J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年04月号

OPINION1 今どき社員の“意欲の源”とは モチベーションを上げる 「歩み寄り」と「未来志向」

組織や上司は、若者の成長のためにその“やる気”を刺激する策を講じなければならない。
しかし、若者のモチベーションは多様化しており、どうすればやる気を引き出すことができるのか、頭を悩ませる人事担当者は多い。
若手社員のモチベーション・マネジメントの方法を聞いた。


菊入 みゆき(きくいり みゆき)氏
JTBモチベーションズ ワーク・モチベーション研究所長/明星大学 特任教授
筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程修了。カウンセリング修士。
JTBモチベーションズ設立時より、モチベーション研究、調査、商品企画に注力。
特に内発的動機づけの促進、キャリアとモチベーション、組織におけるモチベーションの伝播などについて研究およびコンサルティングの実績を積む。著書に『事例に学ぶ!モチベーション・マネジメント-組織活性化の処方箋』など多数。







大内 亮(おおうち りょう)氏
JTBモチベーションズ モチベーションコンサルティング局 コンサルタント
大学卒業後、ヘッドハンティング会社の人財プロデューサー、ベンチャー企業の立ち上げ等の経験を経て、2008 年に同社に入社。以後、ワーク・モチベーションの維持・向上に関するプロジェクトを幅広く企画・運営する。主なテーマは「若手社員とその管理者の育成」「チーム力向上」など。

(JTBモチベーションズは2016年4月よりJTBコミュニケーションデザインに社名変更)

[取材・文]=大沢玲子、[ 写真]=編集部

モチベーションの源泉

―働く人のモチベーションアップの実践に携わってきた立場から、現在のモチベーション・マネジメントの特徴についてお聞かせください。

菊入みゆき氏(以下、菊入)

大前提として申し上げたいのは、今の時代、もはや画一的な施策では対応できないということです。

価値観や市場ニーズも多様化する中、常識を打ち破るような創造性を発揮してもらうには、社員一人ひとりのモチベーションのスタイルを理解し、個々に適切にアクセスすることが肝要です。また、さまざまなモチベーション・スタイルの人材を活用することこそが、変化に強い組織づくりにつながるものと認識し、戦略的に取り組む必要性があります。

大内亮氏(以下、大内)

今の若手社員については、「安定志向が強い“そこそこ型”」といった声も聞かれますが、一方で情報処理能力が高く、仕事の意味や自分の役割をしっかりと理解し、取り組みたいというまじめなタイプも多い。仕事を通じ、社会に貢献したいというピュアな動機を根本に持っているのも、昨今の若手社員の特性です。

「モチベーション×知識・スキル=成果」という公式があるように、同じレベルの知識・スキルの人がいたら、モチベーションが高いほうがハイパフォーマンスを生むことも明らかにされています。人手不足も深刻化する中、若手社員のやる気を適切に引き出してこそ、組織としての高い成果にもつながるのです。

―彼らのモチベーションの源泉はどこにあるのでしょうか。

菊入

当社では、やる気を引き出す要因、つまり「モチベータ」には11 の要因があると考えています(図1)。どういった要因でやる気が左右されやすいのか、その傾向を分析し、モチベーション向上施策を構築するうえで活用しています。

企業、世代、職種、あるいは個人によっても、どの要因が強く影響するかは異なりますが、大きく2つのタイプに分けられます。

1つが内発的要因で動くタイプ。自分の内側から湧き出るようなやる気やエネルギー、例えば、1.「適職」、2.「自己表現」などへの関心が高く、これに満足感が左右されやすい傾向があります。

もう一つが、外発的要因で動くタイプ。職場の7「. 人間関係」や、9「. 環境整備」など、仕事の内容とは直接関係ない外からの刺激に影響されやすい傾向があります。

「企業理念」の重要性

菊入

昨今の若手社員はどうかというと、入社1~3年の間は、外発的要因が強く働くことが多いです。

とっかかりとなるのが「人間関係」です。彼らは小さい頃から人の和を大事にし、“空気を読む”ことも得意。職場においても、「尊敬できる先輩や上司がいて、居心地がいいか」、あるいは「助け合える仲間がいるか」などを重視し、こうした人間関係の在り方が彼らのモチベーションの高低に影響する傾向が見られます。

大内

自分の役割や仕事の目的を理解し、納得したうえで仕事に取り組みたい意識が強いため、仕事の手順が明確であるかといった「環境整備」も、やる気を左右するポイントとなります。また、「人間関係」に付随し、上司や周囲から期待され、評価されているかという6「. 期待・評価」も、彼らにとっての大きなモチベータです。

―若者のモチベーションの源泉はもっと多様化しているのかと思っていましたが、一定の傾向は見えそうですね。つまり、接する先輩社員や上司、ひいては会社全体の風土の影響が強いというわけですね。

大内

そうです。ですから、新入社員教育は、Off-JTだけでなく、職場に配属されてからの経験学習が重要です。当社では、若手社員への研修と、管理職向けのコミュニケーション研修などを並行して行うことが多いのですが、近年は、新入社員向けの研修として、企業理念やビジョンを浸透させるプログラムを取り入れることも推進しています。

先にも触れたように、今の若手社員は社会貢献への関心が高い。逆を言えば、高い理想を描いて入社したにも関わらず、現実は目の前の仕事に追われるようなギャップに苦しみ、仕事の本来の目的を見失い、やる気をそがれやすいという側面もあります。

そこで支えとなるのが、会社がどこに向かおうとしているのか、拠り所となる将来的ビジョンです。

実は、企業理念の浸透は、従業員の業績と自律性に深く関係しています。企業理念という軸を持つことで、迷いがなくなり、指示された仕事でも、自分なりに工夫をするような自律性が高まることが、調査で明らかになっています。

菊入

企業理念を浸透させるためには、上司が部下に伝え続けることも必要でしょう。そういう意味でも、上司と部下のコミュニケーションは重要です。部下が、「上司がサポートしてくれるから頑張ろう」と思えるような互いの信頼関係がしっかり育まれているか否かが、その後の部下の成長の大きなカギを握るのです。

上司からの歩み寄りが必要

―では、実際に上司・先輩社員は、どのようなコミュニケーションを心掛けていくべきなのでしょうか。

菊入

ポイントは2つあります。

第一に、部下の今の状態をきちんと把握し、具体的な言葉で、行動の承認、アドバイスを行うことです。

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