J.H.倶楽部

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Learning Design 2019年11月刊

連載 中原淳教授のGood Teamのつくり方 第9回 大企業の若手有志がつながるONE JAPAN(後編) 「やりたいこと」の実現に必要なもの

日本を代表する大企業50社の若手・中堅の有志団体をつなぐ活動が注目されているONE JAPAN。
「共創」を目指すチームがまさかの大企業病に!?組織の未来について語り合います。

profile
ONE JAPAN 

2016年9月、大企業の若手有志団体のコミュニティーとして結成。現在は約50社の有志団体が参加する。
大企業に所属する若手社員が挑戦できる土壌をつくること、また、参加団体が協働・共創しながら日本、そして世界を良くすることを目的として、「働き方の提案・実践」「若手社員に関する調査とレポートの発信」「新規事業開発」「企業内及び企業間横断プロジェクト企画・実行」といった活動を行う。
ONE JAPAN 初の著書『仕事はもっと楽しくできる 大企業若手50社1200人 会社変革ドキュメンタリー』(プレジデント社)が発売中。

中原 淳(Jun Nakahara)氏
立教大学 経営学部 教授

立教大学経営学部教授。立教大学経営学部ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長などを兼任。
東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授などを経て、2018年より現職。
著書に『職場学習論』、『経営学習論』(共に東京大学出版会)、『研修開発入門』(ダイヤモンド社)、『駆け出しマネジャーの成長論』(中央公論新社)など多数。
研究の詳細は、Blog:NAKAHARA-LAB.NET(http://www.nakahara-lab.net/)。Twitter ID : nakaharajun

取材・文/井上 佐保子 写真/宇佐見 利明

“やりたいことができない”と思い込む若者たち

中原:

ONE JAPAN の活動をとおして、どんなことを感じましたか?

土井:

私もそうですが「東京が魅力的」と思ってしまう東海で働いている人たちの感覚が、あらためてよくわかりました。ONE JAPAN に集まっている方は優秀で意識も高くて魅力的東海地方でも何かやらなければ、優秀な人はどんどん東京に行ってしまう。そんな危機感をもち、ONE JAPAN Tokaiの活動を始めました。

中原:

トヨタの先輩たちは若手が辞めるのを止めませんか。

土井:

もちろん止めます。先輩たちのなかには「今やりたいことができなくても、こんなに安定している会社はないよ。なんで今辞めるの?」と言う方もいます。でも僕たちにとっては、安定していることがうれしいことではない。トヨタだからこそやりたいことがあったり、世の中に大きなインパクトを与えたいといった「想い」をもって入ってきているんです。安定した給料が目的ではないから、想いを実現できなければ辞めてしまう人もいる。その感覚が違う人もいるかもしれません。しかし、今はそんな先輩方も少し変わってきています。先日、安定した会社と話していた先輩が「今変わらないといけない。この会社だったら、社会のために何でもできるよ」と言っていて驚きました。社長が大きな危機感をもち、度々メッセージを出しているのでそれも大きい気がします。

中原:

「こんな会社では何もできない」と思っていたのが「この会社なら何でもできる」と思えるようになったのは、大きな変化ですね。

瀬戸島:

私はONE JAPANの代表者会議に参加したとき、スピード感がめちゃめちゃ速いなと感じました。初参加したとき、懇親会でNHKの神原一光さんに話しかけられました。彼は大企業若手社員働き方1,600人アンケートのため、IT、分析、提言のできる人を探していたのですが、その場で私が協力することが決まり、あっという間に白書が完成し、発表することができました。「こんなふうに自分から企画を立ち上げ、仲間を集め、自分でハンドリングし、スピーディーに実行することができるなんて」と、とても新鮮でした。

中原:

「自分のやりたい企画は40代にならなければできない」と思い込んでいたのが、そうではなかったと。

濱松:

大企業の若手社員の多くが「30代、40代にならないとやりたいことはできない」と、思い込んでいますよね。実はそうでもないのに、なぜかそう思い込まされている。

中原:

本当は人事制度さえ変えることができるのに、会社にいると、変えられないと思い込んでいる。

濱松:

私たちは「変えることができる」ということがわかっていますが、そうでない人もいる。だから「変えられる」人たちと若手が出会える機会をつくりたいと思うのです。

土井:

私自身、普通に仕事をしていたらできないことを今経験させていただいており、社内で面白い先輩たちに会えたからこそ、今まだ辞めずにいるところがあります。

濱松:

私自身もそうで、きっとそれは他の大企業も同じなのではないかというのが、ONE JAPAN をつくった思いでもあります。そうした機会が得られれば、幸せに働ける人が増えるだろうし、会社も良くなっていく。だからできるだけ早く救いたいと、今、U30や新入社員、さらには学生を巻き込むような分科会活動にも力を入れようとしています。

チームづくりでは個々のストーリーを共有する

中原:

ONE JAPAN の活動をとおして、ご自身は何か変わりましたか。

瀬戸島:

他社の方々と協働することで、会社のなかで気づかなかった自分のスキルや強みが見えてきました。社内にはITの専門家が多いので、自分がIT が得意だなんて感じたことがなかったのです。でも、ONE JAPANではIT 担当として役に立つことができていて、これは自分が得意なことなのだと気づけました。

一方で、「大企業は意外とどこも同じだ」とも感じました。どの企業も同じような課題感があり、隣の芝生は青く見えますが、大企業間で転職しても何も変わらないだろうな、ということはわかりましたね。

土井:

朝日新聞などメディアからONE JAPAN が取り上げられるようになったことで、活動が会社から一目置かれるようになってきたことも大きいです。先日は「挑戦者たちの座談会」という思いをもった若手社員を集めた座談会を部長級、役員級のサポートもあり社内で就業時間内に行うことができました。会社公認の活動だと認知され始めたことで、協力者や参加者も増えてきました。

中原:

外部から指摘されてはじめてその価値に気づいてもらえることはありますよね。個々にやりたいことが違い、ぶつかることはありませんか。

土井:

基本的には「個人のやりたいことを応援する」という姿勢なのですが、ONE JAPAN Tokaiでは「やりたいことがある人」が少なく、「やりたいことはないけど、何かやりたい人」が多いことが、難しいと感じました。やることが決まらないと話が進まないので、私がいくつか方向性を示していたのですが、このやり方では私がかかわらないと先へ進みません。そこでONE X という20代中心のプロジェクトでは、まずチームづくりに時間をかけ、人生観を語り合ったり、将来したいことを毎週のように集まって議論したりしました。

中原:

人生観を語るなど、一見、回り道のように見えることをあえてやってみたのはなぜですか。

土井:

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