J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年04月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 トッパンフォームズ 代表取締役社長 櫻井 醜 年齢、立場に関係なく強みを伸ばし合い協働する 「品格のある組織」への挑戦

2015年に創立50周年を迎えるトッパンフォームズ。
新時代に向け、創造的革新を遂げるためには、
「品格のある組織」へと脱皮することが必要だと櫻井醜社長はいう。
櫻井社長のめざす「品格のある組織」と、その実現に向けた取り組みとは。

トッパンフォームズ 代表取締役社長 櫻井 醜 (Shu Sakurai)氏
生年月日 1947年9月10日
出身校 学習院大学 法学部

トッパンフォームズ
1965年創立。ビジネスフォームやデータ・プリント・サービスなど、情報伝達を最適化するソリューションを提供。
資本金:117億5,000万円、売上高:単体1,964億円・連結2,270 億円、従業員数 単体1,830名・連結7,715 名(全て2012年3月期)

インタビュアー/赤堀たか子
Interview by Takako Akahori
写真/太田 亨
Photo by Toru Ota

いけないことはいけないとはっきり指摘し合える組織

――貴社は2015年6月に創立50周年を迎えられますが、その50周年目に当たる2016年3月期に、売上高2500億円、営業利益150億円の目標を掲げ、新たな成長の基礎固めに取り組んでおられます。その取り組みについてお聞かせください。

櫻井

私が日頃社内で伝えているのは、「強い組織をつくろう」ということです。強い組織というのは、「コミュニケーションがとれている」「景気低迷下でも着実に業績を伸ばしている」など、条件はさまざまですが、そうした条件を総合的に満たした組織が「強い組織」だと考えています。

強い組織になるためには、基本がしっかりできることが肝心です。たとえば、工場での基本はというと、「“5S”といわれる整理、整頓、清掃、清潔、躾ができていること」「機械の保守と機能の維持がなされていること」などが挙げられます。同様に、企業経営においても、コンプライアンスの徹底を推進することが重要です。

もうひとつ、強い組織をつくるうえで大切なのは、「“やってはいけないことをやってはいけない”といえること」です。これは極めて当たり前のことのように思われるのですが、組織の中にいると、当たり前のことがなかなかできないことがある。ですから私は、「従業員一人ひとりが、物事を真摯に捉えて、役職や性別年齢に関係なく自分の意見を堂々と述べ、侃かんかんがくがく侃諤諤の議論をし、お互いに認め合いながら、みんなが切磋琢磨する」、そんな分別のある大人の組織」―― 別の表現をすれば「品格ある組織」をつくりたいと思っているわけです。

――なぜ、品格ある組織にすることが大切なのでしょうか。

櫻井

これまで企業を評価する軸は、売り上げや利益といった業績でした。しかし、これからの少子高齢化社会においては、内需も今までのようなペースで拡大していくことはない。そうなると、これからの企業には、社会にとって本当に必要な存在であるかが問われるようになると思います。優れた商品やサービスを提供することはもちろんですが、それ以外にも、男女の区別なく皆が働きやすいといったことや、環境にも優しい会社であるといった企業の“品格”が評価の軸になり、企業の存続にも影響力を及ぼす要素になると考えています。

もうひとつ、価値創造型企業へと変革するうえでも、品格ある組織になることは重要です。当社が展開している事業の領域は、帳票類などのビジネスフォームの印刷から、お客様からデータをお預かりして工場内でプリントするデータ・プリント・サービス、IC関連、Web関連、オフィスサプライまで幅広く、印刷の中でも特殊な領域です。しかも、これらの事業を国内だけでなく、海外でも展開しています。こうした事業の各分野で新たな価値を創造していくためには、従業員一人ひとりが独創的な発想をすることが重要になります。

そのためには、従来のような上意下達ではなく、下の人もどんどん意見を出せて、上の人もそれを認めるという自由闊達な意見交換ができる風土が必要です。そして、こうした風土を育むには、それぞれの従業員が自分の中に軸を持ち、それに基づいて考え、判断し、結果を堂々と述べられる“品格ある大人”になることが求められるのです。

万能プレイヤーよりごつごつした人材

――そうした風土を実現するには、何が必要だとお考えですか。

櫻井

従来の考え方に縛られないことが大切でしょう。これまで当然だと思っていたことをもう一度、自分たちがめざす方針に照らし合わせて見直してみることです。

たとえば、職場環境だって、今までのようなオフィスにこだわる必要はありません。もはや、四角い箱の中に人を入れて、働け、働けと追い立てる時代ではなくなったのです。いろいろな植物があちこちに置かれた緑溢れるオフィスを、犬や猫が自由に駆け回っていたりしてもいいわけです。大切なのは、みんなが意欲的に働くことができ、高い成果を出せるような環境をつくること。そのためには、四角い箱を取り除く、あるいは、四角い箱でも、その中をもっと違う雰囲気にする。そういったことを我々はもっと真剣に考えないといけないでしょう。

――柔軟性のある組織をつくるうえで、中間管理職に課題があるという声を一般的によく聞きます。御社ではいかがですか?

櫻井

程度の差こそあれ、誰もがみんな自分なりの考えや意見を持っているはずです。もし、中間管理職の声があまり聞こえてこないというのであれば、それは本人たちの問題というよりも、トップが、意見をいえる雰囲気をつくっていないところに問題があるのだと思います。ですからトップは、そうしたことを問題だと思っていて責任を感じており、変えたい、変える意思があるということを従業員にわかってもらわないといけないのです。

しかし、それは簡単なことではありません。当社でも「強い組織体質と品格ある風土をめざそう」というパンフレットを作って配布したり、ポスターを作って貼ったり、朝礼等で繰り返し伝えたりしていますが、それでも、「そんな話は聞いたことがない」という人もいるわけです(笑)。そのくらい組織というのは物事が伝わりにくいという前提に立って、自分の思いを粘り強く伝えていかなければなりません。

――強い組織や品格ある風土をつくるうえで、人材育成は、どうあるべきだとお考えですか。

櫻井

組織というのは、社長一人が動かしているわけではありません。社員一人ひとりが、それぞれの能力に応じて頑張っているから動くわけです。ですから、その努力を認めて評価し、強みを伸ばす。企業における教育の本質は、そこにあると思います。人間は、誰もが100%、何でもできる人になれるわけではなく、皆、何らかのマイナス要素を持っています。何かができない人でも、他のいいところが必ずあるはずで、それをいかに伸ばしていくかが肝心です。そのためには、相手のあるがままを受け入れ、そこからどうやって良いところを伸ばしていくかを考えることが大切です。何か苦手なことがあるからといって、その人を否定することに意味はないと思います。

何でも器用にこなし、万人に受け入れられる人は、一見優れているようですが、逆にいえば個性がない。そうした人よりも、万人には受け入れられないけれども“ごつごつした人”をできるだけ多く育てたいと思っています。

同時に、もうひとつ大切なのは、全体のレベルを上げることです。こうした議論の際、一定レベル以下の人を教育するのか、あるいは、一定レベル以上の人を伸ばすほうがいいのかという議論がありますが、私自身は、レベルの高い人をもっと引き上げるほうがいいのだろうと思っています。そうすれば、それにつられ他の人のレベルも上がるからです。自分の強みを知った人の強みをまずは鍛えていく。そうすれば、組織全体のレベルアップにつながり、強い組織になるはずです。

――具体的には、どのような教育が必要だと思いますか。

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