J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年09月号

CASE 1 日本オラクル 研修とeラーニングで学びをサポート 優秀な社員のコンピテンシーを 身につける5週間

システム大手の日本オラクルでは、クラウドビジネス強化のため、
セールス人材の積極的な中途採用を行う。
年間200人ペースで採用を進める中で注目したいのが、
5週間にわたる研修プログラムである。
即戦力と位置づけられる中途人材を手厚くフォローする理由とは。


赤津 恵美子氏
理事/社員エンゲージメント室 室長

大久保 享信氏
オペレーションズ統括本部 ビジネスオペレーションズ本部 Oracle Sales Academy ディレクター/OSA Performance Partner

日本オラクル
米国オラクル・コーポレーションの日本法人として1985 年に設立。企業の事業活動の基盤となる情報システム構築にまつわるソフトウエア、ハードウェア、クラウドサービスなどを提供する。
資本金:237億5500 万円(2017年5月31日現在)、売上高:1731億9000 万円(2017年5月期)、従業員数:2422 名(2017年5月31日現在)


[取材・文]=田邉泰子 [写真]=編集部

●前提 クラウド人材の確保が必要

情報社会はまさに日進月歩だ。数々のシステムが世界中に張り巡らされ、ソリューションが必要とされる課題は複雑性を増す。したがって、近年、システム会社に求められるのは、クライアントの悩みを引き出し、根本的な課題解決につながる提案力である。そこで、システム会社大手の日本オラクルでは、中途採用に力を入れ、課題解決力、提案力を強化している。

親会社はアメリカに本社を構え、データベース管理ソフトで世界トップシェアを誇る同社では、他の外資系企業と同様、これまでも中途採用に積極的な姿勢を示してきた。

さらに2015 年以降、近年、主力とするクラウドビジネスの強化のため、セールス部門を中心に1年間で200人以上の中途人材を採用してきた。理事で社員エンゲージメント室室長を務める赤津恵美子氏は、クラウド人材の採用は世界的な流れ、と語る。

「SNSやメールで情報を発信し、関心のあるお客様と電話やタブレット端末を駆使してスムーズなご提案をするといった営業スタイルが、今後、ますます主流となるでしょう。デジタルツールを活用できるクラウド営業人材の獲得と育成は、今や全世界共通の課題となっています」(赤津恵美子氏、以下赤津氏)

採用で重視した点は2つある。1つは、マーケティングや人事、財務経理などの事業知識が豊富であることだ。そこには、顧客の業務を深く理解し、クラウドを使ってどのように役立てるかを具体的に提案していきたいという狙いがある。もう1つは若さ。1990 年前後に生まれたミレニアル世代を採用のコアゾーンにした。彼らは“デジタルネイティブ”と呼ばれ、新たなデジタルツールに対する柔軟性も高い。

こうした条件を優先したため、IT業界での営業経験は第一条件としなかった。

「とはいえ、新卒入社組のように1年以上かけてじっくり育成することはできません。そこで、クラウド時代に合わせた営業人材の育成プログラムを、入社後、約5週間にわたって実施しています」

プログラムは基本的に、JAPAC(アジア太平洋・日本)が開発、実施しているものを導入している。クラウド営業として活躍している社員をプロファイリングし、新人時代にどのようなことを習得すべきかを分析したうえで内容に落とし込んだ、独自のカリキュラムである。

●背景 複雑なプロセスを体系的に学ぶ

以前は中途社員の研修期間は、3日程度だった。「1日も早く仕事に慣れてほしい」という現場の希望もあり、会社の概要やワークルールを一通り解説した後は、OJTが頼みの綱だったのだ。

「頭に入れた知識がなかなか実践と結びつかず、はかばかしい成果が得られないケースも見られました。また、外資系企業特有の複雑な仕事のプロセスは理解しづらい、といった声もありました」

こうした問題は会社に慣れ、実務を任され始めた頃に露見することも多く、現場のフォローも十分とはいえなかった。それならば、学習意欲の高い、入社間もない期間に仕事のフローを体系的に学ぶ時間を確保するべき、と考えたという。

5週間という時間をかけ、丁寧にフォローする理由はそれだけではない。

「知識の定着を図りながら、入社者の満足度を高めるフォローを行っています(図1)。“Employee Experience”と呼んでいるのですが、『入社して良かった』と感じ、会社に対するエンゲージメントを高められるようなさまざまな体験を提供しています」

毎月20 ~30人のペースで入社する社員のトレーニングを担当するのは、人事部門、社員エンゲージメント室、そして、オラクルの営業研修部門だ。これらの部門が主管となり、社内の他の部門と連携しながら、研修を実施している。

●プログラム1 ゲームを取り入れ組織に馴染む

ここからは5週間の流れに沿い、研修の内容について具体的に見ていこう。特に1週目はオラクルのカルチャーを、知識だけでなく社員との交流を通じてつかんでいく。

■1週目 人のつながりをつくる

1週目は、終日集合研修を行う。JAPACのカリキュラムに沿って、オラクルの理念や事業、営業が社内で担う役割等、基本となる部分を学ぶ。

「ゲームやボランティアワーク等、チームビルディングを意識したワークもあります」

こう話すのは、研修を担当するオペレーションズ統括本部ビジネスオペレーション本部 Oracle Sales Academyディレクターの大久保享信氏である。

同社のセールスでは、提案力だけでなく、提案を形にするために社内の技術者を巻き込み、取りまとめていく力も必要となる。チームビルディングは、セールス人材に不可欠な要素なのだという。

そこで、受講者たちは複数のチームに分かれてマシュマロチャレンジ(マシュマロとパスタを使ってタワーをつくり、高さを競い合う)等を通じ、チームの結束力を高めていく。

またボランティアワークでは、チームごとに、本社のある東京都港区青山界隈のゴミ拾いをし、その量を競う。チームには上司や“ナビゲーター”と呼ばれる入社者の学びをフォローする先輩社員も加わり、作業を通じて親睦を深める。

「社員のネットワーキングも、5週間のプログラムを進めるうえでの大きな狙いです」(大久保氏)

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