おわりに 集団性を生かし自律性を高める日本人に合った「学び」の進め方
MayuNoda/PIXTA(ピクスタ)
日本のビジネスパーソンは学習恐慌状態にある
「学びたいという欲求は、本来、人間なら誰もが持っているもの」―― 。チェンジ・エージェントの小田理一郎氏(OPINION2)は、そう話す。特に現在は、変化が激しく学び続けなければ生き残れない、そんな、かつてないほど“学びの必要性”に迫られている時代でもある。学びたい欲求に従い、さぞかし学びが進んでいるのだろうと思いきや、現実は真逆の結果を示す。
パーソル総合研究所のデータによると、日本人ビジネスパーソンの学びへの投資は20年以上にわたり減少し続け、学びへの関心は低下の一途をたどっているという。特にコロナ禍を過ぎた2022年以降、仕事を通じた成長や学びに対する意欲は悪化傾向にあり、同社の小林祐児氏(OPINION1)は現状を「ラーニング・リセッション(学習恐慌)」とよび警鐘を鳴らしている。
集団性を生かした学びのアプローチへの転換を
なぜ、学びはまったく進まず、「恐慌」というほどの危機的状況に陥っているのか。小林氏は、学ばない人の間には「新人バイアス」「学校バイアス」「現場バイアス」「地頭バイアス」「自信の欠如バイアス」「現状維持バイアス」「タイパバイアス」という学びを妨げるバイアスが存在することを紹介した。それらのバイアスとともに深刻なのは、大半のビジネスパーソンが「学ばない」ことに無意識で、学ばない選択をしている自覚すらないということだ。
学びへの意識が乏しく行動もしない人がマジョリティーというなかでは、従来のように「個人の内発的動機づけ」にアプローチするのは難しい。そこで小林氏が訴えるのが、日本人の国民性にも合う「集団性を生かしたアプローチ」への転換、つまり先に学びのコミュニティを形成し、他者とともに学ぶことで刺激を得て、意欲向上につなげるという学びの在り方である。
