寺田佳子のまなまな 第2回 女流囲碁棋士 吉原由香里六段に聞く 「プロの世界を生き抜くキメの一手」(後編)
寺田佳子さんのリニューアル連載第2回は、初回に続き吉原由香里六段との対談の模様をお届けします。
女流棋聖への挑戦権を獲得し、7 期ぶりの奪還に向け闘志を燃やす吉原六段(2016 年1月20日時点)。
“囲碁ヴィーナス”として多方面で活躍する吉原氏の「学びのセンス」に迫ります。
華やかにキャリアを築く秘訣
6歳で囲碁を始め、超一流棋士の弟子になるも、プロへの道は平坦ではなく、自信を失い囲碁から遠ざかる日々もあった吉原六段。しかし「目の前の一手に集中する」強さを身につけ、見事プロ棋士デビューを果たす。
念願かなって歩み始めた女流プロ棋士の道。吉原さんが幼い頃から夢見ていたそこは、いったいどんな世界だったのだろう。何しろ男性のプロ棋士約400 名に対し、女性はその5分の1にも満たないのだから、飛び込んでみて初めて分かったプロの厳しさや、女性ならではの苦労もあったはず。
だが、
「いえいえ、修業時代から圧倒的に男性が多い環境には慣れていましたから。むしろ先輩もファンの皆さんも優しくて、みんなで女流棋士を大事に育ててくださる。めちゃくちゃ恵まれていて、プロ棋士になれてほんとに良かったし、この業界がほんとにスキッ!」
う、うらやましいっ!
それにしてもこんなにポジティブに仕事に向き合えるのは、なぜなのだろう?
プロ棋士の仕事は「対局」と「囲碁の普及活動」だが、男性が出る対局には女性も出られるうえ、女性だけの対局・棋戦もあるというから、なるほど女性のほうがチャンスは多く、恵まれているのかもしれない。
さらに吉原さんは、デビュー当時から、テレビの囲碁番組の司会や雑誌の取材などでメディアに出る機会が多く、人気漫画『ヒカルの碁』の監修をしたり、大河ドラマ『篤姫』で出演者に囲碁指導をしたり、さらにはCM出演や本の執筆など、クリエイティブに活躍している。華やかに軽やかにキャリアを築く秘訣は?
「私、できないっていうのが悔しいタイプなんです(笑)。だから、経験のないことでも、お声をかけていただいたら、とにかく躊躇(ちゅうちょ)せずに、精いっぱいやってみる。当然、最初は失敗ばかりで、恥ずかしい思いはずいぶん味わいましたけど」
なるほど!