J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年10月号

連載 インストラクショナルデザイナーがゆく 第64回 紅茶を片手にココロの育成に思いを馳せる

寺田 佳子(てらだ・よしこ)氏
ジェイ・キャスト執行役員、IDコンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソーシアム理事、IT人材育成事業者協議会理事、eLP(eラーニングプロフェッショナル)研修委員会委員長、熊本大学大学院教授システム学講師、JICA─NET Instructional Design Seminar講師、ASTD(米国人材開発機構)会員。著書に『IT時代の教育プロ養成戦略』(共著、東信堂)など。http://instructionaldesign.blog97.fc2.com/

週末の楽しみのひとつが、鵠沼の紅茶専門店ディンブラでのアフタヌーン・ティー。ポットにたっぷり入ったフレッシュなスリランカの紅茶を、ミルクを入れたティーカップにゆっくり注ぎ、焼き立てのワッフルや、クローテッドクリームをふんわりのせたスコーンといっしょにいただく。

あー、今日は休みだぁ~、と肩の力が抜け、頬が緩む瞬間だ。

お店の名前ディンブラは、スリランカ西部の山岳地帯が原産の茶葉にちなんだもの。鮮やかなオレンジ色と、バラの花のような華やかな香りが特徴だ。そのお茶の優しくさわやかな香りはもちろん、ゆったりと流れる時間の豊かさもまた、このお店の魅力。

それにしても若いスタッフの、自然体で家庭的、しかしかなりプロフェッショナルなサービスは、どのように育まれたのだろう?「僕が伝えているのは、日曜日の自宅の居間のように、というコンセプトだけ」というのは、オーナーの紅茶研究家、磯淵猛さん。30 年にわたるディンブラの経営の他、紅茶の輸入販売、ホテル・レストランへの紅茶の技術指導、大手飲料メーカのスペシャル・アドバイザー、一般向けの紅茶セミナー、紅茶の本の執筆、テレビ・ラジオへの出演、さらには営業戦略や商品開発のコンサルティングと、多方面で情報発信しているオーナーだが、スタッフに伝えるのは、「自宅の居間のように……」だけ?「型にはまったサービスマニュアルを押しつけると、自分がすべきことを考えるチカラや楽しみを奪ってしまいますからねぇ」

だから、ヒヤヒヤしても、自分でするほうが速いと思っても、手を出さない。その代わり、きちんと目を配っていることがある。お客様を迎える時のスタッフの目の輝き、ティーポットカバーをかぶせる優しい仕草、手書きのメニューやパンフレットに込められた可愛い工夫……。それらが上手くお客さまに伝わり、お客さまにほめられた時、スタッフが本当に嬉しそうな顔をするのを見て、磯淵さんは自分の信念が間違っていないことを確信する。『お客様がスタッフを育てる』のだ!

実はこれ、磯淵さんが親しくしている紅茶の老舗で学んだことである。話は10 年前に遡る……。

創業300年の紅茶名店の哲学

英国王室御用達の紅茶の名店トワイニングの工場を訪問した時。当時の9代目社長が胸を張って語る、創業300 年の老舗の誇りと、世界約100 か国に展開するビジネスの大きさに圧倒されて、磯淵さんは思わずつぶやいた。「ディンブラはまだ20 年。300 年なんて夢のまた夢です」

すると9代目はこう応えた。「 いやいや、うちにも20年目があったのですよ」

10 年、20 年の積み重ねの中で、決してぶれない伝統と、時代を先取りする革新性という、一見相反する2つの理念を守り抜くことで、今日の地位を築いたという。

で、300 年の伝統とは?『 トワイニングが紅茶を売ったのではない、お客様にうちの紅茶を飲んでいただいたのである』といい切る企業の姿勢。

ほぉ! で、革新性とは?『紅茶といえばダージリンが最高の時代に、邪道といわれたフレーバーティの開発にいち早く取り組んだ』チャレンジ精神。「うちはこの銘柄の紅茶しか売らないなどと、偉そうにふんぞり返るのが老舗ではない。トワイニングは、その時代のお客様が求めているもの、エンジョイできるものをつくって、買っていただく。それが茶商の本分である」ときっぱりいう9代目から、紅茶だけではなくビジネスの哲学も学んだという。

ココロのムダを怖がらないで!

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