OPINION2 挫折と丁々発止が限界点を超える 特別扱いのない海外経験のすすめ
若者の「海外経験」の代表格ともいえる「留学」。
特に長期の海外経験は、価値観や行動に対して大きなインパクトを与える。
留学で得られる効果は、グローバル人材の育成制度を設計する際のヒントとなり得るのではないだろうか。
そこで、学生たちの海外に対する関心を高めるべく留学の魅力を発信し続ける、東洋大学の芦沢真五教授に話を聞いた。
価値観をガラリと変える経験
私が大学で指導を担当している4年生の中に、1年間の交換留学でアメリカのモンタナ大学に通う女子学生がいる。東洋大学入学時は留学にさほど興味のなかった彼女だが、1年生の夏休みにフィリピンの貧困地区の幼稚園で短期ボランティアを経験した。この体験が強烈な火種となり、帰国後は英語の学習に打ち込むようになった。そして2 年生の夏にはエクアドルに飛び、障害者福祉施設でボランティアを行った。そこではグローバルな環境では語学力だけではなく、さまざまなことに関心を持ち、自身の考えや意見を言えることの大切さを感じたという。
彼女はそれらの経験から、知識欲を持って学ぶことが必要だと自覚するようになり、その後は授業以外の時間をほとんど図書館で過ごすようになるほど、行動がガラリと変わった。
その甲斐もあり、TOEICの点数は入学時から300点もアップした。周囲からの後押しもあって、3年生の秋からモンタナへの交換留学に行くことを決めたという。
彼女のケースの場合、企業の人事担当者なら、おそらくモンタナで勉強した1年間を第一に評価するのではないか。しかし、学生を育てる我々の側から見て一番重要なのは、大学生活最初の夏の、フィリピンでの短期ボランティア参加だ。なぜなら、それが彼女を鼓舞したからである。彼女のケースのように、学生にやる気や自信を与えてくれる機会を、4 年間にどれだけ提供できるかというのが、我々教員の課題と言えるだろう。
世代間交流で留学を支援
現在私が関わっているプロジェクト「グローバル人材5000」は、学生時代に海外留学をした経験が、その人の人生やキャリア形成にどのような影響を与えるのか、5000人規模で調査・分析するもので、昨年春にスタートした。