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先進企業の戦略と実践事例から学ぶ 「人的資本の見える化」

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『人的資本の見える化』においては、「人材ポートフォリオ」「タレントマネジメントシステムの活用」「個々の社員の保有スキルの測定(スキルマップの活用)」「人事情報のステークホルダーへの開示」など、対応すべき多くの課題が存在します。
情報開示を目的化せず、真に個人と組織を成長させる経営・人材戦略の実践にあたって、何を「見える化」すればよいのでしょうか。本イベントでは、日本たばこ産業(JT)様やMIXI様の取り組みを通じて、本テーマについて考えます。

こんな方におすすめ

  • 企業の人事部、人材育成・人材開発のご担当者で・組織全体の人材戦略を見直し、持続可能な成長を目指したい方
  • 社員の能力や意欲を引き出し、組織のパフォーマンスを向上させたい方
  • 育成プログラムやキャリアパス設計において、最新のトレンドや効果的な手法を取り入れたい方

登壇者プロフィール

杉村元規(すぎむら もとき)氏

株式会社MIXI 人事本部 人事戦略部 部長

正路浩平(しょうじ こうへい)氏

日本たばこ産業株式会社 人事部 次長

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0:01:39

第1部

「人的資本の見える化の重要性」
0:07:55

第2部

JTグループにおける人的資本について
0:18:58

第3部

MIXIの人的資本経営 これまでとこれから
0:31:36

第4部

クロストーク(質疑応答)
0:47:15

セミナーレポート

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Ⅰ.「人的資本の見える化の重要性」

斎木輝之 日本能率協会マネジメントセンター ラーニングマーケティング本部 本部長

●人的資本経営のトレンド

人的資本の見える化については、「人材版伊藤レポート」や「人的資本可視化方針」を踏まえて、より意識的に取り組まれているかと思います。結論から申し上げますと、人的資本の見える化に唯一無二の正解はありません。むしろ各企業の独自性、つまり皆様が思いを込めて実施している人材育成がとても重要になります。これを本日の全体のキーワードとしたいと思います。

有価証券報告書への記載義務化によって、統合報告書で2回目の開示をされた会社もおありかと思いますが、遡れば1990年代の環境報告書の発行あたりから、人的資本や非財務情報開示の流れはありました。しかし、ここ数年で足早に仕組みが整備されてきた感があります。

人的資本経営の可視化指標の例としては、人材開発の項目として、たとえば従業員のeラーニング受講時間、研修の満足度や実践度については以前から測ってこられたと思います。他には、パーパス、ミッション、バリューや経営戦略・人事戦略の統合、そしてもっとも多いのはエンゲージメントです。このように領域が拡大してどこに重点を置けばいいのかについてお悩みではないかと思います。しかし、それよりも大事なのは、第三者に対するメッセージ性や「思い」の方です。

各社が作成する指標づくりの実態について、少しわかりやすく捉えたのが図1です。開示をするための情報を皆様は一生懸命揃えたかと思いますが、重要なのは、自社にとって人的資本をどのように定義をして、どういう価値創造をしていくのかという点です。そのためにどんな取り組みをして、見える化していくのか。こうした点について再定義しているところだと思います。

図1 人的資本の管理・測定・開示
図1 人的資本の管理・測定・開示

●人的資本経営の実態を把握するためのアンケート調査を実施

弊社では、人的資本経営の実態について、昨年から定点観測という意味で、人事担当者850名(上場企業421名、非上場企業429名)を対象に「人的資本経営の実態に関するアンケート調査」を開始しました。その速報版が出てきましたので、ご紹介したいと思います。

図2 「人的資本経営」の取り組み年数
図2 「人的資本経営」の取り組み年数

まず、取り組み年数については、10年以上前から実施している会社は12.7%、3年以上前から実施している会社は約28.2%でした。これは人的資本の可視化方針などが出てから積極的に取り組まれる企業が増えたということを表していると思います。

