ID designer Yoshikoが行く 教育の品質管理を実現する ベルリンの由緒ある病院
気温はなんと零下10度、風が吹けば体感温度は零下18度!よりによって格別寒い年に、格別寒い都市へやって来た私である。極寒のベルリンのゼーストラーセ駅から、スケートリンクのように凍結した歩道を歩いて数分。ようやく「Charité」という看板を見つけて「あったぁ~」と喜んだとたん、見事に滑ってひっくり返った天を仰いだ顔にみぞれ混じりの雪が降りそそぐ。痛みと寒さがシミジミ身に沁みたが、「病院の前で良かったぁ……」そう、ここは病院。それも、1710年に初代プロイセン王フリードリヒ1世によって設立され、コッホフィルヒョーなど著名な医師が勤め、現在は年間90万人の外来患者と13万人の入院患者を受け入れるヨーロッパ随一の規模と歴史を誇るシャリテ大学病院なのである。しかし診察室に向かうわけにはいかない。間もなく、ISO29990「非公式教育・訓練のための学習サービス」の認証を、世界で初めて受けた「シャリテ大学病院医療アカデミー』のトップ、ラーべ所長との会合が始まるのだ。とにかく急がねば!「イテテテテ……」
肘をさすりながら門をくぐると、レンガ造りの巨大な煙突が2本。300年の歴史を感じさせる重厚な風景である。この大病院の人材育成専門チーム66人のリーダーで、品質管理には格別厳しいという噂の、ラーベ所長とはいかなる人物か。金縁メガネで5分おきに腕時計を見るようなオジサマか……。想像を逞しくしながら秘書についてオフィスに入ったとたん、「寒かったでしょ!
さぁ、熱いクリームコーヒーを召し上がれ」と抱きかかえるように迎えてくれたその人は、明るい金髪と鳶色の瞳がとびきり魅力的な、ふくよかな女性だったのである。