J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年04月号

特別企画 JMA能力開花大賞2012 能力開花賞 表彰企業事例報告 富士ゼロックス

日本能率協会では、1988 年より、優秀な能力開発を行った組織を「能力開発優秀企業賞」として表彰してきたが、企業や組織に対する社会的な要請の高まりを受け、2012 年、従来の制度に「社会」や「個人」の視点を盛り込んだ新しい表彰制度「能力開花大賞」を創設した。
第1回は、富士ゼロックスコントローラ開発本部とトレンドマイクロが、「能力開花賞」を受賞。
本誌では、「富士ゼロックスコントローラ開発本部」の小集団活動、「Plism 活動」を紹介する。

大谷 敏 氏 
コントローラ開発本部コントローラプラットフォーム第二開発部部長

上條 裕義 氏
コントローラ開発本部コントローラプラットフォーム第五開発部マネジャー


富士ゼロックス
1962年富士写真フイルムと英国 ランク・ゼロックス社(Rank Xerox:1997年10月31日にXerox Limitedへ商号変更)との合弁会社として創立。オフィスプロダクト事業、オフィスプリンター事業、プロダクションサービス事業、グローバルサービス事業、ソリューション・サービス事業などを手がける。
資本金:200億円、売上高:9959億円、従業員数:4万5282名(2012年3月期連結)

取材・文・写真/赤堀たか子

技術者がわくわくできる小集団活動をめざす

富士ゼロックスコントローラ開発本部は、主力商品である複合機のコントローラ開発を担う部門だ。同部署では、組織活性化をめざし、2008年から「Plism(プリズム)活動」という小集団活動に取り組んでいる。この活動は、取り組みたいテーマを持った人がチームをつくり、自由に研究や勉強をするというもの。年を追うごとに取り組みは活発化し、2008年に4件だったテーマ数は2012年度に51件に増加。同本部の組織活性化の原動力になっている。Plism活動が始まったのは、2008年だが、そのきっかけは、2005年の「技術憲章」制定まで遡る。近年、同社では、効率化や短納期化に対応するために、製品の基礎的な部分を標準化する、いわゆるプラットフォーム化が進んでいる。その結果、効率化・共通化という方向に開発者の意識が向かい、また、世の中の変化や顧客ニーズに柔軟に対応するための技術者本来の創意工夫等が課題となっていた。こうした状況を受け、同社の常務が「技術者として忘れがちなことを呼び覚まそう」と呼びかけ、技術者が共有すべきビジョンとして「技術憲章」を制定した。その際、全社員を対象に主旨説明と意見交換会を実施し、コントローラ開発本部の前身であるオフィスプロダクト事業本部は、「技術憲章の精神を具体的な行動につなげるための取り組みが必要」との判断から、「技術憲章Plus1」という小集団活動を始めることにした。この活動は技術憲章推進委員会で決定して推進してきたが、大谷敏氏は、その目的を「若手の技術者に、わくわくするような経験をしてもらうため」と語る。「 我々やその上の世代は、若い頃、実験室の片隅で新しいもの・面白そうなものを使っていろんな実験を密かにやった経験があり、それがいいものを生む原動力にもなっていた。しかし、今は、“予算がない”、“時間がない”、“上司に怒られる”などの理由で、自由に実験ができない。しかも、効率を重視するあまりに、業務で行われる工夫といえば、カイゼン活動がほとんど。これでは、技術者は、面白くないし、創造力も高まらない。技術憲章で“技術が会社をつくる”と宣言した以上、技術者が会社をリードする必要がある。そのためには、技術者がわくわくしながら取り組めるものが必要で、その機会を提供したかった」(大谷氏)小集団活動をわくわくするようなものにするためには、自由に取り組めることが大切だ。そこで制度としては、なるべく公式な承認手続きを設けず、取り組むテーマは、仕事と直接関係がなくてもよく、やりたいことができる制度にした。また、業務の10%の範囲で工数に組み込むことを認め、会社公認の活動とした。さらに、報告書も、年に一度、2~3枚のレポートで良しとして、成果も求めないことにした。しかし、こうした敷居の低さにもかかわらず、2008年までは、片手で数えられるほどのテーマしか上がってこなかった。この活動を引き継いだのが、上條裕義氏だった。上條氏は、それまでの運営方法を継承し、「Plism活動」として新たな展開を始めた。ちなみに、Plismとは、「技術憲章Plus1」と「技術者ism」を組み合わせた造語で、推進委員がプリズムになって、技術者を輝かせたいという思いを込めてつけたという。

中間層の行動の変化が組織風土の改善になる

Plism活動として新たな展開を進めるに当たり、上條氏は、この活動を平均的な技術者の行動変容を促すものにしようと考えた。「 “組織には、2対6対2の法則がある。変革意識の高い20%を対象にした施策を打てば、目に見える成果はすぐ出るが、それだと他の層は腰が引けてしまい、組織風土は変わらない。組織風土を変えるには、中間の60%の層の行動を変える必要がある」と判断したからだ(図表1)。ターゲットを決めると、次は、既存の制度の課題の洗い出しだ。「テーマも自由に設定でき、成果も問われない。自由に技術や勉強ができる機会なのに、手が挙がらないのは、取り組みたいテーマがないからなのか?」疑問に思った上條氏と部門推進委員は、テーマについて、本部全体でアンケートを実施。その結果、6割の人は何らかのテーマやアイデアを考えていることがわかった。つまり、“やりたい”という思いがあってもやっていないという状況だったのだ。そこで上條氏と部門推進委員は、その阻害要因についても調査したところ、3つの要因があることがわかった(図表2)。まず1つは、「上司や周囲の目が気になる」ということだった。他の人が仕事をする中、自分だけ好きな活動をするのは心苦しいというわけだ。2つめは、「工数・時間がない」ということだが、一方で“やりたいことのために時間をつくる”意欲の欠如も考えられる。3つめは、「研究したいテーマはあるが、リーダーにはなりたくない」という点。中間層は業務にはまじめに取り組むが、リーダーシップをとることは苦手な人もいるのかもしれない。こうした課題を解決するための次のような施策を決めた。まず1つは、上司を巻き込むこと。コントローラ開発本部では、部署を挙げてPlism活動を推進することを宣言しているが、それでも、「本業が忙しいのに、個人的な実験や研究を認めるのはいかがなものか?」と、活動に批判的な管理職もいる。そうした上司のもとでは、いくら意欲があってもなかなか「Plism活動に参加したい」とはいい出せない。

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