巻頭インタビュー 私の人材教育論 Yourself last―― 自分のことを最後にする経営人材が人を動かす
塗料業界最大手の関西ペイントは、現在、3000億円規模の売上高を将来、1兆円に拡大すると宣言した。その実現には、現在、連結売上高の半分程度である海外売上高を9割を占めるまでに拡大する必要がある。壮大な目標を達成するためには、どんな人材が求められ、どう個人と組織の能力を高めていく必要があるのか。グローバル時代の人材戦略を河盛裕三社長に聞いた。
脱マニュアル思考で売上高1兆円をめざす
――御社は、「グローバル化の推進」と「国内事業の収益性強化」を推進されていますが、その実現のために何が必要だとお考えでしょうか。
河盛
当社は現在、売上高3000 億円弱、営業利益200 億円ほどの会社なんですが、ゆくゆくは、売上高1兆円、営業利益1000億円の会社にしなければならないと思っているんです。
会社をその規模にしようとすると、どこで儲けるかが問題になります。現在は、日本国内の売上高は約1500 億円ですが、10年もすれば20%程度ダウンするでしょう。そうすると、海外であと約9000億を売り上げる必要があります。こうなれば、今までの延長線上では追いつかない。全く新しい組織、新しい会社をつくっていかなくてはならないのです。当然、求められる人材も、従来とは全く異なるものになります。
――具体的には、どのような人材が求められるのでしょうか?
河盛
人材には、マニュアル通りの仕事をする事務官的な人材と、マニュアルにはないことをやる政務官的人材がいます。
たとえば、ファーストフードの店舗での仕事は、マニュアルの世界です。「チーズバーガーにされますか、ダブルバーガーにされますか」、といってね、決まった手順で仕事をするわけです。
しかし、一歩、外に出れば、世界が違います。「カレーを食べたい」と思っている人にどうやってハンバーガーを食べさせるかを考えなくちゃいけない。それは、マニュアルではできません。
会社というのは、この二種類の人材があって初めて成り立つんですが、どちらの人材がより必要かは、環境によって変わってきます。
たとえば、高度成長時代には、事務官的人材が必要とされました。役割分担を明確にして、決まったことを効率的に繰り返して売り上げを伸ばし、利益も拡大していました。
しかし、低成長時代が予想される日本で、今までのようなやり方をしていては、コストが上がるばかりです。したがって、生産性を上げ、いかに競争力を高めていくかを考える必要があります。こうした状況では、自分で考え、工夫をしながら、厳しい局面を打破していく政務官的な人材が求められます。また、成長著しい新興国で事業をするためには、無から有をつくり出す必要がありますから、そこでもマニュアルにはない創造的な仕事をする政務官的な人材が必要になります。
今、当社にとって一番大きい課題は、これまで事務官的な仕事をしてきた人材が、いかに政務官的な仕事ができる人材へと切り替わることができるのか、ということなんです。