Part 2 連載終了に当たって 「組織は一人のために」が変わらぬミッション 「働く」「暮らす」「生きる」力を創出しよう

労働組合は、いまや組織率が20%を割り込み、求心力という点では地盤沈下していることは否めない。しかし、働く人々の雇用環境が大きく変化しているなかであっても、働く人の声を代弁する組織は労働組合だけであり、その再生を期待する声も多い。本連載では、さまざまな産別労組や単組を取材し、労働組合の抱える課題と将来展望について整理してきたが、Part 2 では改めて、21 世紀の労働組合を切り拓く視点を整理してみたい。
組織率20%以下という現実
環境変化に対応できない労組
労働組合は、働く人々を代表する組織である。戦後の労働組合運動を概観すればわかるように、企業の枠を超えて社会の進歩・発展に貢献してきたのが労働組合であり、今日の豊かさを剔出するうえで、労働組合が果たしてきた役割は極めて大きいといえる。
しかし、グローバリズムの進展、構造改革の嵐が吹き荒れるなか、労働組合はかつての勢いをなくしている。戦後、50 %前後を誇った組織率もついに20%を割り込み、労働組合が存在する事業所割合は1%と、まさに“冬”の時代を迎えているといってもいいだろう。
とりわけ、労働組合が自らの基本的使命(ミッション)として位置づけていた「雇用・賃金・労働条件の維持・向上」についての機能低下が著しい。現在、終身雇用・年功序列・正社員中心という日本型雇片肌行が崩壊するなかで、ワークスタイルやライフスタイルにおける個別化・多様化が進展。画一的な処遇システム、働き方を前提にした労働組合では的確に対応できない、有効な対策を打ち出せないという状況が生まれている。結果、そのことがさらなる労働組合に対する遠心力として働き、「なぜ組合員費を払っているのか」「労働組合は必要か」という議論さえ聞こえてくるのが今日の状況である。
もっとも、だからといって労働組合が不要かといえば、むしろいまだからこそ必要度が増していると考える。普段は「空気」のように存在し、必要性について議論されることもないが、労働組合がない社会は、働く人々にとっていま以上に厳しい社会になる。
個別化が進展するということは、働く個人が一人で自分の仕事や暮らしに対峙することが求められることを意味するが、一人が対峙できる範囲は隕られる。また、依然として高水準にある失業率も、労働組合が存在しなければその割合はさらに高くなるだろう。つまり、時代が変わろうと労働組合の存在が「雇用を守る」ことに力を発揮していることは厳然たる事実なのである。