J.H.倶楽部

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Learning Design 2021年01月刊

特集│HR TREND KEYWORD 2021│組織│ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング) 自己裁量や決定権を尊重する ワークスタイル戦略

コロナ禍によって働く場所や時間への制約が弱まっている。
企業は、オフィスの価値をあらためて考える必要があるのではないか。
そこでヒントとなるのが、オランダのVeldhoen + Company が提唱する「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」だ。
同社アジア地区統括マネジャーのヨランダ・ミーハン氏に話を聞いた。

ヨランダ・ミーハン氏 Veldhoen + Company アジア地区統括マネジャー

Veldhoen + Company(ヴェルデホーエン)
1990年にErik Veldhoenによりオランダで創業。
企業のABW導入を支援し続け、これまで世界中で500以上のプロジェクトを手がけるグローバル企業。
現在はスウェーデン、イギリス、アメリカ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドを含む7カ国に拠点をもつ。
日本では、2019年よりイトーキとの業務提携を行っている。
資本金:非公開
従業員数:約80名

[取材・文]=田中 健一朗 [通訳]=福島由美 [写真]=Veldhoen + Company・イトーキ提供

「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」とは、従来の階層に基づいてつくられた働く場所ではなく、個人やチームの活動に応じて自律的に働く場所や時間を選択できる働き方だ。

1990年代初頭、オランダのワークスタイル変革コンサルティング企業Veldhoen + Company(以下、ヴェルデホーエン社)によって提唱され、同社はABWの“創始者”となった。

オンラインコミュニケーションツールはもちろん、スマートフォンの登場以前から、既存のオフィスの在り方や役割の変化を見据え、時間や場所に拘束されない自由な働き方を提示していることからも、ABWが極めて先進的な概念であることがうかがえる。

働き方の方法論ではなく「戦略」としてのABW

ABWは、従業員各人が「どこで」、「誰と」、「どのように」、「どんな」仕事を行うかを自律的に決めることが前提となっている。

「会社と従業員との間の『信頼』関係がベースとなり成り立つ」と話すのはヴェルデホーエン社でアジア地区統括マネジャーを務めるヨランダ・ミーハン氏だ。

「チームやメンバーをエンパワーメント(権限を委譲)し、彼ら自身がオーナーシップをもって働くことを促す、これがABWの本質です」(ミーハン氏、以下同)

そして、具体的にABWを成功に導く「3つの要因」があるという。

「1つめは成し遂げるべき仕事と活動内容に対する『理解』。次に仕事の助けとなる、適切な『ツール』や『テクノロジー』の存在。最後はオフィスの内外を問わず、自身の活動をサポートしてくれる適切な『環境』と『空間』です。この原則に基づいてABWをデザインしていくのです」

つまり、ABWとは表層的な働き方の方法論ではなく、従業員一人ひとりの自律性と働く意欲を引き出すワークスタイル戦略なのだ。

必要な環境は活動に応じて異なる

ヴェルデホーエン社では、仕事における活動を「10の活動(10 Activities)」に分類し、「個人の活動」、「少数での活動」、「ミーティング」、「その他」に大別している(図1)。

「働く場所は活動に基づいていなければなりません。たとえば、家を例に挙げると、大家族であれば大きな家を選びますし、人数が少なければ小さな家を選びます。卵をゆでるだけなら小さなキッチンで十分ですが、もしあなたがミシュランのフレンチシェフであれば、必要な広さも道具も違うでしょう。仕事における活動も同様で、成し遂げたいことによって必要な環境は変わってきます」

一方で、「固定デスクに拘束されない」という部分のみが独り歩きした結果、日本においてはABWとフリーアドレスが、混同されることも少なくない。

「やはり『活動に基づく』のかどうかが両者の違いです。確かに、働く場所を選ぶという意味では、ABWとフリーアドレスは近しい部分があるかもしれません。しかし、フリーアドレスの場合、オフィスの中で場所の自由はあっても、あくまで机から机へといったように、必ずしも活動と紐づいている場所というわけではありません」

「個人の高い集中を必要とする活動」をするのであれば静かな場所に行き、「創造的な活動」であれば、人と交流できる場所に行くといったように、その活動にふさわしい場所が用意されており、自由に選択もできるというのがABWなのだ。

エンゲージメントを高める「チョイス」と「コントロール」

また、ABWはエンゲージメント向上など、人材や組織開発の面でもメリットがあるという。

「COVID-19の影響でロックダウンとなった際、多くの人が在宅勤務を余儀なくされました。当然、非常時のため、働く場所を『選択する自由』はありません。ロックダウン解除後、在宅勤務を継続したいか社員に聞いてみると、『いつもでなければ、在宅で仕事をしたい』という返答がありました。

『家だけ』、『会社だけ』といったように限定されるのではなく、チョイス(選択肢)があると、人は喜び、楽しみなどのポジティブな感情をもつことができます」

同様に、仕事に関連した物事をどれだけ自分の裁量でコントロールできるかによっても、人はポジティブになるという。

「アメリカの調査会社であるギャラップ社をはじめ、いくつかの調査機関は、自己裁量や自己決定権が増していくことと、社員のエンゲージメントの高まりとの間には相関関係があるという調査結果を出しています※。エンゲージメントが高まり、従業員が幸福感をもって働くことができるようになる、これもABWの大きなメリットです。

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