J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年03月号

グローバル調査レポート 第12回 グローバル企業が実践する ハイポテンシャル人材の選抜と育成

グローバル化の進展やテクノロジーの進化など、日本企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化している。
今、そんな荒波を切り拓く次世代リーダーが求められているが、その予備軍となるハイポテンシャル人材の選抜と育成に悩む企業は少なくない。
グローバル調査をひもときながら、日本企業にとってのヒントを模索する。
Reported by: KORN FERRY (HayGroup)


トム・ペダーセン(Tom Pedersen)氏
コーン・フェリー シニア・パートナー
アメリカ・カリフォルニア州出身。足掛け30年近くにわたって日本に在住。新生銀行ではCLO(チーフ・ラーニング・オフィサー)、シンガポールDBS銀行ではラーニング&タレント・ディベロップメントのヘッドとして人材戦略の立案やヒューマンリソース実務を主導する。2013年より現職。

1 次世代リーダー育成が共通課題

将来、自社の成長を牽引してくれるようなリーダーはどう見極め、育成していけばいいのだろうか。現在大きな成果を上げているトップの後任はどうやって選べばいいのだろうか。

あらゆる企業が早晩、サクセッション・マネジメント(後継者の計画的育成)の問題に直面する。組織の中核を担うリーダーの後継者は、必要になってから慌てて探しても遅い。組織の舵を取るようなリーダーの育成には数十年もの時間を要するのに、リーダーはいつ必要になるともしれないのだ。

そのうえ、時代の変化はかつてないほど激しく、仕事の難易度も年々上がっている。現在成果を出せていても、そのスキルが将来も通用するとは限らない。未来を見据えたリーダー育成が求められている。

リーダー育成に当たり、サクセッション・マネジメントの取り組みが日本企業の間に広まって久しい。これは歓迎すべきことである。かつて一般的だった上司推薦という古色蒼然とした手法と決別し、組織内の幅広い人材を対象に、より客観的な指標を用いて計画的にリーダーを選抜・育成しようとしているのだから。

また2015 年より、上場企業を対象にコーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)が導入され、企業経営への外部からの監査や指摘が強化されるようになった。これはリーダーの選定にも一層の透明性や妥当性が担保される必要があることを意味する。

2 高度人材見極め時の“落とし穴”

そこでコーン・フェリーでは2014 年末に、サクセッション・マネジメントをテーマにしたグローバル調査を行い、欧米を中心としたグローバル企業の1000人を超えるトップエグゼクティブや人事責任者から回答を得た。結果、一部の確固とした手法を持つ先進企業を除き、欧米企業もサクセッション・マネジメントが成果を上げているとは言い難いことが明らかになった。

この調査の中から、特にサクセッション・マネジメントの入り口となるハイポテンシャル人材の選抜と育成にフォーカスし、日本企業にとってのヒントを模索してみよう。

ハイポテンシャル人材の選抜・育成は、他の人事施策と比較して時間とコストがかかる。いかにしてその費用対効果を高めることができるのか。それを探るべく、まずは、私たちがよく目にする落とし穴をご紹介したい。

①ハイパフォーマーとハイポテンシャル人材を混同する

「パフォーマンス」とは、現在の職務においてどの程度効果的に成果を創出しているか、である。一方、「ポテンシャル」とは、中・長期的に見て、さらに上層の管理職として成功するための資質を備えているか、であり、明らかに両者は異なる。現在職務と上位職務とでは求められる要件が異なるため、現職で高いパフォーマンスを上げていても、上位職務でも成果を挙げられる保証はないのだ。ハイポテンシャル人材がハイパフォーマーになる確率は高いが、ハイパフォーマーの30%しかハイポテンシャル人材ではないという調査もある(Corporate LeadershipCouncil、2005 年)。

したがって、現職のパフォーマンスは重要な指標とはなるものの、それだけを意思決定の判断材料とするのは避けるべきだ。今回の調査からも、ハイポテンシャル人材を正確に特定できていることに自信を持つ回答者はわずか51%だった(図1)。

②個人の志向を考慮しない

加えて、多くの企業が、個人の志向性やキャリアゴールといった重要なポイントを見落としている。リーダーになることを望まず、今の職務で専門性を究めたいという人も決して少なくない。特にCEOなど、上位職務になればなるほど不確実性やプレッシャーといったリスクにさらされる。今回の調査では、CEO への昇進が見込まれる人材の約1/3(33%)はその職務を望んでいないことが分かった(図2)。そういう人材をリーダーに抜擢しても、本人も組織も不幸になるだけだ。

しかも、上司や人事に本音を公言できない雰囲気が存在することもあるので、アセスメントや面談など、さまざまなアプローチから本心を見抜くようにすることが求められる。

③レディネスを考慮しない

ハイポテンシャル人材と一口にいっても、すぐに上位職務に就くだけの能力や経験を備えている人もいれば、将来性を見込まれるだけで、まだ能力や経験が不足している人もいる。

ここで大事になってくるのが、近い将来さらに上層の管理職として活躍するための準備はできているか、というレディネス(準備度合い)の視点だ。自社に「準備万全」の人材パイプラインがあると考えている企業は調査回答者の4社に1社未満だった(図3)。また、自社に「準備万全」の人材がいると自信を持って言えるのは、回答者の52%に過ぎなかった(図4)。

④組織内の幅広い人材層を選抜対象にしていない

ハイポテンシャル人材を選抜する際、ある程度実績のある中堅社員を主な対象とし、若手社員や高技能人材(高い専門性を持つ一般社員クラスの人材)を最初から除外している例も見られる(図5)。これでは本当に潜在能力のある人材を見落とす可能性があり、また、対象外となった人材のモチベーションや組織への帰属意識を損なう恐れもある。ハイポテンシャル人材の育成には時間がかかるので、早期から育成を開始するためにも、若手社員も含めた全階層を対象とすべきだ。

3 個人を包括的に判断すべき

これまで見てきたようなハイポテンシャル人材の選抜・育成に関する落とし穴を踏まえつつ、私たちなりの提言をしたい。

私たちが提唱するのは、コンピテンシーや経験といった目に見える要素だけでなく、その背景にある個人の動機づけ要因や性格特性といった内面的かつ先天的要素も含め、人物を包括的に見ることである。私たちはこれをKorn Ferry's Four Dimensions ofLeadership and Talentというフレームワークにまとめた(図6)。

ポイントは、コンピテンシーや経験といった、これまで重視され、開発も可能な領域に加えて、表には見えないが本人を形成する“芯”とも言える要素も判断材料とすることだ。

具体的には、本人が生来持つ志向性や適性といった「性格特性」、本人のキャリアゴールやモチベーション、エンゲージメントに影響を及ぼす価値観や興味関心といった「動機づけ要因」である。これらは本人の言動の源泉となるものだ。

これらの先天的/後天的要素を総合的に診断することで、より精緻にリーダーシップ・ポテンシャルを見極めることが可能となる。

4 見極める7つの指標

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