J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年09月刊

私のリーダー論 失敗をきっかけに学んだことが いつでも前向きな自分をつくった

2020年11月に創業110年を迎える菓子メーカー、不二家。
老舗ではあるが、平均年齢34.9歳という若い力がみなぎる企業だ。
近年は、熊本や北海道などの日本各地や、食品メーカーとのコラボ商品を次々と打ち出し、柔軟性を見せる。
そんな同社の今後の育成の方向性や、河村宣行社長の一皮むけた経験などを聞いた。

河村 宣行(かわむら のぶゆき)氏
不二家 代表取締役社長

生年月日 1954年11月29日
出身校 東京経済大学経済学部
主な経歴
1977年 不二家 入社
2002年 菓子事業本部 広域営業部長
2003年 執行役員菓子事業本部 営業部長
2006年 執行役員人事総務部長
2007年 執行役員広報室長、CSR推進部長、社長室長 兼 総務部長
2009年 取締役社長室長 兼 総務人事本部長
2015年 常務取締役菓子事業本部長 兼菓子事業本部マーケティング本部長 兼 食品事業担当
2018年 専務取締役菓子事業本部長 兼菓子事業本部マーケティング本部長 兼 食品事業担当
2019年 代表取締役社長 就任
現在に至る

企業プロフィール
株式会社不二家
1910年11月創業。明治時代からの創業事業であるケーキなどの洋菓子事業、「不二家レストラン」を中心とした外食事業、スーパー等で発売される「ミルキー」を代表とした菓子事業等を展開。
資本金: 182億8,014万円
連結売上高: 1,033億円(2019年12月期)
連結従業員数: 2,118名(2020年3月現在)

取材・文/村上 敬 写真/中山博敬

あきらめムードを変える秘訣

─社長就任時に、「不二家は洋菓子事業と菓子事業の2つがあることが強みで、シナジーを活かす」とお話ししていました。

河村(宣行氏、以下敬称略)

近年取り組んでいるのは、スーパー内への洋菓子店の出店です。洋菓子店はFCが中心ですが、オーナーさんの高齢化が進み、店舗数は減少しています。それを補うため、スーパーのサービスカウンター横にショーケースを置かせてもらうのです。スーパー内のショーケースなら家賃や人件費がかからず、ロスも少ない。私が社長になった時点でスーパー内の店舗は約250店舗でしたが、これを500店舗まで増やす計画です。

出す店舗は洋菓子店ですが、もともとスーパーと関係が深いのは菓子事業の方です。菓子事業の営業から上げてもらった情報も活用して出店を進め、本年6月には、ついにFC店の減少をスーパー内店舗の出店が上回った。これはシナジー効果でしょう。

それ以外にも積極的な人事交流をしています。以前はまるで別会社のようで、人材が固定化されていました。しかし、それでは様々なしがらみが生まれて新しいことに挑戦しにくい。流動化させて別部門の人を入れた方が思い切ったことができるはずです。

─では、今求めているのは、どのような人材でしょうか。

河村

「物事に前向きに取り組める人」ですね。我が社の洋菓子事業は10数年、マイナスが続いています。頑張っても成果が出ないと、人間はどうしても下を向いてしまう。それは仕方がないことです。私はたまたま菓子事業にいたので、悪いときもいいときも経験させてもらいました。おかげで壁にぶつかっても「なんとかなる」と楽観的に考えられますが、もし洋菓子事業だけのキャリアだったら、下を向きがちだったと思います。

そうしたあきらめムードを変えるには、明るく前向きな人に来てもらうことが一番だと思います。それがきっかけになって成果が出れば、「あの人の言うことを信じよう」という機運が出てきて、下を向いていた人たちも前向きに考えられるようになります。会社としては、そういう人を部門や部署のリーダーにして、孤立させないように支援していくことが大事だと考えています。

逆に、評論家的に物事を見る人はダメですね。たとえば新商品を出すとき、「市場がこういう状況だから売れない」「コロナだから時期が良くない」などと売れない理由から考える人は、周りを暗くしてしまう。条件が悪くても売る必要があるのだから、売れる理由を見つけて突破する情熱的な人が、会社には必要です。

─スキルや能力面では、どのような人材が必要でしょうか。

河村

我が社の洋菓子事業には、簿記の専門学校を出た社員が何人かいます。その社員たちが好成績を上げていると聞いたので、店舗を見に行ったら「今月はこうで、今のところこういう計算になります」と数字の話からしてくれました。これは経営者から見ると心強いですよね。

不二家で働いてもらうには、もちろんお菓子が好きであることが大前提です。しかし、お菓子が好きな気持ちだけでは、いずれ通用しなくなります。たとえば工場も、いくら品質のいいものをつくっても、原価意識がないと赤字になって継続できなくなる。必ずしも資格が要るとは思いませんが、科学的な見方ができて、数字で語れるスキルはあった方がいいでしょう。

若手の力を活かすには中堅の教育が必要

─人材育成という点で、特に注力されている層は。

河村

まず新入社員・若手教育です。入社・配属後の3年間は大事な育成期間と位置づけ、充実したフォローアップ研修を実施しています。以前はこの期間は5年だったのですが、2018年から3年にしました。新人研修後配属で散らばった社員が毎年集まりますから、同期の絆が深まって、新入社員の定着率が良くなるといった効果があります。しかし、新入社員教育を手厚く行う一方、その後の教育が薄いという課題がありました。

たとえば職制向けの教育は数年前までほとんどありませんでしたし、管理職に対しては、なったらそれで終わりでした。これはさすがにバランスが悪い。職制になるくらいまで働き続けている社員は、おそらく会社のことを好きになってくれた社員でしょう。入ったばかりの社員に教育を集中させるのではなく、定着してくれた社員にもしっかりと教育を行い、育てていきたいですね。

─そうした職制や管理職に対し、現在はどのような教育を行っていますか。

河村

フォローアップ研修後は昇格者対象の「ランクアップ研修」や「係長研修」「新任管理職研修」を実施しています。これまでの自分を振り返りながらキャリアデザインを構築し、自己啓発を促しています。これらは人事部主導で、外部から講師の方を招いて行う研修の他、社内でも実践的な教育をしています。たとえば工場の班長だと、5S教育でチームをつくり、リーダーとして実践して勉強してもらいます。

「管理職マネジメント研修」は、明治大学と連携して実施しています。大学の先生だけでなく、企業の経営者も講師として来てくださいました。いずれも取り組みを始めたばかりで、成果が出るのはまだ先になりそうです。

結局、成果が出るかどうかは受け手の姿勢しだいだと思います。我が社は長年、社員の自己啓発に通信教育も用意していますが、前社長の櫻井(康文氏)が「受講は考課に反映させる」と打ち出したら、一気に受講率が高まりました。ただ、受け身の社員は、入門編の簡単な講座を受けてお茶を濁していたのですが(笑)。

それと同じで、職制・管理職研修も、仕方なくやるという姿勢では身につかない。本人たちが、いかに前向きに取り組むかでしょう。

─貴社は社員の平均年齢が34.9歳とのこと。伝統ある企業としては非常に若いですね。

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