J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年02月号

JMAM 通信教育優秀企業賞 表彰企業事例報告 マツモトキヨシホールディングス 「マツモトキヨシWAY」に基づき段階的に教育機会を提供し次世代のリーダーを育成

「美と健康の分野(ヘルス&ビューティー事業)」に特化した経営戦略で「売上高1兆円企業」をめざすマツモトキヨシホールディングス。同社は「社員一人ひとりが成長することで、会社が成長する」という信念に基づき、自己啓発を能力開発の柱の1つに据えている。加えて、通信教育とアセスメント試験を昇格要件として導入。2014年度からはさらに次世代リーダー育成にもその施策を広げ、集合研修とも連動させて活用している。

小部(おべ)真吾氏 執行役員 人事部長
マツモトキヨシホールディングス
1932年、創業者の松本清氏が千葉県松戸市に個人経営の松本薬舗を創設。同店がマツモトキヨシホールディングスの前身である事業会社マツモトキヨシの礎となる。1954年、法人組織化。アメリカで学んだチェーンストア理論を取り入れて多店舗化を推進し、1987年には都市型ドラッグストアの先駆け「上野アメ横店」をオープン。1990年に株式を店頭公開、2007年、マツモトキヨシホールディングスを設立し、業界シェア10%、グループ店舗数2000店、売上高1兆円をめざして邁進中。
資本金:220億5100万円、売上高:4953億8500万円、連結従業員数:正社員6089名、パート8527名(8時間換算)、計1万4616名(2014年3月末現在)
文/井戸沼尚也 写真/マツモトキヨシホールディングス提供、井戸沼尚也

組織成長のカギは人材育成

黄色い看板と、創業者の名をカタカナ表記でそのまま付けたインパクトの強い店名が首都圏でよく見られるようになったのは1980年代のこと。その店こそ『マツモトキヨシ』。一度聞いたら忘れられない名前のドラッグストアだ。多店舗展開を進めた当時から独自の存在感を放っていたマツモトキヨシは、東京・上野にオープンした「上野アメ横店」の成功によってさらに独自性を強めていく。「上野アメ横店」は明るく開放的な入口、医薬品や健康食品だけではなく美容関連の商材にも力を入れた品揃え等、現在のドラッグストアの基本となるスタイルをつくった。

マツモトキヨシは、前述したドラッグストアに見られる独自色を徹底して打ち出すと同時に、国内で認識され始めた「セルフ・メディケーション」(病気になってから病院で治療を受けるのではなく、自分の健康は自分で守ろうという予防医学的な考え方)の流れに乗り、“地域のかかりつけ薬局”として急速な多店舗化に成功。1995年には業界売上日本一となり、名実共に日本のドラッグストアのリーディング・カンパニーとなった。

マツモトキヨシホールディングス(以下、同社と表記)は全国を7つのエリア(北海道・東北、甲信越、関東、東海・北陸、関西、中国・四国、九州・沖縄)に分け、それぞれの地域でドミナント化(ある一定の地域に集中的に出店すること)を推進し、さらなる成長をめざしている。

経営戦略上の課題は、狭小商圏モデルの確立とOne to Oneマーケティングの深化、地域医療と連携した調剤事業の拡大など複数あるが、全ての課題のカギとなるのが「人材の確保と育成」だ。同社の人材育成について、詳しく見ていこう。

教育体系と4本の柱

同社の能力開発の基本的な考え方は、グループの経営理念である「1stfor You. あなたにとっての、いちばんへ。」にある。これについて、執行役員人事部長の小部真吾氏は次のように語った。

「経営理念の“あなた”とは、お客様はもちろん、当社に関係したステークホルダー全員を示しており、そこには従業員も含まれています。“会社にとってのいちばん”とは何か、“従業員にとってのいちばん”とはどのような状態かを常に考え、その状態に向けて人材を育成していくことが重要だと考えています」

人と組織のあるべき姿を表しているのが、「マツモトキヨシWAY」だ。その一節に「全ての社員が創意工夫を凝らし、自由にアイデアを出し合い、失敗を非難したり恐れることなくチャレンジ精神をもって仕事に当たる」とある。自由闊達で、創意工夫に満ちた組織風土と、自ら考え、チャレンジ精神に溢れた人材。こうした風土を育み、人材を育成するために、同社はさまざまな制度の新設や見直しを行った。

例えば、ボトムアップ型の改善をめざす「社内提案制度」、社員のチャレンジ精神に火をつける「社内ベンチャービジネス制度」、出産後・育児中の女性社員の活躍を支援する「在宅勤務制度」や女性の管理職登用を積極的に推進する「チャレンジ店長制度」など、社員がやりがいをより高めるための制度づくりが進んでいる。

同時に、教育研修体系も整備した。現在も店舗数を拡大し続けている同社では、次世代の経営を担う人材、薬剤師に代表されるプロフェッショナル人材を計画的に育成していく必要がある。こうした人材を、「階層別研修」「職種別研修」「自己啓発」に「OJT」を加えた4本の柱で育成していくというのが基本的な考え方だ(図1)。

階層別研修は、新入社員研修に始まり、店長研修、管理職研修、評価者研修まで段階的に行われる。そして職種別研修は、薬剤師、医薬品販売、管理栄養士、化粧品販売等、職種ごとに必要な知識やスキルを習得していく。

自己啓発も重要な役割を果たしている。その核となるのは、通信教育だ。

「そもそも、当社のように多店舗展開している企業では、集合研修の実施は物理的に難しいという問題があります。そこで、研修でなければできないことと、通信教育で学ぶことができる知識を中心とした要素を切り分けて、それぞれの教育手段を適宜活用しながら能力開発を行いたいと考えました。当社は『自分で考え、自ら動く人材』を求めています。その観点で言うと、通信教育は情報を与えられるのではなく、自分が求める知識を自ら学んでいく学習方法であり、当社が求める人材を育成するのに大変適していると思います」(小部氏、以下同)

さらに、OJTに関しては「ブラザー・シスター制度」を導入。

入社して間もない時期から3年間にわたり年齢や社歴の近い先輩社員が、同社の「WAY」を理解してもらったうえで仕事上の不安や悩みの解消、業務の指導・育成を担当。上司とは別の相談相手ができることで、必要なスキルや技術を身につけながら、会社に馴染むことができる。

指導・育成にあたる先輩社員にとっても、マネジメントの技術を身につけるための場であり、OJTならではの良い循環をもたらしている。

昇格要件としてMBAを学ぶ

また同社は、通信教育を昇格要件、自己啓発、そして次世代リーダーの育成に活用している。それぞれの施策について見ていこう。

まず昇格要件については、同社の資格体系で定義された特定の階層からの昇格に、定められた通信教育コースの修了と認定アセスメントの合格が義務づけられている。

具体的にはL層(育成層)からS層(管理監督者層)へ、S層からM層(マネジメント層)へ、M層からE層(経営幹部層)へ昇格する各段階だ(図2)。

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