J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年03月号

人材教育最前線 プロフェッショナル編 自身の適性を知り、強みを持つ市場で認められるプロ人材づくり

入社から10年間、営業一筋で歩む中、あるきっかけにより突如、人事に抜擢され、その後、キッコーマンの人事制度に次々と革新を起こしてきた執行役員 人事部長の松﨑毅氏。売り上げや利益に直結していなくても、人事部は社員の能力や可能性を伸ばし、企業の成長に貢献するひとつのプロフィットセンターだと考える。「社外に出ても通用する、市場で価値が認められる人材を育てたい。いくつになっても成長できる人材を育てたい」――。そこには人事としての夢と誇りがある。

執行役員 人事部長 兼
キッコーマンビジネスサービス
取締役 人事部長
松﨑 毅(Tsuyoshi Matsuzaki) 氏
1981年キッコーマン入社、大阪支店販売課に配属。1991年人事部人事課に異動すると、採用担当を経て、CDP 制度や選抜研修制度などを立ち上げた。その後、営業企画部宣伝課、そして人事部勤労課に移り、勤労給与グループ長、人事教育グループ長などを経て、2008年人事部長に就任。2013 年執行役員就任。
キッコーマン
1917年設立。しょうゆをはじめとする調味料および、食品の製造と販売を行う。主力製品の「キッコーマンしょうゆ」は1950年代から本格的に海外展開し、現在7つの海外生産拠点を擁し、100カ国以上に出荷。グローバルスタンダード調味料の地位をめざす。2009 年に企業分割を行い、持株会社制に移行。
資本金:115億9900万円(2014 年3月31日現在)、連結売上高:3431億6800万円(2014 年3月期)、連結従業員数:5622名(2014 年3月31日現在)
取材・文・写真/髙橋真弓

営業から人事へ

人事部長の松﨑毅氏がキッコーマンに入社したのは1981年。当時、いち早くグローバル展開していたことや、人を大切にする社風に魅力を感じ、入社を決めた。

最初の配属は大阪支店。希望していた営業職に就いた。3年間を大阪で過ごした後、京都支店で7年間、営業に携わった。

「充実した10 年間だった」と松﨑氏は振り返る。しかし、京都支店勤務5年目を過ぎたあたりから、なかなか異動辞令がおりないことに疑問を感じていた。当時、ローテーション制度はなかったが、人事異動は行われていたため、「自分は“リスト”から漏れているのでは……」と不安になったという。

「同じ環境、同じ仕事が長く続けば、人間はモチベーションを維持しづらくなると思っていました。そんな時、人事部長や課長が全国を回って社員と面接し、意向を聞く人事巡回が行われました。京都巡回の折、自分の異動はまだなのか、会社はきちんと人を動かしているのか、と話し、さらに、年1回提出する自己申告書にも、“私が人事に行ってローテーション制度をつくる”などと偉そうに書きました(笑)。と言いつつ、内心では、“別の場所で次も営業を”と思っていたのです。“7年も京都にいたのだから、そろそろ別の場所に移してやろう、と考えてくれるのでは?”。そんなイメージでした。

ところが、当時の人事課長が、“地方に人事を希望している社員がいる。新しい人事制度の構築をやらせたら面白いんじゃないか”と、本当に人事に異動になってしまった。実際に行くとは全く思っていなかったので、自分自身が一番驚きました」

キャリア制度を立ち上げる

最初の1年半、人事課で採用担当を務めると、翌1992年秋、キャリア制度をつくるために、同課の人事企画に移った。そこで立ち上げたのが、複数の職務経験で能力を開発するCDP(Career Development Program)制度である。

当初、“キャリアとは、会社が世話をするものなのか。自分で考え、自分で実現するべきもので、しかも思い描いた通りになるかもわからないのに、会社がわざわざ研修や面接をやる必要があるのか”などといった意見もあった。しかし、松﨑氏は、ルーチンワークが忙しい中でも、あえて考える場をつくり、「こういうことをやりたい」「こうなりたい」と、人事部や上司に対し、自ら発言する場が必要だと考えた。そうすれば、社員も自分に足りないもの、やるべきことを考え、取り組み始めるに違いない。制度化によって、社員たちにとってプラスになるのはもちろん、会社にとってもよい結果につながるはずだと信じていた。

ジョブ・ローテーションでは、3+3+3年間で3カ所を回る。ポイントは、若いうちに経験の機会を与えること。柔軟性がある若い時にさまざまな職務を経験する中で、自らの適性を理解できるし、会社側も同様に社員の適性を把握できる。自分が進みたい道や適性にかなう道があれば、10 年目以降、そこに特化したプロフェッショナルになる。そういうきっかけづくりになる制度をめざした。

「“さまざまな職務を経験させることで個々の適性を見る”という目的は重要なポイントでした。それは、会社からだけではなく、個人の側からも自らの適性を発見する機会となります。自分が将来何のプロになれば会社に貢献し、自らの自己実現につなげられるのか、ということを考えられるからです。一人ひとりが自分のキャリアを考え、そのために努力をすることが個人の成長につながり、ひいては会社の成長に結びつく、と考えたのです」

CDP 制度はその後、2001年の改訂で4+4年の8年ローテーションに短縮されたが、今もキッコーマンのキャリア教育の中軸を担っている。

選抜研修制度の未来創造塾

人事企画の頃、CDP 制度のほかにもうひとつ、力を注ぎ、構築したのが選抜研修である。HRD(HumanResource Development)を立ち上げ、選抜研修の体系づくりを提案。教育チームと協同で取り組んだ。

スタート当時は2つの選抜研修を走らせていたが、2005年、人事教育グループ長に就くと改訂を行い、ジュニア、ミドル、エグゼクティブと30、40、50代ごとに実施。しかし、世代を分けたことで階層別研修のような位置づけになってしまったため、2008 年、人事部長になるとブラッシュアップを図り、「未来創造塾」へと生まれ変わらせた。

「未来創造塾」のカリキュラムには、管理職一歩手前の社員を対象とするステージ1と、部長職で将来の役員候補となるステージ2がある。それぞれ期間は2年。個々のスキルアップとキッコーマンの事業やDNAをしっかりと伝承することを目的とした。各々の塾長を務めるのは、ステージ1が社長、ステージ2が会長。1年目は外部の研修機関や異業種交流も活用し、徹底的にインプットする。そして2年目はそうした勉強を踏まえたうえで、自分の職場で成果を上げる仕組みにした。

「それまで人材の育成にはトップがほとんど関与していませんでした。特に幹部候補生を育成する時には、トップがその重要性を認識し、自らが直に教えていくことが大切です。これは企業のDNAや理念を伝承するうえで不可欠だと考えています」

未来創造塾では、会長や社長だけでなく、CHO(最高人事責任者:専務)、CSO(経営企画室長:常務)、CFO(最高財務責任者)などのラインのトップにも、想いや考え方を各々の立場で語ってもらう。

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