J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年06月号

CASE.2 日立ソリューションズ 2年間にわたる新人教育で自律性のある人材を育てる

日立グループにおける情報・通信システム事業の中核企業、日立ソリューションズ。ITビジネスで直面する新たな課題に対して、自ら考え、解決していくことが求められる中、同社では入社後2年間、OJTリーダが中心となり、職場ぐるみで新人を育てる仕組みを構築し、自ら考え行動できる自律型人材の育成に力を注いでいる。

松田 欣浩 氏 人事総務統括本部 人財開発部 部長
立川 京市 氏 人事総務統括本部 人財開発部 教育第2グループ 部長代理

日立ソリューションズ
情報システムのコンサルティングから設計、構築、保守・運用まで、幅広いソリューションを提供。2010年10月、日立ソフトウェアエンジニアリングと日立システムアンドサービスの合併により誕生した。
資本金:387億5800万円、売上高:3344億7400万円(2013年3月期、連結)、従業員数:1万5561名(2013年9月30日現在、連結)

[取材・文]=増田 忠英 [写真]=編集部

●育てる文化新人は2年間、「研修員」

日立ソリューションズでは、新入社員は入社後2年間、「研修員」として位置づけられている。新人研修を終えて職場に配属されると、先輩社員が2年間、研修員をマンツーマンで指導する「指導員」制度が長年にわたって定着してきた。2年間の締めくくりには、研修員から総合職になるための必須条件となる「総合職研修員論文制度」がある。これは、研修員が2年間のOJTの成果を論文にまとめて発表する制度で、2年間にわたる研修の総仕上げとして位置づけられている。発表会は200人収容できる講堂で、本部単位で行われ、部署総出で観に行く。発表前には部署内で厳しいチェックが何度も行われ、中にはそのための合宿を行う部署もあるほどだ。「私が入社した頃から行われている、日立の伝統的な育成施策です」と話すのは、人事総務統括本部人財開発部部長の松田欣浩氏。「職場に新人が入ってきたら、みんなで育てていくという文化が根づいていると思います」

こうした伝統を持つ同社が、近年重視しているのが、内的動機づけを重視した社員の成長支援だ。その背景について松田氏は、次のように語る。「昨今のITビジネスは、顧客の課題解決や新サービスの提供、グローバル対応などが求められ、答えを自分で考えて解決していくことが必要になっています。そのためには、言われたことをやるのではなく、内的動機づけを意識しながら、社員一人ひとりが自律性を高めていくことが重要です」そのため、先に挙げた研修員に対するOJTも、伝統にのっとりながらも、最近は少し形を変えて実施されている。具体的な内容を見ていこう。

●制度変更主体的に学ぶ工夫

新入社員は入社後3カ月間、新入社員教育を受ける。IT未経験者も多いため、この間は基本的なITスキル教育が中心となる。しかし、従来のように、ただ講師が教える形式では、新人は学生時代の延長で受け身の姿勢で臨みがちだ。そこで同社では、自ら学び、考え、行動できる自律型社員としての意識を持ってもらうため、次のような工夫を取り入れている。まず、社内の組織体制に合わせてクラスを「グループ」、クラス担任を「グループマネージャ」、1クラスに5〜6ある班を「ユニット」に見立て、ユニットごとに「グループ運営」「業務伝達」「メンバーの能力向上」などの役割を決め、グループ(クラス)運営を新人たちに委ねるようにした。「基本的にこちらからの一方的な指示や指導はせず、それぞれの役割の中で自分たちが何をすべきかを考えさせるようにしました。また、グループマネージャは指導役ではなく、必要に応じて相談を受ける立場に改めました」(松田氏)

研修自体も、疑似的な業務課題を与える形にし、まず自分たちで試行錯誤しながらアウトプットを出し、後から講師に質問して理解するような形式に変え、自分たちで主体的に学ぶ側面を強化した。さらに、研修最終日には、新人が企画した研修を実施する機会を設け、各グループの企画ユニットがグループ内で出たアイデアをまとめ、グループ独自の企画研修を実施した。こうした研修内容の見直しは、新人を職場に配属して半年後に、育成責任者である職場の課長に対して行うアンケート調査の結果に基づいている。「アンケートでは新人の能力や、新人教育に望むことなどを聞いているのですが、ここ数年の傾向として、ITスキルの習得以上に、自ら学ぶ力を身につけてほしいという要望がありました。それを受けて、研修に反映するようにしています」(松田氏)アンケートにおいて、新人の能力については、さまざまな能力ごとに「期待以上」「期待通り」「期待以下」の3つから選ぶようになっている。新入社員研修を見直してからは、「自ら積極的に取り組む」という項目について「期待以上」と答える割合が増えつつあり、研修の効果は徐々に表れてきているようだ。

●成長支援「OJTリーダ」という呼称の意図

3カ月間の新入社員教育が終わると、職場に配属され、「研修員OJT制度」がスタートする。新人は研修員として、配属後から2年目終了までの間、職場より任命された「OJTリーダ」のもと、立案された成長計画に基づき計画的に業務を行う。入社1年目は日常業務の処理力と技術スキルの向上、入社2年目は課題解決能力と自律意識の向上が目的となる。OJTリーダは、研修員をマンツーマンで指導する「指導員」の名称を、2010年の合併を機に改めたもの。その理由について、同じく人財開発部教育第2グループ部長代理の立川京市氏は次のように語る。「指導員の時代は、研修員のOJTを指導員1人に任せきりにしてしまう傾向がありました。この名称変更には、それまでの研修員を指導するという立場から、研修員の成長を支援するとともに、職場のさまざまな先輩がかかわるOJTのリーダとして、職場全体に支援を働きかける立場に変えていきたい、という思いがありました」(図1)OJTリーダは、3年目以上の先輩社員の中から、研修員との相性も考慮して選ばれる。なお、この仕組みは、研修員の指導を通じてOJTリーダ自身が成長するための施策でもある。

●期待役割OJTリーダの仕事

OJTを計画的、意図的、継続的に行うためのツールとして、「OJT実施計画書」と「OJT実施状況報告書」がある。OJTリーダは、まず1年間の育成計画であるOJT実施計画書を研修員とともに作成し、育成責任者である課長の決裁を受けて人財開発部に提出する。この育成計画をもとにOJTを実施し、その内容・成果を半年ごとに確認。1年目が終わるとOJT実施状況報告書を作成、課長のフィードバックを受けて人財開発部に提出。その内容を踏まえ、2年目の育成計画に改善点を反映させていく。OJTリーダはこのPDCAサイクルを1年ごとに回しながら新人教育を行う。

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