J.H.倶楽部

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Learning Design 2018年09月刊

特集1│Chapter1│識者の視点~出る杭の育て方 OPINION 1  杭が出るのは槌次第 出るべき杭と出なくていい杭

どうしたら、出る杭を見つけ、育てることができるのか。
「杭は槌があるからこそ、出る杭になれる」という玄田氏に、先輩や上司の“ 槌”としての在り方、若手の“ 杭”としての在方を聞いた。

Profile
玄田有史(げんだ ゆうじ)氏 
東京大学 社会科学研究所 教授
1964年島根県生まれ。2007年より現職。専攻は労働経済学。2004年に発表した『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』(幻冬舎、共著)により、国内にニートの概念を広めたことでも知られる。
2005年より東京大学社会科学研究所のメンバーらと希望学の研究を開始、リーダーを務める。著書に『雇用は契約 雰囲気に負けない働き方』(筑摩書房)など多数。

[取材・文]=田邉泰子

身を守ることに必死な若者たち

「去年まで学部の授業を担当していたときにちょっとショックだったことがありました。“働く”ことがいつからこんなに恐いことになってしまったんだろう、と」

そう話すのは東京大学社会科学研究所教授の玄田有史氏。若者の“出る杭事情”について尋ねたときだった。

「私が教壇に立ち始めた90年代頃、学生たちが抱えていたのは『どうすれば自分らしく働けるのか』など、多少は未来に希望が感じられる悩みでした。今はブラック企業や若者の過労死等が深刻視され『働くことからどうすれば身を守ることができるか』といったことが主になっているように思います」(玄田氏、以下同)

身の危険を感じるようでは、杭も飛び出ている場合ではない。だが、そもそも「杭だけでは、杭になれない」と玄田氏は持論を展開する。

「杭は木槌や金鎚にしっかり打たれることで深く刺さり、初めて杭になる。杭も要は槌次第です。杭が杭として出るか出ないかは、結局打ち方次第なんです」

大人は“槌”としてどう在るべきか

若手社員を杭とするならば、“槌”とは、上司や先輩、組織など、彼らを取り巻く人々や環境が当てはまる。出る杭を見いだすため、そして伸ばすため、槌はどう在るべきか。

「まずは決めつけないことでしょう。『平成生まれって○○なんでしょ?』とか『今の子って××だよね』なんて言っていては嫌われるだけです。どんな杭がどんなかたちをしていて、それがどんな素材かなんて人によって違う。決めつけはしないほうがいい。それから若い“正義の係”の声を潰さないことも大切です」

正義の係とは、「自分はそう思いません」「それはおかしい」など、自分の考えを主張してくる若手社員。こういう人材の中から杭が出てくると玄田氏は考える。

「社会に出ると、どうしても大人の事情で決めざるを得ないこともあります。それに対し異議を唱える若さは貴重です。そんな時、周りはまずは受け止めてほしい。『生意気言うな』『世の中そんなにきれいごとでは済まされない』と言いたい気持ちも分かります。それでも若者が杭になるにはすぐに否定するのではなく、言わせて受け止めることが大切なんです」

若手は“杭”としてどう在るべきか

だが問題は、槌だけではない。若者は、杭としてただ飛び出るだけではなく、認められる杭にならなければいけないという。

「先輩たちが、なぜ今のやり方で仕事をやらざるを得ないのか、想像力をかきたててほしい。君たちが主張していることは、先輩たちも皆知っていること。分かっていてもできなくて、本当は悔しい思いをしているんだと。だから出る杭になりたかったけれどなれなかった人もいる、ということも分かってほしい。そのうえで、どうすれば正義の声が届くのかを考えなければならない。そこが本当の“出る杭”になれるかどうかの鍵なんです。杭になるには、謙虚さや想像力、思いやりも必要になります」

共感してもらえる杭ならば先輩は引き上げてくれる。逆に言えば、共感されない杭は出るべき杭ではない。

「きっと杭にも2種類あるんでしょう。自分の得になることしかしない杭と周りのために汗水たらして頑張っている杭です。同じことを言ったとしても共感を得られるのは後者だけ。本当に正義を主張したいのならば、前者では無理です」

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