Opinion 1 明るい職場をつくることが管理職を救う!
管理職が疲弊しているといわれて久しいが、何が管理職を疲弊させるのか。そして、管理職を元気にさせるために何ができるのか。『はじめての課長の教科書』の著者であり、企業人でもある酒井氏に聞いた。
中間管理職のつらい立場とは
現場情報と経営情報の両方が集まるポジションにいて、現場に対して具体的な決断を下す中間管理職※1。機能として極めて重要であり、組織の要といっても良いだろう。
その彼・彼女らの立ち位置を政治的な視点で眺めると、“利害が真っ向から対立している紛争地域の中心部”とも表せる。なぜなら、部下である一般従業員は報酬の向上を願い、上司である経営陣は常日頃から人件費の抑制を望んでいるのだから。中間管理職は、まさに両者の間で板挟みになっている格好で、その結果、彼・彼女らは2つの役割を果たさざるを得ない。
1つめは経営陣の代弁者。“自分はもっと高く評価されるべきだ”と考え、報酬の向上を求める部下に対して、その人の業務における問題点を指摘し、「だから、このような評価になるのだ」と説明しなければならない。
収益の低下で給与の原資自体が減っている企業であれば、個人的には成果を上げている部下に対し、本来よりもずっと低い評価を与えなければならないケースだってあるだろう。
もう1つ中間管理職に求められるのは、部下の保護者のような役回り。“もっと少ない人数で仕事ができるはずだ”と人員の削減を求める経営サイドに対して、現状のメンバー数が必要である理由を主張しなければならない。これは、自分の人事権を持つ上司に逆らうことを意味するのだから、精神的には非常にきつい。
部下に多くの仕事を割り振らなければならない一方で、残業禁止を伝えなければならないなど、良心の呵責を覚える人も多いだろう。
これら2つの役割に加え、さらに中間管理職の人たちを圧迫しているのは、一般従業員からは成長の機会を、経営からは高い目標設定を求められていること……考えてみてほしい。一般従業員はまだ自分は成長や教育が必要な存在だと主張しながら、より高い報酬をほしがり、経営は高い目標をクリアしてほしいといいつつ、人件費は抑えたいと望む。このような矛盾に満ちた要求を両者から突きつけられる中間管理職が、いかに厳しい役どころであるか、きっとご理解いただけるだろう。しかもこうした状況は、中間管理職が自身の力で打開することは事実上不可能だ※2。
事態を劇的に好転させるポジティブ・サイクル
そして誰もが知る通り、中間管理職の人たちは、ほぼ例外なく忙しい。それにもかかわらず、なかなか成果が上がらず、山積みになっている仕事を前に疲弊し切っている。