J.H.倶楽部

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Learning Design 2021年01月刊

成長の仕掛け人 第15回 学びのない人生はない タフネスとオープンネスの “いい加減”なマネジメント

無添加化粧品の草分け的存在であり、健康食品分野でも多くのファンをもつファンケル。
ヘルシーで親しみやすいブランドの背景には、企業内大学での徹底した教育体系が存在する。
その一翼を担うのが、若き女性リーダーの小野琴理氏だ。

Profile
小野 琴理 (おの ことり)氏
ファンケル ファンケル大学 教育企画部 教育企画運営グループ 課長
2007年にファンケル入社。バックオフィスグループ、人事部人事企画グループを経て、2013年より現職。
企業内大学の「ファンケル大学」にて、本社社員向け研修の企画運営に携わる。
GCS認定プロフェッショナルコーチ、国家資格キャリアコンサルタント、ITパスポートなど多数の資格コレクターでもある。

Company Profile
株式会社ファンケル
1980年創業。肌と環境にやさしい無添加化粧品事業を立ち上げ、通信販売主体による生活者に寄り添うビジネスモデルを確立。90年代には健康食品分野にも進出する。
2019年よりキリンホールディングスと資本業務提携を結び、双方の強みを生かし相乗効果を図る。
「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう」が創業理念。
資本金:107億9,500万円
従業員数:1,055名(2020年3月31日現在契約社員・パートなどは除く)
売上高:1,268億円(2020年3月期)

[取材・文]=田邉泰子  [写真]=中山博敬

会社を選んでいるのは自分だ

一通りインタビューを終え、扉ページの全身ショットを撮影したときである。背筋をすっと伸ばし、体の真ん中に芯が通った姿勢が美しい。白のスーツ姿は、清潔感がいっそう際立った。思わず「モデルさんみたいですね」と声をかけると、「接客業でもあるので、立ち方にも決まりがあるんです。新入社員研修では必ず全員が練習します」と教えてくれた。

化粧品・健康食品大手ファンケルの小野琴理氏は、同社の教育機関「ファンケル大学」で、教育企画運営グループの課長を務める。新卒で入社した6年目の終盤、2013年のファンケル大学立ち上げのタイミングで今のポジションに就いた。20代での女性管理職の登用は、同社でもほとんど前例がない。

「会社も思いきったことをしましたよね!」(小野氏、以下同)

あっけらかんと笑う。豪快さと胆力の強さが垣間見え、彼女に託したくなるのがわかる気がした。

子どものころから人に教えるのが大好きで、教師に憧れていた。しかし教員家系がゆえに「教師の大変さをわかっていない」と両親の猛反対にあい、大学では経営学を専攻する。所属していたゼミの研究テーマもあって、就職活動ではエレクトロニクス業界を中心に志望。だがどんな企業であっても「最初に内定を出してくれた会社に就職する」と決めていた。

「エントリーの時点で学生が会社を選んでいることに、あるとき気がついたんです。だから企業が自分を選んでくれた時点で、相思相愛ではないかと。ファンケルは企画から製造、販売まで一貫して自社で行っている垂直統合の企業組織が、エレクトロニクス企業とも似ていました。もともと肌が弱く、無添加化粧品が身近な存在だったことからエントリーしたところ、ご縁に恵まれた形です」

入社して最初の配属は、お客様窓口に来る問い合わせのうち、オペレーターの後方支援部隊であるクレーム専門部署だった。

「電話口で頭を下げ、お詫びし続ける毎日でしたね」と振り返る小野氏に、悲壮感は感じられない。大変だったけれども、辞めたいと思ったことは一度もなかったという。

「むしろ、貴重な経験をさせてもらっていると思っていました。どういう感情を抱えているのか、なぜ電話してまで伝えたいと思ったのか、電話口の向こうにいるお客様の気持ちや思いに寄り添う経験は、研修の企画を立てるときにも役立っています。社員が何を思っていて、どのようなことを期待しているのか。プログラムの中身も働きかけも、想像力ひとつで変わってくるはずですから」

3年目には、オペレーターのマネジメントも任された。自分とは倍近く年齢が離れていて、経歴もベテランの域に達している大先輩に指導させてもらった経験は、今となってはいい思い出だ。

刺激を受けた経営の直接指導

入社3年目。ジョブローテーションで同期が次々と商品企画や営業企画に配属されるなか、小野氏は人事に異動となる。採用面接での小野氏の様子を見て、当時の人事部長が「いつか人事に」と決めていたというのは、後に聞いた話だ。

異動直後、退職する先輩社員の業務を確実に引き継ぐことが目下の課題であった。当時は同社のブランド求心力が低下し、顧客離れが起きている真っ只中。その渦中での、新人事戦略の策定にともなう、人事制度の見直しプロジェクトだった。

「たとえば化粧品のデザインはグローバルを意識しすぎた結果、洗練さと引き換えにわかりにくいものとなり、トラブルの引き金になりました。ダイレクトマーケティングで成長してきた当社ですが、『顧客に寄り添う姿勢を忘れてしまったのではないか』とお客様から辛辣なご意見をたくさんいただいていた時期でした」

売り上げが低下し、人件費も圧縮を余儀なくされる状況で、いかに生産性の高い組織体へと変革できるか。すべての部門に適応する、グループ共通の人事制度をつくり上げることがミッションだった。小野氏には、経営層が行う人事委員会に合わせ、たたき台となる提案資料をつくる仕事が課された。上司がフォローに入るとはいえ、ほぼ1人での作業となる。若手で経験の浅い小野氏にとっては、再びの試練だった。

「ここでも叱られてばかりでしたね。現在の社長の島田(和幸氏)が全体の旗振り役を担っていて、隔週で行われる会議の度に『仕事になっていない』と資料のつくり直しを命じられました。今思えば、あのときの資料はひどいものでした(笑)」

そうなるのも無理はない。いちプレーヤーとしての経験しかない小野氏に見えている景色は、経営者が眺めるものとあまりにも違い過ぎた。

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