人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第24回 『別離』
2011年に公開された『別離』は、イラン映画として初めて、ベルリン国際映画祭の主要3冠を獲得した作品である。その後、ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞とアカデミー賞外国語映画賞も受賞。世界中で90以上の賞を得て話題になった。
物語の中にさまざまな問題をひそませる手法は秀逸で、ハリウッドがリメークをする可能性がある。だが、この作品への高い評価には、こういう映画がイランから出てきたことへの驚きが含まれているのではないか。
何しろイランは第二次世界大戦後、初めて生まれたイスラム原理主義国家だ。時代に逆行する政教一致体制で、女性は布で体を覆い隠さねばならず、カップルで歩くこともできなくなった。アメリカ大使館人質事件も起きて、以後イランはアメリカの宿敵となったのである。昨年まで、二期8年務めたアフマディネジャド大統領は、ナチスによるユダヤ人虐殺は作り話だなどと、過激な言動で欧米社会から嫌われた。