Trend 2 米国リーダーシップ専門教育・研究機関CCLの グループ・リーダーシップモデル「DAC」
昨今のビジネス環境で勝ち抜いていくためには、組織のトップや役職者だけがリーダーシップを発揮するのではなく、組織のメンバー全員がリーダーシップを発揮して動く必要がある。
しかし、複数人でリーダーシップを発揮するとは、どういうことなのか。
どうしたらよりよい成果をもたらすことができるのか―。
それらについて、米国のリーダーシップ専門教育・研究機関CCL(Center forCreative Leadership)が提唱するフレームワークから学ぶことができる。
グループで発揮する時代
現在の経営環境は複雑であり、ビジネスの進展や問題解決の際の“正解”が不透明だ。カリスマ経営者や役職者のリーダーシップだけで成果を出し続けることはできない時代である。
こうした時代背景を受け、私が所属するCCLが提唱するリーダーシップのフレームワークも、10 年前と比べ、どんどん進化している。以前は、主として個々のリーダーの行動による影響に着目していたが、最近は、グループ全体でリーダーシップを発揮するためのより広範なフレームワークを提示するようになっている。
「DAC」フレームワーク
それが図1の「DAC」だ。グループ・リーダーシップが効果的に発揮されると、次の3つの“プロセス成果(リーダーシップアウトカム)”を生み出す。そして、この3つは、最終的なビジネスの成果に大きく影響することが分かっている(図1の右側)。
①Direction(方向性の明確さ)
②Alignment(グループ内の連携の強さ)
③ Commitment(グループ活動へのコミットメント)
よって、これらDACのレベルを確認することで、グループ・リーダーシップがうまく機能しているかを確認することができる。
DACをもたらす起点として、まず人の側面に目を向けると、メンバーそれぞれの信念・価値観、関係性、組織構造が、グループのリーダーシッププロセスに影響を及ぼす(図1の中段から左上への矢印部分)。
それぞれの価値観や関係性が統合され、うまくグループ全体の「リーダーシッププロセス」が機能すれば、プロセス成果がもたらされる(図1 の中央から右上部分)。
しかし、最終的な成果は、リーダーシップ以外の、市場動向や戦略などからも影響を受けることも忘れてはならない(図1の右下からの矢印部分)。
“権限”とリーダーシップ
「リーダーシップ」と聞くと、つい経営者や役職者を思い浮かべがちだが、グループ全体で集合的なリーダーシップを発揮する際には、プロセスの有効性は、役職者のような公式なリーダーによっても、また役職を持たないリーダーによっても影響を受け得るのである。しいて言えば、役職者のような公式なリーダーは、他のメンバー以上に、グループ・リーダーシップが発揮される「環境づくり」に尽力する必要がある。