図3 「人的資本経営」は重要だと思うか
図3 「人的資本経営」は重要だと思うか

「人的資本経営は重要だと思うか」という質問については、上場・非上場ともに割合が伸びてはいます。とくに私が注目したのは非上場企業も62.3%と伸びていることです。開示義務は上場企業に課されていますが、上場企業だけの義務と捉えることなく、大切な社員一人ひとりが幸せに成長していくという観点で、非上場企業も人的資本に注目して取り組んでいるというのはとても良い流れだと思います。

図4 「人的資本経営」を実施するメリット
図4 「人的資本経営」を実施するメリット

次に、取り組み年数に応じて人的資本経営の課題について聞きました。まず、実践するメリットをどう感じているかです。第1位は、取り組み年数に関係なく従業エンゲージメントの向上でした。取り組みを始めたばかりのところは、人材の見える化(27.4%)、あるいは従業員の生産性(24.2%)がありますが、他の項目の順位はあまり変わらないという結果でした。

図5 人的資本経営を推進する際の悩みや課題
図5 人的資本経営を推進する際の悩みや課題

推進にあたっての課題については、取り組み年数で若干違いがあるという結果になりました。3年以上取り組んでいる会社でも、「目の前の業績にとらわれがちで人的資本経営に目を向けられない」と回答している企業が34%以上でした。高い目標やありたい姿を設定しているのは間違いないと思いますが、まだまだ伸び代や、やることがたくさんあるとお感じの会社が多いのだと思います。

これから取り組み始めるという皆様は、経営戦略と人事戦略の連動、人事データの統合などについてお悩みのようです。この辺は徐々に整備しながら、地道に取り組まれるのだと思います。また、人的資本に注目が集まってから取り組み始めた会社では、「人的資本に投資して回収できるか不安」(20.4%)といった回答も特徴的な結果だと思います。

●まとめ

重要なのは人的資本経営をフレーム全体で考えること、そして理念・パーパス起点で価値創造ストーリーを描いて取り組みをしっかりと明らかにしていくことです。図6のSTEP3は人材開発領域ですが、比較可能な指標は当然出していくと思います。重要なのは左から右への移動になります。会社の存在意義や在り方の社会に向けての発信においては、理想と現実のギャップがあります。個人のスキルアップもあれば組織の変革もあるはずです。そこで初めて育成の課題や施策が出てくるので、STEP1から6までを、どう一気通貫させるのか。さらに、様々な指標の中で何を大切にするのかをしっかりと開示していくことが重要だと思います。

図6 「人的資本経営フレームワーク」で考えてみる
図6 「人的資本経営フレームワーク」で考えてみる

Ⅲ.クロストーク(質疑応答)

斎木:

ご質問にお答えいただく前に、私から最初にお聞きしたいことがあります。MIXI様はPMWVも含めて変わったのが2022年、JT様も2023年というところでしたが、コロナ禍を境に見直したという会社様も多かったと思います。そのきっかけは、何だったのでしょうか。

杉村:

社会情勢は関係なく、その時期にたまたま再定義がされました。PMWVが発表される前、実はこれも私が入社した年ですが、ステートミッションValue(SMV)という別の表現で経営理念が定義されていました。この言葉自体、当社を非常によく表している言葉ではあったのですが、浸透活動がうまくいかなかったようです。事業も多角化していくなかで、もう一度我々の原点は何だろうかを見直した時に、PMWVという形で再定義したことで、より社員にとって理解しやすいものになったと思います。

正路:

私もPurposeの策定には過去携わっていましたが、時期的には「たまたま」でした。それまでは多分MIXIさんと同じように、違う形の経営理念や価値体系を持っていましたが、我々のビジネスモデルや主力事業が「世の中に本当に必要なのか?」という問いに常にさらされていたので、そもそもJTグループが世の中に提供していきたい価値とは何かということを、改めて自分たちのなかでも肯定しないといけないと考えました。また、たばこ事業自体が特に国内では総需要が減少している傾向にあり、グローバルで見てもいろいろな規制の進展もある。そうしたときに違う柱をつくっていく必要があり、その幹に当たるものは何かというのがまさにパーパスの部分なのです。つまり、僕らの存在意義をどうしようかという部分です。

