船川淳志の「グローバル」に、もう悩まない! 本音で語るヒトと組織のグローバル対応 第 7 回 「4.0の英語力」への道(その1)
多くの人材開発部門が頭を悩ませる、グローバル人材育成。グローバル組織のコンサルタントとして活躍してきた船川氏は、「今求められているグローバル化対応は前人未踏の領域」と前置きしたうえで、だからこそ、「我々自身の無知や無力感を持ちながらも前に進めばいいじゃないか」と人材開発担当者への厳しくも愛のあるエールを送る。
はじめに
数学者になるには、才能が必要である。だが、三角法ならば誰でも学べる。外国語も同様だ。P.F.ドラッカーは次のように指摘する。
何ごともやればある程度、習熟できるにもかかわらず、最初からあきらめてしまう人が多い。そんな怠惰な姿勢の中には、我々の胸の奥底に巣食う「知的傲慢」が潜んでいる。
「そんなことは学ばなくてもいい」とどこかで思っているのだ。
これにならい、英語について述べよう。言語学者によると、ネイティブ・スピーカーになるには、遅くとも小学校低学年頃まで英語を母語とする人たちが多い環境で過ごす必要がある。
しかし、グローバルイングリッシュなら誰もが身につけることができる、と断言できる(グローバルイングリッシュについては本誌10月号 第6回を参照)。今回はそこへ至る道のりを紹介したい。
日本の英語教育でレベル0続出
まず、図1の「4.0の英語力」を参照いただきたい。レベル0は「英語嫌い」「できれば避けたい」「今さらやりたくない」というグループだ。前回、紹介したように、元凶は「先進諸国で最も残念!」な日本の英語教育にある。
この10 年間、年に2回程度、マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストンコンサルティング グループ、あるいはベイン・アンド・カンパニーなどの戦略コンサルティング・ファームで「特訓指導」を行っている。対象は入社を希望する20 ~ 30 代だ。その中に帰国子女、特に日本語を話せる中国人の参加者が混じることは珍しくなく、むしろ年々増加している。
彼ら彼女らの多くは、日本の大学を卒業し日本の企業で働く「日本語ができる」人たちだ。ただし、矢継ぎ早に繰り出される質問に、素早く思考力を働かせ、口頭で明確に答えられるかというと、そうはいかない。日本語のニュアンスが聴き取れていなかったり、肝心の質問を聴き逃していたりする。
そんな時、私は英語に切り替えて、質疑応答を続ける。すると、英語のほうが流暢な人と、日本語のほうが上手な人とに分かれる。興味深いのは、前者は中学・高校時代、中国で英語教育を受けた人、後者は日本で英語教育を受けた人が多いことだ。参加者を20 ~ 30 代に限っているので、これは40 代の中国人には当てはまらないし、出身地区も影響する。