おわりに ますます必要性が高まる「心の声」を捉える意識
Benjavisa R. / PIXTA(ピクスタ)
本特集では「経営」「エンゲージメント」「ビジネススキル」に関連する8つのキーワードを紹介した。順に概要を振り返ってみよう。
従業員の心に投資し価値を提供する
まず紹介したのが、従業員価値提案を意味する「EVP(Employee Value Proposition)」である。これは企業が従業員に提供できる「価値」を確立し、浸透させる取り組みのことだ。JTBは従業員に『ONE JTB Values』という共通の価値観への共感と『自律創造型人財』を目指すことを求めている。一方で会社側は、社員の個性や多様性の尊重、成長・挑戦機会の提供、そしてイノベーティブな組織風土の構築に努めることなどを明文化し、同社で働く価値を従業員に提示、約束している。
従来のように「従業員が企業に価値を提供する」だけではなく、「企業と従業員は互いに成長し合う対等の関係性」だと打ち出す企業も増えている。企業側が従業員に提供できる価値を明確にするEVPは、人材獲得競争が激しいいま、従業員に「この会社で働く意味」を示すものでもあり、今後ますます必要とされるだろう。
「心的資本経営」という独自の思想を土台とした経営改革に取り組むトリドールホールディングスも、「働く人にとって魅力的な企業になる」ことを重視している。人手不足が深刻化している背景もあるが、だからこそ「従業員の幸福感を高めることで、顧客の感動を生み出し、利益につなげる循環をつくる」ことに目を向ける経営に舵を切った。企業が従業員の心に目を向けることにより、従業員が充実した気持ちで仕事に向き合うことができれば、顧客の感動につながる価値の創出が期待できるという。同社では「ハピカン経営(従業員のハピネス+顧客のカンドウ)」という言葉で親しまれている心的資本経営の実践において、様々な制度や施策を展開する。労力もコストもかかるが、何より「心的資本」を重視し、ここに投資する姿勢に迷いはない。
