J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年08月号

CASE 1 千葉銀行 男性の育児参加も強力に後押し “お互いさま”の精神を育む 意識・行動改革を積極展開

1986年に、日本の銀行で初めて女性を支店長に登用した千葉銀行。
最近では、佐久間英利頭取が「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」の設立を主導するなど、金融機関における女性活躍推進のフロントランナーとして知られる。
同行が重視しているのが、男性・女性双方の意識・行動改革だ。
“お互いさま”の精神を醸成することで、不公平感なく、積極的に支援し合う風土を築いている。


山本悠介氏
ダイバーシティ推進部 調査役

千葉銀行
1943年設立。千葉県を主要な営業基盤とする地方銀行で、預金残高11兆1402 億円、貸出金残高8兆7974億円は、共に日本の地方銀行で第2位の規模。千葉県に160店舗を有するほか、東京、茨城、埼玉、大阪にも店舗があり、海外ではニューヨーク、香港、ロンドンに支店を置いている。
資本金:1450億円、総資産:13兆2658億円、従業員数:4280名(2016年3月31日現在)

[取材・文]=崎原 誠 [写真]=千葉銀行提供、編集部

●基本的な考え方 皆が“お互いさま”の意識を持つ

「『ダイバーシティ推進=女性の仕事と家庭の両立支援』と捉えられがちですが、そうではありません。男性も女性も働くのであれば、双方が家事・育児をするのは当然です。また、仕事と介護という面で見れば、独身者を含め、全ての人が関係してくる。『30~40代の女性を管理職にするためのものだろう』と言う人もいますが、それは違います。多様性を受け入れ、新たな発想を組み合わせて持続的な成長につなげる経営戦略だという意識を、職場全体に根づかせる必要があります」

こう語るのは、ダイバーシティ推進部調査役の山本悠介氏。“一部の人”に対する“支援策・優遇策”と捉えるから、不公平感が生まれる。全ての人を対象にした会社の成長戦略と位置づければ、協力し合うのは当然だ。

「一方で、育児などの支援制度を利用する人には、『権利ばかりを主張しないでください』と繰り返し訴えています。もちろん権利はありますが、権利を行使するうえでは、『周りの人もそうかもしれない』『周りの人に助けられている』という意識が求められます。精いっぱい働いている人が早く帰らざるを得ない事情を抱えていたとしたら、周囲も『帰っていいよ』と声をかけるでしょう。結局、その人の仕事への向き合い方が問われるのです」(山本氏、以下同)

制度を利用する側にも、サポートする側にも、双方に“お互いさま”の精神を持たせる―この考え方が、同行の取り組みのベースにある。

●取り組みの背景 内外の環境変化に対応

同行が女性活躍推進に本格的に取り組み始めたのは、10年以上前だ。社会全体で女性の活躍を支援する必要性が叫ばれ始めた当時、銀行業界では、投資信託や保険の販売が認められ、業務の多様化が進んだ時期だった。団塊世代の大量退職を控えていたこともあり、職員の4割を占める女性のさらなる活躍が期待されていた。

2005年、女性活躍推進の理念を定めた「女性いきいきキャリアアップ宣言」を公表すると共に、一般職を廃止して、総合職と特定総合職(転居を伴う異動がなく、一部業務は担当外)に再編するなど、女性活躍を推進する施策を積極的に導入してきた。

その後、取り組みの対象を女性だけでなく多様な環境・状況下で働く職員にまで広げるため、2015年3月に「ダイバーシティ行動宣言」を策定。現在はダイバーシティの推進が進められている。

●推進体制 専門の委員会と部署を設置

ダイバーシティの推進体制は図1の通り。ダイバーシティ推進に関する企画はダイバーシティ推進委員会で検討し、ダイバーシティ推進部が人材育成部と連携しながら形にしていく。

ダイバーシティ推進委員会は、企画管理部門のトップである企画管理本部長を委員長に、男女各1人の部長を副委員長に据え、メンバーは指名と公募により選出した。各部会は、女性管理職が部会長となり、女性3~4人と男性1人のメンバー、3人程度の女性アドバイザーで構成する。年齢・役職など幅広いメンバーで、本部だけでなく営業店からも参加している。

ダイバーシティ推進部の前身は、2011年に人材育成部内に設けた女性活躍サポートチーム。子育て経験のある女性管理職がチームリーダーとなって各営業店を回り、女性職員と個別面談を実施。それを受け、人材育成部の企画、給与、採用、異動、研修の各担当から集められたメンバーが、制度や研修に落とし込む。面談の対象は、産休前、育休明け、新しい業務に就いた女性など。本人からの相談も受け付けるが、「悩んでいるようなので、話を聞いてやってほしい」という所属長からの依頼が多い。

「チームリーダーには、仕事と育児を両立しながら管理職になった女性を選びました。営業担当の経験もあり、周囲に相談できる人のいない営業担当の女性にもアドバイスできます」

●取り組みの内容 3つの視点で施策を展開

ダイバーシティ推進における同行の施策は、①職域拡大(仕事をつくる)、②人材育成(人を育てる)、③環境整備(職場をつくる)の3つの視点で展開している(図2)。

これらを進めるうえで一番大事にしているのが、「意識の改革」だ。最近注力している「働き方の改革」「男性の育児参加促進」「イクボスの推進」も意識・行動改革を促す施策といえる。以下、主な内容を見ていこう。

■意識の改革

これまでも男性管理職や女性職員に対して多くの研修・セミナーを行ってきたが、近年の大きなイベントに、2015年3月に開催した「ダイバーシティフォーラム」がある。頭取以下、役員、支店長(部長級)・部長と、女性支店長・職員の総勢161人が参加。外部有識者の基調講演、頭取の講話、支店長と女性参加者の意見交換会を行い、相互理解を深めた。

職場全体の意識を変えていくため、「ダイバーシティ意識啓発ビデオ」も制作。全職場で視聴したうえで、職場ごとに勉強会を行った。勉強会では、モラールサーベイ(意識調査)における女性のキャリア意識を紹介したり、仕事と介護の両立を議題とし、育児に関わらない人も“お互いさま”の意識を持ち、職場でどう取り組むかを考えてもらうようにした。

■時間外労働削減で賞与UP

【働き方の改革】

育児をする職員だけでなく、皆が早く帰れるようになれば、自己研鑽などに時間を振り向けられるようになり、“お互いさま”の意識がさらに高まる。

そこで、2013年9月、「業務効率化及び早帰り推進委員会」を設置。各営業店から寄せられた約1300件の提案を基に、細かいものを含めこれまで750件以上の施策を実行した。

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