J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年04月号

CASE.2 カゴメ 働き方を選択できる シニアの力を組織の成長に変える 3つの働き方

国内の上場食品会社としては
いち早く定年退職者の再雇用制度を導入したカゴメ。
同社はこのほど、2001年の制度導入以来2度目となる大きな制度改革を行い、
2012年度から新制度をスタートさせた。
同社はいかにして再雇用者を戦力化しているのか。
これまでの再雇用制度の変遷と、新制度の内容について話を聞いた。

有沢正人 氏 経営企画本部 人事総務部長 執行役員
カゴメ
1899年創業。現在は、主力のトマトジュース、野菜ジュースを中心に、食品、ギフト、業務用、生鮮野菜などを製造・販売。資本金199 億円、従業員数:連結2101人(2012年3月31日現在)。
[取材・文]=井戸沼 尚也 [写真]=井戸沼 尚也、カゴメ提供

シニアを活かすトップの強い思い

2001年、上場している食品企業としては初めて60歳以降63歳までの再雇用延長制度を導入したカゴメ。その後、2006年には再雇用の上限を65歳に引き上げ、再雇用者の勤務形態をパートタイムから一般社員と同様のフルタイムへと改めた。同社が早くから高年齢者雇用に積極的に取り組んできた背景には、同社内で終身雇用の考え方が定着していたことに加えて、年金制度を巡るマクロ環境の変化がある。

2000年の年金制度改正で、老齢厚生年金の報酬比例部分を2025 年までに段階的に60歳から65歳に引き上げることが決定された。こうした中で、60歳以降の雇用確保と、ベテラン社員の知識や技能の伝承という両面から、高年齢者雇用の制度確立につながったという。同社の経営企画本部人事総務部長 執行役員 有沢正人氏は語る。

「人は60歳になったからといって急に能力が落ちるわけではありません。経験を積んだベテラン社員の知識や技能は、会社にとっての財産です。ベテラン社員の知見を若い世代に受け継いでもらいたいという会社の思いがありました」(有沢氏、以下同)しかし、ベテラン社員の技能をいかに若手に継承していくかは、どの企業も等しく抱えている問題だ。なぜ、カゴメだけがいち早く再雇用制度の確立に踏み込めたのか。「理由の1つには、企業規模が約1500名で社員の年齢構成の変化の予測が立てやすく、ちょうどいい大きさだったということがあります。一人ひとりに目が行き届きやすく、制度を改定することで人件費がどのくらい高騰するのかという見込みが立てやすかった。そしてそれ以上に重要な理由は、『ベテランの能力を活かして組織の活力としたい』というトップの強い思いがあったということ。ですから、制度のスキームは人事が行いましたが、推進はトップダウンで進みました」

高齢者の雇用確保だけを目的とした守りの制度ではなく、組織の成長のためにベテラン社員の力を活かすという攻めの制度なのだ。2012年度からは、フルタイム、パートタイム、特殊技能を有する人のマーケットバリューに応じて個別に処遇を設定する新制度がスタート。“市場価値型”の3つの働き方を設定した。他社に先駆けてベテラン社員の力を会社の発展に活かす同社。社員のニーズに応えながら再雇用制度について試行錯誤を繰り返してきたという。以降でその変遷を見ていく(図表1)。

●2001年:パートタイムで再雇用開始

2001年に導入された再雇用制度では、60歳の定年後の再雇用を希望する者を対象に、会社が認めた者が再雇用となった(基本的に希望者は全員採用となる)。当時の制度骨子は次の通り。

・ 年金がカットされないように労働時間は一般社員の4分の3以下のパートタイム勤務で、残業はなし(月換算で月収約14万円)

・ 年金と合わせて年収330万円

・ 1年契約で最長63歳まで

ところが実際、この制度を運用してみたところ、当初の狙い通りにはならなかった。というのも、同社の工場では24時間交代制で生産が続けられているが、パートタイム勤務で残業もなしという再雇用者に対して、現場からは率直に「働いてもらいにくい」という声が上がった。また、再雇用者自身からも「フルタイムという選択肢があってもいいのではないか」という声が上がったという。

限られた勤務時間のパートタイムでは、ベテランの技能を若い社員たちへと伝承するのに無理がある。そうした中、年金制度もさらに変遷を遂げ、2005年には60歳代前半の在職老齢年金の一律2割支給停止が廃止された。こうした状況に合わせて、2006年、制度が大きく見直された。

●2006年:ベテラン社員の戦力強化

2001年からの制度での反省点を踏まえ、2006年の制度改定は、ベテラン社員の戦力強化、目標成果への対応、年金とのバランスの見直しに狙いを定めたものとなった。制度の概要は、

・ 一般社員と同様のフルタイム勤務で、残業可

・ 時給1580円(月換算で月収約25万円・ 目標管理制度の適用:成果評価を実施し、半期ごとにABCで評価。評価は賞与に反映する

・ 1年契約の2回更新を基本とし、評価が高かった者は、さらに半年契約で65歳までの2年間の延長が可能というもの。

前回の制度では一律だった賃金が、この制度改革で成果評価によって変動することになった。A、B、Cの3段階評価はそれぞれ、A=20万円、B=10万円、C=3万円と明確に賞与に反映。これにより、再雇用者のモチベーションが向上。働きがいを感じるという声が多く聞かれた。また、フルタイムになることで、現場からの働いてもらいにくいという声も消えた。再雇用者から知識や技術を教わる立場の若手社員からも「上司とは違う立場の人がいろいろと教えてくれるのはとても助かる」と歓迎され、この制度は当初の目的を達しつつあった。

●2009年:多様な働き方の時代へ

当面は2006 年の制度で問題はなかったが、2009年頃から社内で「全員フルタイム勤務ではなく、もっと柔軟な働き方でもよいのではないか」という考えが出始めてきた。個人の価値観が変化する中、仕事と生活の両方を大切にしたい、もっとゆっくりしたペースで働きたいと考える人が出てきたのだ。また、やむにやまれぬ事情でフルタイム勤務は難しいという人も出始めた。たとえば、再雇用者の年代になると、両親の介護の問題に直面することがある。そうした時に、フルタイムでは働けないが、カゴメの一員として仕事は続けたい──というケースだ。

「社員の考え方が多様化し、会社としても個々の価値観に基づく自由意思で仕事をしてもらったほうがよいだろうと考えました」また、同時期に優秀な研究員が定年に差しかかり、その人たちを処遇する新たな枠組みが必要だったことも、制度の見直しの一因だ。「『カゴメの宝』というべき人材に対するリテンションも必要でした。他社もほしがるような、優秀で市場価値の高い人材は、もっと高く評価してもいいと考えたのです」

そこで同社は、働き方に柔軟性を持たせ、市場価値が高い人材もしっかりと評価できる新しい仕組みを構築。新制度の狙いは、「公平性の見直し」、「柔軟性の向上」、「年金とのバランスの見直し」だ。この新制度は2012年9月から実施された。

●2012年:3つの働き方を用意

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