ペガサス・カンファレンス2010レポート 「出現する未来」に向けて 学習する組織は何をすべきか
「ペガサス・カンファレンス」(正式名称:System Thinking in Action)とは、
「学習する組織」の関連図書の出版や教育事業を展開している
米国のペガサス・コミュニケーションズ社が開催している年次カンファレンスである。
2010年11月に行われた様子と、これまでのテーマなどを追うことで、
「学習する組織」という考え方の20年の歴史を紹介するとともに、
今後の企業が考えるべきことについて、
日本でのワールド・カフェ第一人者である香取一昭氏が語る。
米国ペガサス・コミュニケーションズ社が1991年以来、毎年開催している「ペガサス・カンファレンス」。企業、教育、医療、行政、大学、NGOなど広範な分野で「学習する組織」の実践に携わっている人々が参加する。ちなみに「学習する組織」は、1990年にMITのピーター・センゲが提唱した組織変革の理論であるが、最近では社会変革にも活用しようとする動きが広がりつつある。
ペガサス・カンファレンスの特徴としては、次の3点が挙げられる。
⑴「学習する組織」の中核的なディシプリン(原則)であるシステム・シンキングを中心に学習する組織の全般を扱う。
⑵メッセージ性の強いカンファレンスで、周到に選ばれた5人のキーノート(基調講演)とコンカレント・セッション(分科会)、フォーラムなどで構成されている。
⑶全体会議の会場を含めて全てのセッションの会場が円卓形式になっているなど、参加者同士の相互作用を促進する工夫がなされている。
本稿では2010年11月にボストンで開催されたカンファレンスの模様を紹介するとともに、学習する組織とペガサス・カンファレンスのこれまでの20年を振り返り、その変遷について考えることとする。
開催概要とメッセージ
2010年の年次大会は、11月8日~10日の3日間、ボストン市内のマリオット・ホテルで開催された。毎年、アメリカ東海岸と西海岸で交互に開催されており、2011年は西海岸のシアトルで開催される予定だ。2010年の参加者数は約400名で、米国内のみならず、ヨーロッパやアジアの10数カ国から参加している。日本からの参加者は2007年以降急速に増加しており、昨年も12名が参加した。
本カンファレンスでは、毎回統一テーマを掲げている。今回のテーマは「システム・シンキング実働中~新しい成功の循環を活気づける~」であった。このテーマには、リーマンショック以降の経済的低迷からの回復がまだ完全ではない中で、システム・シンキングおよびそれに関連するディシプリンを活用することにより、社会に活力を取り戻したいとの想いが込められている。
そして、今回の大会には、次のような主張が一貫して流れていた。――現在我々は大きな歴史の転換期にあり、これまでの組織や制度はうまく機能しなくなってきている。新しい成功と繁栄の循環に移るためには、企業や組織の活動の意味や目的について根本に立ち返ること、システム・シンキングの理解と活用を深めること、持続可能なリーダーシップを開発すること、およびダイアログを促進することが重要である――
なお、これまでのカンファレンスのテーマと特徴は図表1の通りだ。