J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年01月刊

連載 私らしく生きる 第10回 歌手 茂森 あゆみ 氏 歌はコミュニケーション 責任をもって、一生子どもたちの “うたのおねえさん”で在り続ける

17代目うたのおねえさんとして、6年間『おかあさんといっしょ』に出演、子どもたちに歌を届けてきた茂森あゆみさん。
昨年11月には60周年を迎えた同番組の記念コンサートで舞台に立った。現在3児の母となった茂森さんに、当時の生活や、歌に対する想いを聞いた。

茂森 あゆみ(しげもり あゆみ)氏
武蔵野音楽大学音楽高校声楽科へ進学し、3年間の寮生活を過ごす。武蔵野音楽大学在学中に、NHK『おかあさんといっしょ』17代目うたのおねえさんに就任、以後6年間務め99年『だんご3兄弟』が大ヒットを記録。
また2003年より10年間、子ども向け音楽番組『クインテット』(NHK)で声優を務める。2019年11月に『おかあさんといっしょ』60周年記念コンサートに出演した。

[取材・文]=平林謙治 [写真]=山下裕之

うたのおねえさんをもう一度!?

――昨年60周年を迎えた「おかあさんといっしょ」。11月の記念コンサートでは、茂森さんも久しぶりに「あゆみおねえさん」として、子どもたちと再会されました。

茂森 あゆみ氏(以下、敬称略)

あらためて、番組の偉大さを感じましたね。その歴史にかかわれたことは本当に名誉、一生の財産だなと。私も母になって実感したのですが、つけっぱなしにして子どもに見せながら安心して家事ができる、こんなありがたい番組はありません。本当に助かりました。

できることならもう一度、うたのおねえさんをやり直したいくらい。いまなら若いころと違う表現ができる気がするんです。でも、あの動きはもう無理かも。先日のコンサートでご一緒した現役のおねえさんとは、20歳も違うんですから(笑)。

――武蔵野音楽大学在学中にうたのおねえさんに就任されました。もともとはオペラ歌手を目指していたそうですね。

茂森

はい。幼いころから歌が好きで、いつでもどこでも歌っていたらしいのですが、母がそれを「うまいね、いい声だね」とほめてくれるので、自分は歌がうまいんだと勝手に思い込んでいました(笑)。歌手になりたいと思ったのは、小学5年生のときに、当時世界最高のソプラノ歌手といわれた、レナータ・スコットのリサイタルを観たのがきっかけです。

姉の影響もありましたね。うちは三姉妹で、みんなクラシック音楽を習っていましたから。上京して、武蔵野音大に附属高校から通ったのも、一番上の姉と同じ。何となく自分もそうするものだと思っていました。だから、大学3年でうたのおねえさんのオーディションを受けてみたらと、先生から勧められたときは、正直ピンとこなかったんです。姉と同じようにオペラの道を目指して、大学院に進もうと考えていましたから。

――番組についてはご存じだったのですか。

茂森

子どものころは観ていましたが、当時は全然。番組のキャラクターも知らなかったんですよ。一次面接で最初に「観ていない人は帰ってください」と言われたのですが、部屋を出る勇気もなくて……。「小さい子は好きですか?」と質問されたときも困りましたね。周りにいないので、「わかりません」と答えるしかありません(笑)。後でプロデューサーさんにうかがったら、そういうところが「面白かった」そうです。

オーディションが進むにつれて、「うたのおねえさん」という仕事の楽しさを知り、番組にもどんどん興味が出てきました。

“かわいらしい”歌い方に苦戦

――実際にうたのおねえさんとしてデビューするまでの間、どんな準備をされたのですか。

茂森

まず「こどものうた」の楽譜集を22冊渡されました。それを譜読みしていくのですが、正確に歌うのはもちろん、とにかく「かわいらしく歌ってください」と言われましたね。うたのおねえさんの歌い方は、それまで勉強してきた声楽の歌唱法とは、声の質から何からまるで違ったんですよ。たとえば、クラシックはナマ声でホール全体に響かせますが、テレビで求められるのはマイクに乗りやすい声。私の声は乗りにくいし、もとがソプラノなので、子どもの歌とはキーも合いません。そこは、慣れるまでにかなり苦労しましたね。

出身が熊本県なので、イントネーションの違いにも戸惑いました。間違えやすい言葉は、抑揚を音符で表して覚えたり。「にこにこぷん」でぽろり役の声優、中尾隆聖さんにも「わからなくなったら平たんに読みなさい」と教えていただいて。お稽古にもよくつき合っていただきました。

――収録は、番組の進行そのままにノーカットで行われたそうですね。

茂森

そうなんです。玄関で子どもをお迎えしたら、もうノンストップ。歌いながらスタジオまで移動して、着いたらお人形たちと挨拶したり、歌や体操の練習をしたり。「みんな、好きなところに座ってください」と声をかけて、そのまま自然な流れで収録に入っていきます。また玄関でバイバイするまで、ずっとそのテンション。生放送と同じですね(笑)。1本の収録で同じことを4回して、1日に3本撮り。体操のおにいさん(佐藤弘道さん)は、同じ体操を12回もやっていました(笑)。

1年目は学業との両立もあって、本当に大変でしたね。日曜、月曜で1週間分を収録して、火曜、水曜は大学へ行ってからレコーディングと翌週のリハーサル。木~土曜に地方収録が入ると、休みがまったくなかったんですよ。でも、うたのおねえさんには代わりがいません。それは番組開始前からずっと言われていたので、とにかく健康管理に気を使いました。朝、目覚めたら「アー」と声を出して。その声でその日の調子がわかりますから。

――嵐のようなデビューでしたね。そこから6年も続けるとは……。

茂森

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