人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第40回 「ポエトリー アグネスの詩」川西玲子氏 時事・映画評論家
「ポエトリー アグネスの詩」
2010年 韓国 監督:イ・チャンドン
韓国を代表する映画監督のイ・チャンドン(李滄東)が、カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した秀作である。彼は2007年の『シークレット・サンシャイン』で、同じくカンヌで主演のチョン・ドヨンに主演女優賞をもたらした名匠だ。
韓国映画というと「ああ、韓流か」と思われる方もいるだろうが、イ・チャンドンは韓流とは関係ない。1954年生まれで70年代後半に大学に入り、軍事政権に反対する民主化運動を担った1人だ。卒業後は教師をしながら小説家になり、民主化後の90年代に映画界に進出した。
1999年の『ペパーミント・キャンディー』は、まだ韓流ブームが来る前の日本でも話題になった。軍事政権時代から20年の流れを追って、1人の若者が韓国現代史を生きる様子を描いたもので、韓国の民主化を象徴する作品だった。
2002年には『オアシス』で、ベネチア国際映画祭・銀獅子賞(監督賞)を受賞。韓国映画が世界に進出する先駆けとなった。その後2003年には、ノ・ムヒョン(盧武鉉)政権の文化観光部長官に就任、韓国の文化振興に貢献した。韓国を代表する文化人でもある。