連載 はじめに夢ありき 第7 回 現地法人の経営力と現場力を高める 人と組織の自立化戦略

日本企業の強みはやはり「現場力」である。それは海外現地法人でも変わらない。現場力を高めるうえで一番大切なのは、開発や生産現場、および営業の第一線などで働く人たちが、現場からの発想で仕事ができるようになっているか、自分たちのアイデアや知恵で問題解決や課題展開ができるようになっているかであり、それが継続されているかどうかである。この原則は日本でも海外でも何ら変わらない。こうした視点をベースに今回は、現場力を高めるための現地法人の自立化戦略について考える。
現在の現地法人が共通して持つ課題とは何か
最近さまざまな方から、「現地法人の経営力と現場力を高める人と組織の自立化」について質問を受ける。大別すると、
①現地法人の成長に適応した駐在員の人選と育成をどのように実施していけばよいのか
②各現地法人のマネジメントや中堅スタッフの自立化をどのように進めればよいのか
③現地法人の自立的な運営をどのように実践すればよいのかという、3つの内容に分けることができる。
そこで今回は、これらの質問に対し具体的なプログラム例も紹介しながら答えていきたいと思う。
まず最初に、現地法人のあり方は現在どういった段階にあるのか確認しよう。仕事を大ざっぱに「今日の仕事」と「明日の仕事」に分けるとする。これもまたざっくりした印象であるが、多くの企業では「今日の仕事」については、突発的な問題発生に対する対応を除けば、かなり現地法人の自立化は進んでいる。
課題となっているのは「明日の仕事」だ。例えば生産部門であれば新機種の段取り、増産計画の立案、購買の計画立案などであり、営業部門では新機種企画や売価、および物流の企画などだ。マネジメントでは、企業風土醸成や部下育成など。これらの分野についてはまだ日本本社が担当していたり、駐在員が中心となって進めていたりするのが多勢であり、自立化の課題となっている。
これらの課題に対する時、最初に押さえておきたいのが、次の「4 つの戦略」である(図表)。
1つ目は、「グローバルで共有する企業のものの考え方、仕事の仕方の共有化推進」だ。例えば企業理念の世界共有化と実践、またTQM 的な仕事の進め方を共有化するなどの戦略である。
2 つ目は「グローバル人材の発掘・育成・活用・処遇のサイクルを回す」である。ここでは、グローバル人材プロファイルを作成する、海外適性診断プログラムを実施する、世界的人材採用計画の立案・実行、グローバル報酬制度・評価制度の整備、駐在員や現地のコア人材育成プログラムなどが必要になる。
3 つ目は「グローバルオペレーションのために、組織とマネジメントを進化させる」ことである。世界と地域のオペレーションスタンダードの作成・共有化や、コンセプトベースのHR スタンダードによる自由度のあるマネジメントの展開などが必要となるだろう。
4 つ目は「駐在員、出張者管理サービスの質と効率を高め、提供する」ことだ。駐在員、出張者管理において、フェアネス、満足度、効率性を向上させる施策が必要である。

駐在員に求めるべき資質はどのように変わってきたか
現地法人の段階および4 つの戦略を基本ベースとして、1 つ目の質問「駐在員の人選と育成をどのように実施していけばいいのか」について考えていきたい。