そうしたなかで、過去の「古文書」等も紐解きながら、いろんなものをみんなで探って議論して……というのを10年近くやって、その結果この言葉とその事業ごとのValueやBehavior、そして事業としてのパーパスも制定をしてリリースしました。それが2023年でした。そういう意味では、人的資本にもつながってくるとは思いますが、我々の存在意義みたいなところをクリアにして、どんな人財を求めるのかについても明確になったと感じているところです。

斎木:

ありがとうございます。時期についてはたまたまかもしれませんが、働き方とか価値観が多様化するなかで、自社の価値を考えそれに共感する人たちともう一度新しい社会貢献の組織をつくっていこうと。そういう流れをキャッチされたところもあるかもしれませんね。

では、参加者の方の質問にお答えいただこうと思います。

パーパスでは策定のフェーズと浸透のフェーズがあり、それぞれご苦労あったと思いますが、「ビジョンや戦略はトップダウンがベターですか」というご質問です。また、「ボトムアップ型で進めるには推進力が乏しいなど、経験されたことを教えてほしい」というものです。要は、一丸となって1つの方向に向かわせる際の手順やご苦労、乗り越えるポイントがあれば教えていただきたいと思います。

正路:

会社の規模や組織風土によると思いますが、規模が大きい会社はやはりトップダウンが一定程度必要だったというのは、今改めて思います。今のパーパス自体も先代の副社長が2015、16年あたりからしっかり作っていこうと動いており、結果としてそこに賛同者が集まって1つの大きなプロジェクトとなっていったという過程がありました。僕らのような一社員がいろいろな仲間にヒアリングしたり、ディスカッションをしたりしながらも、起点はトップダウンでした。ただし、トップダウンだけでは、ボトムアップの臨場感や一種の手触り感がまったくなくなってしまうので、どう従業員とつなげてあげるかという意味でのボトムアップも意識してつくっていく必要があると思います。

斎木:

杉村さんは、最初はプロジェクティブに参加者を広げつつ、最後は役員やCFOに絞って決めていったとお話しされましたが、その辺はいかがだったのでしょうか。

杉村:

正路さんがおっしゃっていただいたことは、当社にも当てはまると思います。一定のビジョン、方向性はトップとして持ちつつ、実際の形についてはボトムでぶつけていきながら、実行に移していくといった進め方が、浸透のスピードも社員としての納得度合も高いと思います。

斎木:

開示ありきではないと強調されていましたが、最初は社内でも意見が自由に出ていたのですか。

杉村:

そこの文脈だけで言うと、経営陣とのすり合わせには当然苦労しました。というのも、人的資本経営や開示は、一般社員に馴染み深いものかと言われると決してそうではないと思います。当時、社内向けと社外向けのメッセージをどうするかといった話で議論にも派生し、結果的に分けずに発信しています。また、取りまとめという文脈で言うと、どうしても開示目的に議論が逸れてしまいそうなこともあったので、そのあたりを進めていくのは大変でした。

斎木:

説明責任が伴うので、役員の方々のお気持ちもわからないでもないですよね。

杉村:

その通りです。

斎木:

2つめの質問は、杉村さん宛てなのかと思いますが、「PMWVが普遍的なものになってしまうなかで、自社らしさの表現をどのようにしてきたか」というものです。議論が拡大するなか、いろんな案が出て、最後に収束する際の意思決定や軸になったものについて、お聞かせください。

杉村:

