度)、売上高:37億円(2015年度実績)、従業員数:60名(2016年1月時点)
〔取材・文〕=汐見 忍 〔写真〕=日本レーザー提供、編集部

●背景 ダイバーシティで会社再生

レーザー、光学関連機器の専門商社である日本レーザー。「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」をはじめ、数々の受賞歴があり、ダイバーシティ経営の実践で躍進している企業として知られる。

同社が、ダイバーシティ経営を導入したきっかけは、経営破たんだった。もともとは電子顕微鏡メーカー・日本電子の子会社だったが、親会社から派遣された近藤宣之社長が、会社再生のために、親会社の取締役を辞めて同社の経営に専念する決断をしたのだ。

「当時は人がどんどん辞めてしまい、人材の補充はハローワークに頼るしかありませんでした。応募してきたのは、ハラスメントで退職した女性やリストラにあった中高年、外国人留学生、海外の大学を卒業した帰国者等々、まさにダイバーシティ人材だったのです。でも、さまざまな考え方や経験を持つ人材の魅力は大きい。彼らが、会社から大切にされているという実感を持ち、互いに協力しながら能力を発揮できれば、会社の大きな力になると考えました」(近藤社長、以下同)

●女性活躍の現況 女性が離職せず管理職比率30%

ダイバーシティ推進に舵を切った同社の社員の中でも、活躍が目覚ましいのが女性である。女性は、約60人いる社員の3分の1。20代から60代まで幅広い年代が在籍しているが、自己都合での退職はほとんどない。妊娠・出産により退職した女性も皆無である。また、管理職の3割は女性だ。

「女性の活躍推進の度合いを示す企業のステージは、3段階あるといわれています。第1子の妊娠・出産により退職する女性社員が6割程度いるのが第1ステージ。出産・育児で退職せずに、ほとんどの女性社員が育児をしながら勤務を継続するのが第2ステージ。そして、女性の管理職比率が30%、役員では10%程度という段階が第3ステージです。当社は、この第2ステージは完全にクリアし、女性の管理職も30%いますが、役員はまだいないので、ステージ2.5といったところでしょうか」

役員候補の女性も育っているといい、女性の管理職比率は今後も上昇していく予定だという。とはいえ、決して女性を意図的に登用・抜擢したわけではない。

「仮にそんなことをしたら、男性社員から不満が出ます。職場の公正感・平等感が失われ、社員のモチベーションも低下し、絶対にうまくいきません。全社員を同じ基準で評価した結果として、多数の女性が高い評価を得て昇格していったのです」

では、なぜ同社では、それほどやる気も能力も高い女性が育つのか。その理由を探っていこう。

●仕組み 透明で納得性の高い人事制度

キーワードとなるのが、社長の発言にも出てきた、「公正・平等」という言葉である。同社には、女性も含めたダイバーシティ人材、全てを公正・平等に評価する人事制度がある。

「学歴、性別、国籍等一切関係なく、全員にチャンスを与えます。そして成長したならば、その分だけ収入は増えるし、より責任あるポストへ就けるという仕組みにしているのです。公正な評価は、社員一人ひとりの“きちんと自分を見てくれている”“自分を大切にしてくれている”という実感になり、仕事への意欲につながります」

日本の大企業などは、基本的に新卒一括採用で、その後は学歴別・年次別・性別運用となり、男女の昇給・昇格の差が出てくるケースが多い。だが同社の場合は、現在も通年採用を実施。性別はもちろん、学歴、年次、年齢、国籍等一切関係のない実力主義人事制度を徹底しているのだ。

「具体的には、人事評価では能力主義(基礎能力、実務能力)、業績主義(目に見える成果、目に見えない貢献度)、理念主義(経営理念の体現度)の3つの観点から評価をします。評価項目はあらかじめ明確にしておき、まずは本人が自己評価をします。その後、上司が評価をし、最終評価については両者が30~40分程度話し合い、決定しています」

あくまでも本人の成長のための評価なので、相対評価ではなく絶対評価。その結果は処遇やポストに反映される。

このように、人事・評価制度を可視化し、フェアな運用をしているので、社員の納得性も非常に高い。女性も男性と同等に評価されるため、意欲的に働くことができる。そのため、本来備える力を存分に発揮し、昇格していく女性も増えたのである。

●女性の両立支援策① 本人が望む雇用形態で個別管理

また、同社で出産や育児のために退職する女性社員がいないのは、産休や育休から復帰後も活躍できるようにサポートをする「両立支援」の仕組みがあるからだ。

その1つが、16以上にも及ぶ柔軟な雇用契約形態だ。同社には、1日4時間まで勤務するパート社員、1日4時間以上勤務する嘱託契約社員、1日8時間勤務で転勤や配転がある正社員という大きく3つの区分がある。また、嘱託やパートは、勤務時間も各人の事情に応じて自由に設定できる他、正社員は育児や介護、または本人の療養時に短時間勤務制度を利用できる。

「この組み合わせで、今では数え切れないほどのさまざまな雇用形態の社員が働いています。要は、本人の状況・要望に応じた個別管理をしているわけです」

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