人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第55回 「ぼくたちのムッシュ・ラザール」川西玲子氏 時事・映画評論家
「ぼくたちのムッシュ・ラザール」
2011年 カナダ 監督・脚本:フィリップ・ファラルドー
昨年来、シリアを中心とする難民と移民の問題が、世界をにぎわせている。この映画はこれらの問題を、哲学的なテーマを通して間接的に描き、第84回アカデミー賞外国語映画賞の候補作になった。
日本ではこの問題が、他人ごとのように受け止められているように見える。しかし実際には、日本でも水面下で在留外国人数が増え続けている。グローバル化を叫ぶからには、この現実から逃げられないだろう。だが日本はそのノウハウを持っていない。
トランプ大統領が入国制限を出した時、いち早く「受け入れる」と宣言したカナダも、実際にはいろいろな問題を抱えている。この映画は難民問題を、学校を舞台に丁寧に描いたものだ。こういう重層的な脚本が書ける力量には圧倒される。