J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年04月号

常盤文克の「人が育つ」組織をつくる 第10回 自然は我が師・我が友(前編)

元・花王会長の常盤文克氏が、これからの日本の企業経営と、その基盤となる人材育成の在り方について提言する本連載。今回からは少し視点を変え、自然界の動植物の生きざまや生態系から学ぶ、経営や人づくりに活かせる「知」について考えます。

常盤文克( ときわ ふみかつ)氏
1957年、東京理科大学卒、花王入社。米国スタンフォード大学留学後、大阪大学にて理学博士取得。76年取締役、90年社長、97年会長を歴任。著書に『 新・日本的経営を考える』(JMAM)『人が育つ仕組みをつくれ!』(東洋経済新報社)など多数。

自然を生きる動植物の知を戴く

春夏秋冬、四季の巡りの中で万物が生まれ、そして消えていきます。厳しい自然環境の下で生存競争を勝ち抜いてきた生き物たちの世界には、学ぶべき多様な“知”がたくさん潜んでいます。それは神さまが自然の中にそっと置いてくださった贈り物ともいえます。

そして私たちヒト(人)も、自然界の数ある生き物の1つの種に過ぎません。謙虚な気持ちで自然に寄り添い、生き物たちの“生きる”知を学ぶことで、私たちはより厚みのある仕事を楽しみ、より豊かな人生を送ることができるのではないでしょうか。

そこで今回は、自然の中から生き物たちの知をすくい上げて、企業経営や人材育成にどう生かすかについて述べたいと思います。なお、「生き物に学ぶ」といっても切り口はさまざまですが、ここでは彼らの生き方や、その多様性に着目します。

サバンナで競争・共生する動物たち

アフリカのサバンナは、雨季と乾季があり、低木が点在する大草原です。そこに棲息する動物たちの生きざまを思い浮かべてみましょう。サバンナというと、“弱肉強食”のイメージがありますが、決してそうではありません。ゾウやキリンなどの大きな動物や、ライオンやヒョウなどの一見強そうな動物ばかりが生き残っているわけではなく、小さなネズミや弱そうなウサギなども共に棲んでいます。

彼らの棲みかは、草むら、樹上、水辺、地下の穴ぐらなどさまざまです。食べものも、肉食や草食など動物により異なります。さらに同じ肉食動物でも、捕食の仕方はそれぞれです。ライオンは家族群で連携して狩りをしますが、ヒョウは1匹で獲物を追い詰めます。ハイエナは、群れで押しかけて他の動物の獲物を横取りします。草食動物にしても、地面に生える丈の低い草を食べるもの、高い草を食べるもの、樹木の下葉を食べるものもいれば上葉を好むものもいて、実に多様です。また、活動する時間帯も朝・昼・夜と異なり、子育ての仕方もそれぞれ違います。

このように、動物たちはみな個性のある生き方をしています。決して、見かけの強さや大きさだけが生存の決め手にはなっていません。むしろ、動物たちそれぞれが持つ独自の“生きる質”こそが、生き抜く力、すなわちバイタリティーなのです。

サバンナは、この質と質とを動物たちがぶつけ合い、競い合って生きる世界です。またそこには、競争と共生のバランスがあります。

動物たちの生き方から何を学ぶか

サバンナの動物たちの生き方を企業経営や人材育成に引き寄せてみると、いろいろなことが見えてきます。

まず、企業の優劣は、規模の大小や売り上げの多寡などで決まるのではない、ということです。新聞やテレビなどでは大企業が注目されがちですが、社員20~30人程度の優れた中小企業も多数あります。重要なのは、いかに他社と違う独自の活動(仕事)をしているかどうかです。小さくても個性ある生き方をしているサバンナの動物たちは、そんなことを我々に教えてくれます。

そして企業活動とは、各々の企業が持つ独自の質のぶつけ合い、競い合いだということです。ビジネスの世界をサバンナの生態系に倣って、“ビジネス生態系”と呼んでもいいでしょう。ビジネス生態系で企業の優劣を決めるのは、その企業がどんな質=生き抜く力を持って活動しているかです。

企業の人材育成においても同様です。人育てに、こうすればいい、という近道はありません。それぞれの企業が独自の質、独自の哲学を持って人づくりをしていくべきです。

また人は、同じ育て方をしたからといって、誰もが(会社の思い通りに)同じように育つとは限りません。しかし、それでいいのです。人材育成の結果、社員たちのさまざまな個性が発現され、その個性が上手に組み合わさることで、その企業ならではの独自の質が生まれます。そんなことも、サバンナの動物たちの生きざまから汲み取ることができます。

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