J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年08月号

CASE 2 サントリーホールディングス 意識と働き方を変革 周囲を巻き込み “フルモード”の活躍を応援

手厚い子育て支援策を打ち出すサントリーホールディングス。
テレワークやフレックスタイム制など、働き方の柔軟性も高い。
しかし、子育て中の社員に“ 甘い”会社かというと、そうではない。
働きやすさを追求する一方、どんどん仕事を任せ、組織ぐるみでキャリアアップを応援する仕組みが特徴だ。


弥富洋子氏 人事本部 ダイバーシティ推進室 室長
竹舛啓介氏 人事部 課長

サントリーホールディングス
創業1899 年。酒類や飲料を中心に幅広い事業をグローバルに展開。その原動力は、創業以来、脈々と受け継がれる「やってみなはれ」の精神。人々の豊かな生活の実現に貢献することをめざし、新たな価値の創造に向けて挑戦を続けている。
資本金:700億円(2015年12月31日現在)、連結売上高:2兆6868億円(2015年12月期)、連結従業員数:4万2081名(2015年12月31日現在)

[取材・文]=崎原 誠 [写真]=編集部

●取り組みの背景 「働きやすいだけではダメ」

サントリーホールディングスは、2010年に「ダイバーシティ経営」への転換を宣言。多様な人材の活躍を推進するため、「働き方(ワークスタイル)」「マネジメント」「一人ひとりの考動」の革新とそのための基盤整備に取り組んでいる。

同社のダイバーシティ経営の特徴は、多様な人材が働きやすい環境を整えるだけでなく、しっかり活躍してもらい、会社の成長につなげる方針を打ち出していることだ。

特に社員の2割を占める女性の活躍推進は、重要なテーマである。

「かつては多くの女性がライフイベントに応じて退職しましたが、今はずっと働き続ける時代です。また、当社は、総合職・一般職の区分がないうえ、優秀な女性も数多くいますので、彼女たちに活躍してもらわないともったいない。ですから、ただ、働きやすいだけのゆるゆるとした環境にするのでなく、能力を発揮してもらえるよう仕組みを整えています」(人事本部ダイバーシティ推進室室長 弥富洋子氏)

「女性が働きやすく、かつ成果を上げている会社」をめざす同社では、“復職後の早期フルモード化”のため、2つのポイントに重点を置いている。

1つめは、女性社員のより高い業務への意識を醸成すること。2つめは、上司や男性社員などさまざまな人を巻き込みつつ、活動の輪を広げることだ。

●全体像 現場を巻き込んで推進

取り組みの全体像を見てみよう。まず部門トップにヒアリングし、課題認識を進め、問題を整理した。さらに2011年にダイバーシティ推進室を設置、人事部と連携し、施策を展開している。

手始めに何が必要かを現場から自発的に議論する次の3つの小集団活動を立ち上げた。

①短時間勤務を行う女性によるプロジェクト

②女性の活躍が進んでいない営業部門の女性によるプロジェクト

③子育てに関心のある社員のプロジェクト

自発的なプロジェクトの形式にしたのは、自分たちで取り組まなければならないという意識づけを行い、現場の意識を変えるためでもある。子育て中の女性だけではなく、あらゆる立場の人の声をすくい上げている点は、特徴的といえるだろう。

●取り組みの内容 “フルモード”の活躍を後押し

「③の『子育て環境プロジェクト』は、参加を呼びかけたものの、当初は10人集まれば良いほう、と考えていました。ところが蓋を開けてみると48人もの応募があり、3分の1は男性だったのです。多くは、『共働きの妻が疲れて帰って来て倒れている。何かしてあげたいが、どうしてよいか分からない』という悩みを抱える人たちでした」(弥富氏)

子育て中の女性だけではなく、あらゆる立場の人の声をすくい上げている点は、特徴的といえるだろう。

プロジェクトの結果を踏まえて、どのような施策を展開したのか。内容を追ってみよう。

■両立支援

育児との両立支援策は、図の通りだ。ピンク色の施策は、ダイバーシティ推進室の設置後、新たに導入した。

『Welcome Baby Support Book』は、子育てのノウハウ本だ。“保活(保育園に入れるための活動)”やパートナーの協力を得る方法、復職計画の立て方などを解説し、職場復帰に向けた意識づけをする。「産休前ガイダンス」では制度の説明だけでなく、復職後のキャリアを考えるよう指導。早く戻ってきて活躍してほしいという期待を伝える。

産休・育休中は会社との接点が減るので、「SMILE通信」というメルマガを発信している。外部コンサルタントのコラムや、先輩パパ・ママ社員の働き方などを紹介。上司にも送り、上司の意識づけも同時に図る。

「育休後フォローアップセミナー」でも、早期フルモード化を期待していることを伝え、中長期のキャリアを考えてもらう。毎秋に実施しているのは、春に復帰する人が多いため、落ち着いてきた頃に上司との「キャリアビジョン面接」につなげよう、という計らいだ。

さらに、復職のタイミングで保育園に入れない場合の対応として、最長7カ月間、認証保育園並みの負担額でベビーシッターサービスを利用できるようにした。自分が望むタイミングで確実に職場に戻れるようサポートする。

■ワークスタイル革新

ワークスタイル革新の取り組みも、目を見張るものがある。「S流(Suntory 流:Slim、Speedy、Smart)仕事術」と銘打ち、時間配分の適正化(労働時間短縮)と時間当たり労働生産性の向上(タイムマネジメント強化)を図った。

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