人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第37回 「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」川西玲子氏 時事・映画評論家
「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」
2011年 イギリス 監督:フィリダ・ロイド
今、サッチャー首相と聞いてすぐに顔が思い浮かぶのは、50代以上ではないだろうか。かくいう私も、サッチャー首相の登場から退陣までのことをよく覚えている。そのくらい強烈な“ 女性”、いや強烈な“人”だった。
イギリスだけでなく、西欧初の女性首相で、強烈な個性と強固な意思を持ち、労働組合を総崩れにして戦争までした驚くべき女性である。まさに“鉄の女”だ。ソ連のゴルバチョフ書記長やアメリカのブッシュ大統領(父)と共に、東西冷戦の終結に立ち会ったヨーロッパ側の政治家でもある。
この映画は名女優メリル・ストリープという、これ以上ない配役を得て、サッチャー首相の半生を再現している。だが女性としての葛藤を描いた部分は前半だけで、後半は70年代と80年代のイギリス現代史である。