論壇① 職場の実像から見えた組織開発成功のポイント ~「組織感情診断レポート」からの示唆~
組織開発は“ハード”と“ソフト”の両輪が円滑に機能することで形づくられる。
どちらか一方が欠けていても強い組織を生み出すことはできない。
組織における“ソフト”を支えているのは人の心、感情だ。
本稿では職場における感情の総和となる「組織感情」に焦点を当て、組織開発を考察する。
1 はじめに
ジェイフィールでは、組織力を高め、職場のパフォーマンスを最大化するキー概念として「組織感情」を提示し、組織を変えていく取り組み支援を数多く行ってきた。組織開発を組織変革と分けて議論することもあるが、ここでは、広い意味で組織開発を捉える。
組織開発を「組織がゴールの達成に向けてさまざまな側面をアライメント(整合性が取れている状態)できるように支援する、意識的かつ計画的なプロセス」*1と定義できるとすれば、組織感情診断は組織の状態を見える化し、組織開発のプロセスに明確な指針を提供するツールといえるだろう。
組織感情診断とは、メンバー全員に対し自分自身が日々感じていること(自己認知)と、職場に広がるムード(周囲認知)について、感情というフレームワークを用い集約、分析を行うことをいう。「自己認知」とは、主体感を持って働けているか、不安を抱いているかなど、自分自身の感情状態を意味する。そして「周囲認知」とは、自分の周りで働いている人たちが同じように感じているか、そうでないかを集約したものだ。
組織感情診断は、どのような感情モードに各職場が陥っているかを明らかにするツールで、メンバー全員の周囲認知を統合し、職場を1人の人間のように捉えている。
この組織感情診断をもとに作成した「組織感情診断調査レポート」は、1,273 職場、19,884人分の調査データから日本の職場の実像に迫った。
本稿では、同調査レポートと弊社の取り組みから見えてきた組織開発を成功に導くための方法論を解説する。