J.H.倶楽部

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Learning Design 2019年11月刊

特集│CASE7│パーソル ホールディングス 高度なデータ分析だけが「HRテック」ではない 個に寄り添い現場人事をサポート データ活用で “社内コンサルタント”を担う

「Advanced HR showcase(先進人事のショーケース)」を人事ポリシーに掲げるパーソルホールディングス。
機械学習手法を用いた社員のリテンション予測モデルなどを構築し、社外からも高く評価されてきたが、現在は方向性を転換したという。
データ活用の在り方や人事施策について、話を聞いた。

山崎涼子氏 パーソル ホールディングス グループ人事本部 人事企画部 タレントマネジメント室 室長
藤澤 優氏 パーソル ホールディングス グループ人事本部 人事企画部 タレントマネジメント室

パーソル ホールディングス株式会社
1973年のテンプスタッフ創業以来、人材派遣、人材紹介、ビジネス・プロセス・アウトソーシング、再就職支援など総合人材サービスを展開。
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに掲げ、あらゆる制約を超えてすべての「はたらく」が笑顔につながる組織・社会を創造していくことを目指している。
資本金:174億7,900万円
連結売上高:9,258億1,800万円(2019年3月期)
連結従業員数:4万5,434名(2019年3月31日現在)

[取材・文]=崎原 誠

高度な技術を駆使するものの試行錯誤していた時期

パーソルホールディングスが人事施策へのデータ活用を開始したのは、2015年にさかのぼる。

「当社の人事は以前からペーパーレス化が進んでいて、結果的に人事関連のデータがたまっていました。人事役員などと対話をするなかで、『これらのデータを、マーケティングと同じように、人事の意思決定に活かせるのでは』という仮説をもったのが、人事におけるデータ活用のきっかけです」

こう語るのは、グループ人事本部人事企画部タレントマネジメント室室長の山崎涼子氏。山崎氏とデータ分析の知識をもつメンバーの2人体制で、現在の組織の前身である人事情報グループにおいてデータ活用プロジェクトがスタートした。

初めに取り組んだのは、社員のリテンションを予測するしくみ。基幹システム内に蓄積された、社員の属性や人事考課等の人事データを用い、機械学習手法により社員の退職可能性を予測する予測モデルを構築した。

次に行ったのは、異動後に活躍できる可能性の予測だ。たとえばA さんをB 部署に異動させたい場合、まず、Aさんが異動すること自体によってパフォーマンスが上がる可能性を予測する。その一方で、B 部署で活躍している人のコンピテンシーとAさんの特徴との類似度を測り、これらを組み合わせて、A さんをB 部署に異動させたときに活躍できるかを見極める。

同社が生み出したこれらの予測モデルは、「HRテクノロジー大賞」のアナリティクス部門優秀賞を受賞し、社外からも高く評価された。ところが、これらが実際に同社で役立っているかというと、予想したほどの効果は上がらなかったという。

「リテンションの予測については、退職しそうな人を検知したところで、その人がなぜ辞めたいかがわからないと手の打ちようがありません。それだったら、そもそも自社ではどんな理由で辞める人が多いのか。給与に不満があるのか、キャリアアップのためか、上司との関係か、カルチャーに合わないのかといった退職の要因を分析した方が、リテンション策につなげやすいのです。それから、異動後の活躍モデルについても、人事担当者の勘と経験頼みの配置よりは良い配置ができそうですが、そこには、たとえば上司と部下の相性などの情報は入っていない。異動後の活躍にはいろいろな因子が影響するので、一側面から見たデータでは決められないのです」(山崎氏)

現場の課題解決を支援する社内コンサルタントに

どんなに高度な技術を使ったシステムを開発しても、現場で使われなければ意味がないのではないか。そこで立ち上げから3年ほど経過したころ、人事情報グループは大きな方向転換をすることになる。

「世の中では、AI による予測や機械学習が注目されていますが、難しい技術を使ったデータ分析をすることが目的ではない。『課題ありき』『目的ありき』で、現場の役に立つアウトプットをしていくこと、データを使って“現場の人事の役に立つこと”が大切だと認識を改めました。たとえば、現場の人事が企画を立てたり役員に提案したりする際にデータがあれば、安心材料・説得材料になりますよね。そういうデータを示すことも含め、現場の役に立つようにデータを使っていこうと舵を切りました」(タレントマネジメント室の藤澤 優氏)

具体的には、国内約30社のグループ会社の人事とコミュニケーションをとり、現場人事からの個別の相談に対して、「データを使ってこういうことができるのでは」と社内コンサルタント的にかかわる。

グループ会社の人事からの相談内容は多岐にわたるが、多いのは管理職の育成に関することである。それに関しては、たとえば過去に行った適性検査やアセスメントの結果を分析。個々の管理職のマネジメント特性をタイプ分けし、役職や年齢別に「見える化」する。そうすると、「将来、新規事業の創造を担える人材が不足しそうなので、今から育成や採用を考えよう」などといった人材ポートフォリオ設計に活かすことができる()。これまで人事の肌感覚で議論していたことが、データを踏まえて検討できるようになり、誤った判断を下すリスクの減少につながるのだ。

データの分析だけでなく、ツールの開発も手掛けている。たとえば、採用活動では多様なデータを複数のファイルで管理しているが、それらを一元化して自動で読み込んで可視化するツールを開発し、現場の負担を軽減した。

データ分析だけでなくデータの収集や管理も重要

個々のグループ会社の人事部の相談に合わせてデータを分析していくので、そもそも必要なデータがないことも少なくない。そういう場合は、データ収集からかかわる。

「たとえばアンケートやアセスメント、インタビュー、パルスサーベイ(短いサイクルで繰り返し行う簡易的な意識調査)などを検討します。そのデータを取るには、どのような方法が効果的なのか。どのような質問が有効なのかということも、各社の人事と一緒に考えていきますね。データがないなら集めるところからかかわろうという発想です」(山崎氏)

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