J.H.倶楽部

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Learning Design 2018年09月刊

インストラクショナルデザイナー 寺田佳子の 学びのキセキ 第2回 しなやかな革新者・今野玲央さん 感性と伝統が響き合う爪音

人は学べる。いくつになっても、どんな職業でも。
学びによって成長を遂げる人々の軌跡と奇跡を探ります。

「筝曲界に新星現る!」。LEO、こと今野玲央さんは20 歳のアーティスト。
数々の輝かしい受賞歴を持ち、メジャーデビューも果たしています。
そんな彼がさらに奥深い芸の道を切り拓くべく飛び込んだ世界とは――。
挫折の末につかんだ学び、新たな境地を聞きました。

Interviewee Profile︱ 今野玲央(こんのれお)氏
1998 年横浜市生まれ。9歳から筝を始める。「全国小中学生筝曲コンクール」小学生部門で銀賞受賞。
中学生部門で銅賞、銀賞。「全国小中学生筝曲コンクール」でグランプリ受賞。16 歳の時「くまもと全国邦楽コンクール」で最優秀賞と文部科学大臣賞を受賞。
現在、東京藝術大学音楽学部邦楽科に在籍。セカンドアルバム『玲央 Encounters:邂逅(かいこう)』も好評発売中。

Interviewer Profile︱ 寺田佳子(てらだよしこ)氏
インストラクショナルデザイナー。IDコンサルティング代表取締役。
ジェイ・キャスト常務執行役員。日本eラーニングコンソシアム理事。
熊本大学大学院教授システム学専攻講師。ICTを活用した人材育成のコンサルティングの他、リーダーシップマネジメント、プレゼンテーションセミナーなどの講師として国内外で活躍。
『学ぶ気・やる気を育てる技術』(日本能率協会マネジメントセンター)他、著書・訳書多数。

プロフィールこぼれ話★2 3歳からピアニストになるため
の教育を受けており、寝る時以外はピアノを弾いていた
時期も。今も原稿より楽譜を書く方がストレスがないです!

写真/日本コロムビア株式会社、和田佳久

01 あふれる想いを十三絃に託す

お箏って、こんなにダイナミックで情熱的でロマンティックでモダンで、そのうえ、こんなに表情豊かな楽器だったの?!

思わずそう呟いてしまうほど魅力的な箏曲に出逢った。

演奏はアーティスト名、LEOで昨年デビューした今野玲央さん、20歳。東京藝術大学音楽学部邦楽科現代箏曲専攻の第1期生である。

玲央さんがお箏に出逢ったのは、9歳の時。横浜インターナショナルスクールの音楽の時間だった。

「初めて聴いたのに、不思議なくらい自分にフィットする、なんとも言えない心地よさを感じたのを覚えています」

もしインターナショナルスクールに通っていなければ、もしお箏が必修でなければ、もし音楽の講師が沢井筝曲院師範のカーティス・パターソン先生でなければ、アーティストLEO は生まれなかった。

そう考えると、まさに“運命の出逢い”だったのである。

お箏というと、キチンと正座して格式張って演奏するもの、心がしびれる前に足がしびれそうなもの、そんな堅苦しいイメージがあるが、シカゴ出身のカーティス先生の指導は違った。教える言葉は英語。教える場所はさまざまな国の子どもたちの笑顔があふれる教室。「音楽は楽しむことが一番大事だよ」が口癖で、一人ひとりの個性を伸ばすことを第一に、のびのびと自由に演奏させた。

そんな先生の元で、お箏にすっかり魅せられた玲央さんは、やがて週2回の授業だけでは物足りなくて、お昼休みや放課後にも音楽室で練習をするようになる。

それにしても、なぜ、そこまで夢中になれたのだろう?

「自分の想いを上手く伝えられないもどかしさを感じていたからかもしれませんね」

日本人の母とアメリカ人の父は、玲央さんが幼い頃に離婚した。家庭では日本語を使っていたためインターナショナルスクールの英語についていけず、友だちとのコミュニケーションも思うようにいかなかった。人一倍感受性が強く、自分の感情を思いっきり表現したかった玲央さんにとって、実に歯がゆい状況だったのである。そんな時、目の前に現れたのがお箏だった。あふれる想いを自分の指先から生まれる音で表現することの面白さが、文字通り“心の琴線に触れた”のである。

みるみる上達する玲央さんに、カーティス先生が勧めたのが、コンクールへの挑戦である。

「小学校6年生の時、初めて全国小中学生箏曲コンクールに連れて行っていただきました」

ご飯が喉を通らないほど緊張している玲央さんを見て、舞台の袖まで付き添ってきた先生は、「楽しんできて!」とそっと背中を押してくれた。

そして、そのコンクールで出逢ったのが、全国から集まった才能豊かな子どもたちだったのである。学校では誰よりも上手い、と自負していた玲央さんだったが、
「お箏の世界には、すごい子がいっぱいいるんだなぁ」と、驚きながらも仲間に巡り合った喜びを感じた。

自分らしさがどこまで評価されるか、競い合う相手がいる。自分の想いがちゃんと聴き手に届くのか、腕を試す場所がある。それからは、仲間としのぎを削るコンクールが大きなモチベーションになった。

「それに若い頃って、こういう明確な目標がないと、どうしてもダラけちゃいますものね(笑)」

いやいや、今でも十分若いですけど……。

何はともあれ、ダラけることなく挑戦を続けた玲央さんは、中学3年生の時に全国小中学生箏曲コンクールでグランプリを受賞。15歳で箏曲界の大御所である沢井箏曲院の沢井一恵先生に師事し、高校1年生の時には、くまもと全国邦楽コンクールでコンクール史上最年少の16歳で最優秀賞、文部科学大臣賞を受賞。アーティスト名、LEOでメジャーデビューも決まり、若手現代筝曲家として世間の注目を集めるようになる。

02 「伝統という壁」の厚み

ところが、このまま順風満帆に行くのかと思いきや、玲央さんが選んだのは、なんと地道に「お箏をイチから学び直すこと」だったのだ。

なぜ、また、イチから?

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