第25回 絶対にミスが許されない職場での育成法 空の安全を守る航空管制官の学び 佃 健次氏 羽田空港 先任航空管制官 他|中原 淳氏 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
1日に約1200回もの離着陸がある羽田空港。約1分に1回の間隔で離着陸する航空機の交通整理をしているのが航空管制官です。航空機の安全かつ円滑な運航を支える航空管制官の仕事は、航空管制に関する知識、語学力はもちろんのこと、空間認識力、判断力、集中力など高度な能力が必要とされます。航空管制官たちは、決してミスが許されない航空管制の仕事をどのようにして学んでいるのでしょうか。航空管制官の現場での学びを取材しました。
特別に取材許可をいただいてやってきたのは羽田空港の管制塔。羽田空港の管制塔は日本一高い115.7m。360度見渡せる開放的な管制室からは、空港ターミナル、4本ある滑走路はもちろんのこと、遠く富士山も東京湾も一望できます。このタワー管制室では1チーム10数名の管制官が働いています。管制官たちは常に窓の外を見ながら、ヘッドセットを使用し無線でパイロットに離着陸の指示を出したり、空港内の地上走行の指示を出したりしています。航空機は次々と離着陸し、現場には一瞬たりとも気が抜けない緊張感が漂っていました。管制官たちはチーム毎に交代制で24時間365日管制を行っています。タワー管制室では離着陸を担当する飛行場管制席、地上走行の指示を行う地上管制席、飛行計画の承認を伝える管制承認伝達席、関係部署との連絡調整を行う副管制席の4種の業務を行っています。管制の仕事は集中力が求められるため、管制官たちは40~50分毎に席を変え、業務を交替しています。タワー管制業務では1人で10~15機を担当します。管制官は便名など航空機毎の情報が書いてある「ストリップ」と呼ばれる札を順に並べ、間違いのないよう、業務を行っています。羽田空港の管制業務には、もう1つ、管制塔から空港内、空港近辺の管制業務を行うタワー管制のほかに、レーダー管制室でレーダー画面を見ながら、もう少し広い空域の航空管制を行うレーダー管制という仕事があります。レーダー管制室にはタワー管制室とは異なり、窓1つありません。その代わり黒いレーダー画面が部屋の両側にずらりと並び、管制官たちはじっと画面に見入っています。レーダー画面には上空の航空機の便名、高度、速度、進路などの情報が映し出され、管制官はそれを見ながら航空機の位置を把握し、管制間隔を設定したり、到着機の順位づけを行っています。ここでは、羽田空港担当、成田空港担当、各10名ほどの管制官が管制業務にあたっています。レーダー管制にはパイロットに指示を出すレーダー管制席と、タワーや、より広い空域を管制している航空交通管制部との連絡調整を行う調整席があり、やはり40~50分で交代しながら仕事をしています。
航空管制官になるには
絶対にミスが許されない上、非常に専門的かつ高度な技術が要求される航空管制官ですが、いったいどのようにして育成しているのでしょうか。先任航空管制官の佃健次さんにお話をお聞きしました。