J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年02月号

CASE.3 東ソー 仲間意識、挑戦、成長実感── ホワイト企業ランキング1位 日本一“辞めない”会社

全世界に29の拠点を有する総合化学メーカー、東ソー。
新卒社員の入社3年後離職率は、ほぼゼロ%。
社員たちが辞めない理由は、きめ細かな絆づくり、支え合い、そして常に挑戦できる風土にあった。グローバルレベルで進化しつつも、昔ながらの日本企業のよさを貫く工夫、仕組みとは。

東ソー
設立 1935年。クロル・アルカリ事業、石油化学事業、機能商品事業を柱にさまざ
まな事業を展開している。
資本金:406億円(2014年3月末現在)、連結売上高:7723億円(2014年3月期)
従業員数:2830人(2014年3月末現在※単独)
[取材・文]=赤堀たか子 [写真]=アサヒビール、編集部

● 新卒者定着率の指標「3年間離職率」ゼロ%

新卒社員の採用と育成は、企業経営においてリスクのある投資だ。即戦力が期待できる中途採用と違い、多くのコストと時間と労力がかかる。ほぼ1年がかりで採用広報と選考を行い、入社後は経験と知識のない若手に仕事のやり方を一から教えなくてはならない。やっと会社に利益をもたらすまでに成長した社員を失うことは、企業にとって大きな損失なのは言うまでもない。

東洋経済新報社は毎年、企業のCSRの取り組みについて独自のアンケート調査「CSR調査」を行い、『CSR企業総覧』を出版している。その項目に新卒者が3 年後にどれだけ在籍しているかを見る「新卒3年後定着率」があり、「ホワイト企業ランキング」として上位300社を公開している。それによると2010年4月入社社員の3年後定着率100%の会社は125社(全て同点で1位)。その中で最も新入社員数が多かった日本一の「ホワイト企業」と認定されたのが東ソーである。2010年4月の新卒入社数は男性114人、女性8人の計122人。学歴別の内訳では大卒48人、短・専門卒9人、高卒など65人。この全員が13 年4月時点で会社に在籍している。

厚生労働省の『新規学卒者の離職状況に関する資料』によれば、2011年3月卒の大学卒の3 年後離職率は32.4%。東ソーが該当する就業者数1000人以上の企業に絞っても22.8%ある。122人の新卒入社社員が3 年で1人も辞めないことがいかに凄いかがわかる。この日本一の“辞めない企業”に迫った。

● 風土の素1 「仲間意識」入社後は工場で製造を学ぶ

創業80 年の総合化学メーカーである東ソーは、山口県周南市と三重県四日市市に2 大製造拠点を持つ。2014年3月期の連結売上高は前期比16%増の7723 億円だ。

大卒以上の総合職は全国採用、高卒以上の工場オペレーターは地元採用だ。総合職は新人研修の後、文系理系にかかわらず全員がこのどちらかの工場に配属される。

「製造現場を経験することでメーカーの基本を勉強します。大学を出てすぐ研究職や営業職に就いても、製造のことがわからなければいい仕事はできないからです。文系は経理部門や物流部門、人事部門に配属。工場がどのように運営され、物流がどう動くか、どんな資源を使って製品がつくられ、コスト構造はどうなっているのかといった、メーカーの原点をしっかりと学びます。短期的には戦力になっていないかもしれませんが、長期的な成長性はこの学びにより、大きくなります」と大村朗人事部長は語る。

例えば製造を知らないまま営業に配属されれば、顧客や工場の担当者に対して通り一遍な対応となりがちである。だが1年以上、製造現場で働けば、知識や人脈が蓄積される。それが営業の武器となり、顧客から一目置かれ、工場からも信頼される。こうした人材になれば、自信もつき、活躍の場も広がるだろう。結果的に転職など考えなくなるわけだ。

技術系は、大学院を卒業した修士や博士であっても、半年以上は工場に勤務し、製造スタッフとして生産管理や設備設計、品質保証などの業務に就く。

「研究職に就く者であっても、製造など他部門を理解するために現場の経験は不可欠です。また、技術系の新入社員の多くは大学で研究をしてきたという理由で研究職を志望して入ってきますが、製造現場を経験することで視野が広がり、製造技術の仕事に働きがいを感じる社員もいる。中には、『このまま製造の仕事に就きたい』と考える人もいます。そうした人の気持ちはきちんと尊重して配属しています」と大村氏は言う。

一般に転職理由として多いのは、「入ってみたらやりたい仕事ができなかったから」というもの。将来の目的が明確ならばそれもよいが、若さゆえの思い込みから安易に転職をするケースも少なくない。表面的な研修ではなく、一定期間しっかり働かせることが、仕事本来の面白さややりがいを生み出している。その結果として職種のミスマッチが減るのだろう。

定着率に大きな効果をもたらしているのが寮生活だ。工場に配属された大卒の新卒入社社員は全員が寮に入る。同期との1年間の共同生活で生まれるのは、強い横のつながりだ。酒を飲みながらその日、体験した仕事の大変さや面白さを共有したり、未来を語り合ったりする。休日には一緒に遊びに行くこともある。「そうしてできた絆はおそらく一生続いていくものでは」と大村氏。数年後に別々の部署に配属された後は、よき仲間、よきライバルとして切磋琢磨しながら成長していく。それぞれの部門で一人前になった同期が部門の壁を飛び越え、新しいビジネスを生み出す可能性も期待できそうだ。

一方、地元採用された工場オペレーターが辞めない理由としては、企業の安定性や福利厚生、働きやすさ、地元からの信頼、仕事のやりがいなどで、従業員満足度の高さが伺える。1970年、山口県周南市の南陽事業所(工場)に入社した高卒者220人のうち、最近、定年退職を迎えた社員は200人にものぼるという。その定着率は91%。病気や死亡、家庭のやむなき事情以外で転職、退職した人はほぼいないそうだ。

● 風土の素2 「挑戦」責任ある仕事がやりがいを生む

東ソーは組織マネジメントの基本理念として、“持てる力を最大限発揮できる「創造的組織」”、“加点主義を徹底した評価による「挑戦的風土」”、“努力した者が本当に報われる「公平な処遇」”という3つを掲げている。

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