第17回 専業主婦が家事のプロとなって笑顔で働く 家事代行サービススタッフの学び 検証現場 ベアーズ 高橋ゆき氏 ベアーズ 専務 他|中原 淳氏 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
日本初の家事代行サービス会社として急成長しているベアーズ。そのサービスはベアーズレディと呼ばれるサービススタッフに支えられています。ベアーズレディの平均年齢は50歳代で、ほとんどが今まで働いたことがないごく普通の主婦。専業主婦たちが家事のプロとしてイキイキと働く現場の秘密に迫ります。
「夫婦共に残業が続くと、家の中は荒れ放題で…」「会社帰りに保育園へお迎えに行き、夕食、お風呂…。忙しくて猫の手も借りたいくらい」
結婚しても働き続ける女性が増え、夫婦共働き家庭の割合は年々増加しています。仕事から疲れて帰宅すると、山積みの家事が待っていて、さらに疲れが増す…という状況に頭を悩ませている家庭は少なくありません。共働き家庭以外でも、出産直後の女性、高齢の夫婦、病気や高齢の家族を抱える介護者……など、家事支援のニーズは高まっています。
そうした中、ベアーズは従来からあった富裕層向けのお手伝いさん、家政婦さんとは異なる「家事代行サービス」を提供し、急成長しています。「家事代行サービス」は、掃除、洗濯、子どもの送迎などさまざまな家事を定額で代行するもので、ベアーズでは1時間当たり3465円、2 時間から利用できます。
このサービスの核となるのが、約4300 名のベアーズレディと呼ばれる20~70歳代のサービススタッフなのですが、そのほとんどが働いた経験のない専業主婦たちです。
主婦として普段から家事をやっているとしても、プロとして家事代行サービスを提供するのは簡単なことではありません。専業主婦だった女性たちが、プロのサービススタッフとして笑顔で仕事をしているのはなぜでしょうか?ベアーズ本社を訪ね、ベアーズ専務の高橋ゆきさんと、ベアーズレディの野口志保さんにお話を伺いました。
家事代行サービスは笑顔をつくる仕事
「専業主婦だったのですが、子どもも大きくなり、子どものいない時間帯に働きたいと思い、曜日と時間が選べるこの仕事に興味を持ったのがベアーズで働き始めたきっかけです」そう話すのはベアーズレディ歴3 年弱で研修の講師も務める野口さん。
専業主婦がパートタイマーで働く場合、接客やスーパーのレジ係などが一般的ですが、立ち仕事のうえ、シフトの関係で好きな時間だけ働くわけにはいきません。その点、ベアーズの家事代行サービスは定期的に2 ~ 3時間ほどの短時間で利用する、といった顧客が多いため、「定期的に短時間だけ働きたい」という主婦のニーズにマッチするようです。
とはいえ、短時間の間に掃除、洗濯、料理……などの家事を効率良く、かつ、プロのレベルで仕上げることが求められますし、それ以前に挨拶、笑顔など、サービススタッフとしてのマナーも重要です。「我々は作業マンではなく、サービスマンなのです。家がきれいだと嬉しいですよね、自然と笑顔がこぼれます。その意味で家事代行という仕事は、家庭や社会の笑顔の創出に貢献するサービスと捉えています。そうしたサービス提供者となるため、研修をしっかりと行っています」と語るのは高橋専務。「女性の愛する心を応援します」「家庭や社会の笑顔の創出」といったメッセージに共感し、「社会貢献をしたい」という動機でベアーズレディに応募する人も多いといいます。
家事代行サービスの仕事を、「笑顔の創出に貢献するサービス」と意味づけることで、従来の「お手伝いさん、家政婦さん」とは違う、新たなサービスをつくり出している。
普通の主婦が家事のプロに
では、主婦が家事のプロになるための研修とはどのようなものなのでしょうか。2日間の初期研修は次の7課程。我々が訪れた日も、数名が研修を受けていました。
〈1日目〉
①フィロソフィー研修