重重無尽 動物に学ぶポジティブ・シンキング

人生最初のメンターは、小学生の時に共に人暮らしていた愛猫ポン太郎だった。いつも一緒にいて、家の縁の下へのもぐり方、庭の燈籠への上り方、獲物の仕留め方を教えてくれた。だが、別れはあまりにも唐突にやってきた。決して起きてほしくない恐ろしいことが起こってしまった人生最初の経験。泣いて泣いて景色が歪んで見えた感覚をいまも覚えている。朝、学校へ出かける時は「ニャオ」と鳴いて送り出してくれたのに… … ポン太郎には自分の死期がわかっていて、別れのあいさつをしてくれたのだ。ポン太郎の死は、私に人生の意味を教えてくれる最高のギフトだった。
動物は先々を憂えない、光り輝く存在である。獣医師となったいまも、日々、動物たちに教えられることばかりだ。がんが見つかっても、嘆き悲しむのは飼い主= 動物の家族や周囲の人々だけで、動物自身は最後の瞬間まで生を充実させることに特化してエネルギーを使い尽くす。