J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年03月号

常盤文克の「人が育つ」組織をつくる 第9回 これからの人づくり

時代のあらゆる流れを受け、日本の企業の経営や組織運営の在り方は岐路に差しかかっています。人が育つ組織に必要なこととは。
元・花王会長の常盤文克氏が、これからの日本の企業経営と、その基盤となる人材育成の在り方について、提言します。

常盤文克(ときわ ふみかつ)氏
1957年、東京理科大学卒、花王入社。米国スタンフォード大学留学後、大阪大学にて理学博士取得。76年取締役、90年社長、97年会長を歴任。著書に『 新・日本的経営を考える』(JMAM)『人が育つ仕組みをつくれ!』(東洋経済新報社)など多数。

「人が育つ」環境をつくる

今回は、これまで取り上げた“人育て”を振り返りながら、改めて「人が育つ組織」の在り方を考えてみます。

まず、組織の中で人が育つには、“育つ”文化や風土の有無が問題です。この文化や風土は、目に見えない形で存在する、組織の中に宿る「黙の知」や「共同体精神」と深く関わっています(連載第3回参照)。また、時をかけて集団の中で積み重ねられてきた人々の価値観や信頼感、温もりといったものも大切です。

夢や幸せがやる気を生む

企業にとって大切なのは、売り上げや利益などの数値目標だけではなく、社員の“夢”や“幸せ”、そして経営トップの掲げる“旗”です(第7回)。その旗は、社員が「これは面白い。よし、やってみよう」と奮い立つような、“きらめく旗”でなければなりません。

教育の制度や仕組みをいくら整えても、それだけでは人は育ちません。これは長く経営に携わってきた私の経験からも明らかです。挑戦したくなる夢のある仕事、やり甲斐のある仕事であるかどうかが大事なのです。この挑戦を通して、人は自ずと育つのです。

興味こそ仕事の原動力

夢のある仕事とは、“興味”が湧く面白い仕事のことです。興味が、よい仕事の原動力となります。

このことについて、画家の安野光雅さんは、ある雑誌のコラムで、ヨーロッパ旅行中にパリのカフェで出会った学生とのエピソードを紹介しています。

安野さんと学生さんは、そのカフェで意気投合し、いろいろな話をしました。会話が弾んできたその時、不意にその学生さんは「これから大学の講義があるので失礼します」と言うのです。安野さんは「勉強はImportant(重要)だから、行きなさい。頑張って」と声をかけて別れたのですが、彼は踵を返し、こう言ったそうです。

「いや“、Important”だからではなくて、“Interest”(興味)があるから勉強するのです」

安野さんは、この言葉を聞いて、目の覚める思いをしたそうです。

―考えてみれば、私も重要なことを優先してやってきたわけではありません。自分に興味があることをやってきただけです―と安野さん。

思い返すと私も、入社してから退社するまで仕事を面白くやり続けられたのは、仕事への興味が尽きなかったからです。

立ち止まって考える機会を

人が育つうえでもう1つ大切なことは、自分の頭で考えることです。考えることなしには、創造も革新も生まれません。

今の時代は情報が巷に溢れ、インターネットを使えば、あらゆる知識が手に入ります。しかしネットサーフィンも、一歩間違えれば情報を漁あさることが目的となり、思考の妨げになってしまいます。

自分の頭で考えなくなると、組織や集団が間違った方向に進んでいても、違和感を抱かなくなります。昨今見られる幾つかの企業の不祥事も、これと無関係ではないでしょう。

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