おっしゃるとおり、Valueは言葉が似通ってくると思います。とはいえ、会社経営者の思いが一番詰まっているところなので、我々が何者であるべきかについて考える原点になると思います。コミュニケーション事業を謳っていると申し上げましたが、そのコミュニケーション事業を通して、私たちが世の中に価値提供をしたいと、私たちがコミュニケーション事業であるべき理由は何かというところから議論しています。そうなってくると存在意義を「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」と謳っていますが、我々が事業をする意味や価値みたいなところにつがる揺るがないものが絶対にあるという発想でスタートしていると思います。

元々、コミュニケーション事業に賛同して社員が集まって会社として大きくなってきているので、それを言語化してどのような会社であるべきかを捉えた時に、経営陣の思いが言語化されたものになったと思っております。

斎木:

ありがとうございます。正路さんいかがですか。

正路:

弊社は事業別にValue・Behaviorを置いていますが、コーポレート部門として「絶対こういう方向にしなさい」ということをあまり言わなかった記憶があります。僕らとしては、まずグループ全体のパーパスを掲げていますが、グループ全体のValue・Behaviorは置いていません。各事業がグループパーパスの実現のためにより解像度を高めて、各事業でパーパスを制定してもらい、その後に各事業のなかでパーパスを日々の行動の中で具体化していくためには、どんな行動が望ましいのかを考える。これをボトムアップとしてしっかり取り組んだ組織もあると聞いていますし、一定のトップダウンが入ったところもあるとは理解しています。

私がいたコーポレート部門では、アンケートでValue・Behaviorをどんなものにしていきたいのかを聞いたところ、30、40レベルでたくさんの案が出てきたと記憶しています。「自分だったらこれかな」みたいなのを経営も一般社員も一緒にディスカッションをして、もちろんすべてを拾うのは難しいので、そのなかでより多くの意見が集まったものを自分たちの行動指針にしていこうと。そういう形で収束していったというのが弊社の事例です。

斎木:

育成施策も本社主導と事業部で企画を分けてらっしゃるというお話も以前お聞きしましたが、いい意味でオーナーシップを発揮して強固なものにしていかれているのだと思いました。

さて、次の質問は、「人材育成に関わる工数について、等級別に割合や教育時間を設定するなど計画的な管理をされていますか。育成にかける工数についての考え方などがあれば教えてください」というものです。これに関してはいかがでしょうか。

正路:

こんなことを言っていいのかわかりませんが、うちは階層別研修をかなり減らしていて、あまり強い計画的管理をしていません。1年目はこれぐらいの研修時間を受けなさいとか、6年目はこれぐらいしなさいといったことは、今はほぼ置いてない状態です。このように集合研修で年次別というのは相当ミニマムにしているので、今の新卒も研修機会は入社後そこまで多くはありません。

逆に、社員が自ら手挙げ研修に応募して、実際にそこでどれぐらいの学びを得られているのかという方に比重を置いています。そうしたなかで、あまり手が挙がらなかった研修は、より成長につがるように置き換えていくという形にしています。人事の一般的な成長支援の動き方をベースにしながらも、年間としての結果で見ています。それがいいのかどうかわかりませんが。杉村さんのところもどうされているのか、とても気になります。

杉村:

うちも同じで計画的管理はしていません。今後するかどうかという議論もありますが。基本的に育成は上から下にしか流れていかないものです。なので当社は上位の役職者を含めた育成に振り切っているのですが、彼らに対しても画一的な研修は行っていません。評価者研修だけは、管理職に対して同じものを実施していますが、あとはそれぞれの個別課題に合わせて、コーチングがいいのか、トレーニングがいいのかを判断してカスタマイズしてピンポイントで提供しています。よって、状況は似ているのではないかと思います。

斎木:

たとえば、開示項目に研修の参加率や時間がありますが、参加率については学びを自発的にできなかった方が、数年後に能動的にアクションしているとか、女性管理職でも年代別の志向性をきちんと見ている会社も増えています。管理職比率も大事ですが、なりたいという志向を持った人がどうすれば増えていくかを人的資本指標として開示している会社も増えてきていますので、当然、計画は重要だと思います。

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